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DATE/ 2022.12.19

「1円スマホ」販売の仕組みとは?

 年々、高機能・高品質化しているスマートフォン。機種によっては10万円以上、PC並みの価格帯になっています。一方、スマホ購入で人気機種iPhoneが大幅に割引され、一括1円や実質数十円などの超低価格で販売されているケースがあります。この販売方法は口コミや各種記事で話題となっています。いわゆる1円スマホ、どういう仕組みの販売方法なのでしょうか?

2019年の法改正からの市況

 2019年、総務省は、電気通信事業法の改正により、端末割引の上限を2万円(税別)、2年契約の解除料を1000円までに定めた新制度案を公表しました。この割引制限の影響は大きく、高機能・高品質のハイエンドモデルの売れ行きが鈍化し、値頃感のあるミドルレンジモデルやエントリーモデルが売れ筋となりました。ところが、2021年の中頃、新たな販売手法が取られるようになりました。それは、端末単体への直接割引です。特に人気機種Phoneが大幅に割引され、一括1円や実質数十円などの超低価格で販売されるようになりました。

 今回の割引は、法令で定めた割引の上限規制は以下の項目にいずれか該当する場合、割引上限額が緩和されるか、適用されないという解釈によります。

・在庫端末や旧型端末の処分を目的とした販売
・終了予定の通信サービスからの移行を目的とした販売
・移動できない措置を講じた回線と組み合わせた端末の販売
・端末の単体販売でも適用できる割引を使った端末販売

高額端末が1円で販売できる理由

 電気通信事業法の改正で規制されている割引は、回線契約にひもづいた場合に限定されています。これは、特定のキャリアの回線を契約する場合にのみ有効な割引規制で、誰でも利用できる割引は、規制の対象外になります。一括1円などで販売されているiPhoneは、規制の対象外であるという解釈で、端末単体の割引と回線契約にひもづく割引を合算して破格の割引を可能にしているのです。

 現行の法令によると、規制対象の割引と規制対象外の割引の組み合わせについて特に規制はありません。割引規制は現行の法令に従いつつ、そこに現行の法令の規制対象とならない割引を重ねることで、実質5万円を超える割引を可能にしているのです。

 なお、回線契約を条件とするものと端末の購入条件による割引に加えて、残価設定型の分割払いによって実質的な割引感を出しているケースもあります。買ってから2年で端末を返却した場合に「実質1円」となるような割引計算ですね。

 NTTドコモが提供する「いつでもカエドキプログラム」、auが提供する残価設定型の分割払い「スマホトクするプログラム」、残価設定型の分割払いではないですが、ソフトバンクによる48回の分割払いと端末返却を組み合わせた「新トクするサポート」といったプログラムが該当します。実際、故障したり返却できないとこの割引は享受できなくなる可能性があるので、契約内容をよく確認して購入することをオススメします。

 2019年10月の電気通信事業法改正直後はスマホの機種変もなかなか進まず消費も冷え込みましたが、こうした割引手法は少しわかりにくさがありつつ、また、商法的に賛否両論ありますが、消費は再燃し、店頭でも賑わいを取り戻しつつあることは歓迎すべき状況です。スマホは日進月歩、高機能・高品質化することで価格も上昇しているだけに、少しでも安く購入したいというのは誰もが思うところでしょう。

<参考サイト> ・総務省:電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について
https://www.soumu.go.jp/main_content/000628680.pdf
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