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DATE/ 2023.01.09

「~系」ラーメン4選!特徴や発祥とは

 ラーメン店をたずねる際、よく「~系」という分類で呼ばれることがあります。しかし「~系」と聞いてどんな特徴のラーメンなのか、他の「~系」ラーメンとの違いは何かなどは、ラーメン通でもない限り、はっきりと答えられる人は多くはないかもしれません。

 今回は、有名店発祥の「~系」ラーメンを4つご紹介。それぞれのラーメンの特徴を解説します!

そもそも「~系ラーメン」って何?

 多くの場合、ある有名店の味を継承した店のことを「~系ラーメン」と呼んでいます。よく知られるのが「家系(いえけい)」と「二郎系(じろうけい)」で、家系は『吉村家(よしむらや)』、二郎系は『ラーメン二郎(じろう)』という店の味の系統を受け継ぐラーメンという意味になります。

 そのほかにも「背脂チャッチャ系」「淡麗系」「ドロ系」のように味の特徴や作り方そのものを表現したパターンや、「濃厚魚介系」といったスープ・出汁の違いで分類するパターン、「北海道系」「熊本系」のように地域で分けるパターンもあります。それぞれの系統をさらに細分化し「○○系の××系」といった呼び方になることも。ただし厳密な分け方については個人によって解釈に違いがあり、複雑化しています。

代表的な「~系」ラーメン4選

 それではここで、代表的な「~系」ラーメンをご紹介しましょう。

【家系】
 最も有名な「~系」ラーメンのひとつである家系は、1974年に横浜・新杉田にて開業した『吉村家』を総本家としています。

 店名は「よしむらや」ですが呼び方は「いえけい」で、家系ラーメンの店は「~家」という屋号になっていることが多いです。

 家系ラーメンの特徴は以下の通り。

・スープは鶏と豚の骨でとった、濃厚とんこつ醤油
・麺は太めのストレート
・トッピングは海苔、チャーシュー、ほうれん草
・オーダー時にカスタマイズできる

 スープは濃いものの鶏油(チーユ)によって香ばしく仕上げられており、最後まで飽きのこない味付けです。そのままでももちろんおいしいですが、「カスタマイズできる」という点が家系ラーメン最大の特徴。「麺の硬さ」や「味の濃さ」「脂の量」など、自分好みにアレンジが可能なのです。トッピングや調味料も豊富なので、何度も訪れて試したくなる楽しさがあります。

【二郎系】
 家系と並ぶ一大勢力が、1968年に東京都三田に開店した『ラーメン二郎』を発祥とする二郎系です。黄色い看板に黒い文字、赤いカウンターという店構えが一般的です。

 本店で修行し暖簾分けされた「直系」の二郎系と、その味に影響を受けた「インスパイア系」に分かれており、直系は二郎秘伝のタレの使用と「ラーメン二郎」の屋号を名乗ることが許されています。

 そんな二郎系ラーメンの特徴は、

・スープはとんこつ醤油で、こってりと脂っこい
・極太の平打ち麺
・大盛りの「ヤサイ」(もやし、キャベツ)
・大盛りの「ぶた」(特大チャーシュー)
・肉以外のトッピングの増減が可能

 二郎系ラーメンは、なんといっても脂ギトギトの濃厚スープと麺の上に具がてんこもり、という見た目の強烈さが最大の魅力。トッピングの量は増減できるものの、少なめと注文しても普通の1.5倍ほどの量があります。そのボリュームと味の中毒性、亜流の「インスパイア系」を含む味の多様性から「ジロリアン」と呼ばれる熱狂的なファンを生み出しています。

【大勝軒(東池袋)系】
 『大勝軒(たいしょうけん)』という屋号もよく見かけると思います。この『大勝軒』にはルーツが異なる、あるいは共通のルーツを持ちながらも派生した分派がありますが、その中でも半世紀以上の歴史を持ち、“ラーメンの神様”と呼ばれた山岸一雄氏が店主を務めたのが、東池袋の大勝軒です。

 山岸氏は、自家製麺を特製スープにつけて食べるつけ麺(商品名「特製もりそば」)という新しいスタイルのラーメンを開発。もとは従業員の「まかない料理」として食べられていましたが、山岸氏が店長を務めた東池袋店でメニュー化したところ空前の大ヒット。以来、東池袋の大勝軒は“つけ麺の元祖”として今も連日行列をつくる人気店となっています。

