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DATE/ 2023.01.15

運転中の「イヤホン」は違反になるのか?

 車に乗っている時に音楽やラジオを聴く人は多いのではないでしょうか。また最近では、YouTubeなどの動画視聴サービスを聴く人もいるかもしれません。通常、一般的な音量でこれらを聴くだけであれば問題はありません。では「イヤホン」で聴く場合はどうなのでしょうか。

安全運転義務違反となる可能性がある

 カーナビやスマートフォンの普及によって画面を見ながら運転する、いわゆる「ながら運転」による死亡事故が多発しました。こういった状況を受けて2019年12月に道路交通法が改正されました。現在は「道路交通法第71条第5号の5」によって「緊急やむを得ずに行うもの」以外においては運転中にスマートフォンを「手で保持して」通話しながら運転することは禁じられています。

 これをみると「手に持って通話しなければ」、つまり、イヤホンを使用して音楽を聴いていれば大丈夫なのかと思われますが、必ずしもそうはならないようです。「道路交通法第70条」では、ドライバーの「安全運転の義務」について定められています。ここには「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と記載されています。もしこれに沿っていなかったと判断された場合、「安全運転義務違反」となります。

 「他人に危害を及ぼさないような速度と方法」に反しているとされるのはどういった状況になるのか、法律事務所のサイトに挙げられている事例から考えてみます。まず、イヤホンをしていた場合は「音楽に集中する、考えごとをするといった漫然とした運転による前方不注意」と判断される可能性があります。また、イヤホンによって周囲の音が聞きづらい状況にあれば「安全確認の不十分」にも該当する可能性もありそうです。「安全運転義務違反」と判断された場合の罰則は「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」です。反則金は普通車で9000円(大型車12000円、二輪車7000円、原付6000円)、違反点数は2点となっています。

イヤホン使用そのものを禁止している自治体もある

 このように「安全運転義務違反」になる可能性はあっても、法律で「イヤホン」そのものに触れているものはありません。しかし、各都道府県の条例では明確に禁止しているところもあります。たとえば東京都は、「道路交通法施行細則第8条」で「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。」としています(ただし、難聴者の補聴器は除く)。

 つまり、たとえ音量が小さかったとしてもイヤホンをしていると外の音が聞こえにくくなる点が問題だと考えられます。これに違反した場合、罰則としては5万円以下の罰金、反則金は普通車で6000円(大型車7000円、二輪車6000円、原付5000円)となっています。他にも神奈川県、茨城県、愛知県、大阪府、北海道、熊本県などをはじめとして、程度や状況に違いはあるようですが、かなり多くの都道府県で禁止されています。またこれは「片耳」でも「ワイヤレス」でも同様です。こういった点から考えると、基本的にイヤホンをしての運転はできないと考えておいた方がよさそうです。

<参考サイト>
車を運転中のイヤホンは違反?ワイヤレスイヤホンは?|ZURICH
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-earphones-driving-violate/
道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)|e-GOV 法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
東京都道路交通規則
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002199.html
運転中にイヤホンを使うと違反?片耳イヤホンや自転車の運転中は?|交通事故弁護士解決ナビ
https://atomfirm.com/media/79768
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