 つけ汁は動物系と魚介系、香味野菜のダシをたっぷりと使用した、豊かで深みのある味。しょうゆと甘酢でさっぱりとした口当たりに仕上がっています。自家製の「多加水卵中太麺」はしっかりとしたコシがあり、その量も普通のラーメンの倍以上のボリューム。非常に満足度の高い逸品です。

 東池袋の大勝軒は、暖簾分けした直系はもとよりインスパイア系も多数。さらに山岸氏が修行したという『代々木上原大勝軒』、『中野大勝軒』の流れを汲む店もあり、全国各地に『大勝軒』のDNAが広がっています。

【大勝軒(永福町)系】
 もうひとつ有名な「大勝軒系」ラーメンが、永福町の『大勝軒』です。同じ大勝軒という名で創業も東池袋と同じ1955年と似通っていますが、東池袋の大勝軒とは直接関係がなく、独自の発展を遂げてきました。

 その特徴は、ボリュームたっぷりのちぢれ中太麺と、マイワシの煮干しがベースの魚介系醤油スープ。オランダ産カメリア印のラードをスープに浮かべて熱を逃がさないようにするなど、随所にこだわりが感じられます。そうした吟味に吟味を重ねた一杯であることから、値段も他店のラーメンよりも少しお高め設定です。

 同じ屋号を名乗る場合は、大勝軒の店主の実家「草村商店」で製麺した麺を使用しなければならないという掟があるそうです。

ラーメンはどのように日本に定着した?

 中華料理であるラーメンは、もともとはもちろん中国からやってきたもの。新横浜ラーメン博物館の調べによると、1488年に中華麺「経帯麺」が日本で初めて食べられたとあり、これがラーメンに関するもっとも古い記録のようです。

 中華麺が一般に認知され始めたのは、江戸時代末期の1859年ごろ。日本が鎖国から開港へと踏み切り、多くの外国人が日本にやってきたことで、日本にも中華麺を食べる文化が流入しました。

 1870年、横浜に日本初の中国料理店が誕生したことを皮切りに、続々と中華料理店がオープン。当時のラーメンは「南京そば」と呼ばれました。しかしメニューに登場していたものの、味がしつこい、くどいなどといわれ、日本人の口には合わなかったそうです。

 しかし1910年に営業を開始した『淺草 來々軒(あさくさ らいらいけん)』が、脂っぽさも豚臭さもない、日本人好みの味付けにアレンジしたラーメンを開発。これが評判を呼び、1日2,500~3,000人の人が押しかけるほど店は大繁盛しました。マスコミがこぞってこの熱狂ぶりを取り上げ、日本各地にラーメン専門店が続々オープンしたことから、淺草來々軒は“日本初のラーメンブーム”の火付け役とされています。

 しかしその直後、日本は2度の戦争に巻きこまれ、ラーメン店の多くが一時閉店、もしくは廃業となってしまいました。

 終戦後の暗い時代の中、闇市ではひもじい庶民の腹を満たす「屋台」が増加。その中でも、安い材料で作れてかつ栄養満点だとして、再びラーメンが脚光を浴びることになります。これによって、ラーメンを作って食べる文化が一般家庭にも浸透していきました。

 そして高度経済成長期となる1950年代に入ると、個性が際立つラーメン店が次々に登場。現代に連綿と続くラーメンの系譜につながっていくのです。

 いかがでしたか。中国から輸入されたラーメンは日本で独自の発展を遂げ、いまや海外観光客からも人気を集めるようになりました。昨今は「~系」にこだわらない、より独創的なラーメンを生み出そうと、味や見た目、作るパフォーマンスにもこだわる店も出現しています。

 進化し続けるラーメン文化に、今後も目が離せませんね。

<参考サイト>
・日本のラーメンの歴史(新横浜ラーメン博物館)
https://www.raumen.co.jp/rapedia/study_history/
・「大勝軒」の歴史や魅力とは? "ラーメンの神様"に捧げる「創業55周年 中華そば」を食す(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/food/?id=4216
・伝説のラーメン店「淺草 來々軒」が新横浜ラーメン博物館に復活オープン!(横浜観光情報)
https://www.welcome.city.yokohama.jp/blog/detail.php?blog_id=79
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