社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.03.04

世界の観光都市ランキング

 感染症流行もおさまりつつあり、観光地では人々が集まりにぎわいを取り戻しています。
そんな中、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が2022年に行った観光に関する統計をもとに、最新の「世界の観光都市ランキング」を発表しました。

 フランスのパリ、中国の上海など名だたる観光地が並ぶ中、あまり聞きなじみのない都市名もランクイン。日本からは、東京が7位にランクインしています。

世界の観光都市ランキングとは

 今回取り上げるのは、観光業界団体の世界旅行ツーリズム協議会(World Travel & Tourism Council、以下WTTC)制作の観光都市ランキングです。WTTCは観光客の現地での支出額、政府や自治体、企業が観光客を呼ぶために行った投資、人件雇用費などをもとに調査。旅行&観光における都市への直接GDP(国内総生産)寄与額から、ランキングが作成されました。

2022年 最も観光力がある都市はパリ

 それでは、旅行&観光部門でGDP寄与額が高い都市ランキングを見てみましょう。

<2022年 世界の観光都市ランキング(GDP寄与額)トップ10>
1位:パリ 360億ドル(約4.6兆円)
2位:北京 330億ドル(約4.2兆円)
3位:オーランド 310億ドル(約4兆円)
4位:上海 300億ドル(約3.8兆円)
5位:ラスベガス 230億ドル(約2.9兆円)
6位:ニューヨーク 211億ドル(約2.7兆円)
7位:東京 180億ドル(約2.3兆円)
8位:メキシコシティ 170億ドル(約2.2兆円)
9位:ロンドン 150億ドル(約1.9兆円)
10位:広州 130億ドル(約1.7兆円)
(WTTC『The World's 50 Best Restaurants』より)
(※ドル円換算額は1ドル128円で算出)

 パリと北京が、3位のオーランドに大きく水をあけて2トップとなりました。CNNによると、パリの場合、2024年に開催予定の夏季オリンピックに向けてインフラの整備や治安対策に多額の投資を行ったことが影響したと解説しています。

 ここで気になるのは、3位のオーランド。アメリカのフロリダ州の都市ですが、聞きなじみのない人も多いでしょう。

 オーランドは、実は世界屈指のテーマパークの密集地。世界最大規模を誇るウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを始めとして、ユニバーサル・オーランド・リゾート、人気の水族館シーワールド・オーランド、ワニ中心の動物園ゲーターランドなどがあり、テーマパーク好きにはたまらない“聖地”となっています。さらに気候も1年を通して温暖で、季節問わず観光客が訪れます。世界トップクラスの観光都市というのも納得です。

中国の都市が躍進中。10年後は北京が首位に?

 WTTCは「(今回はパリが1位だが)2032年までに北京に追い越される」と述べています。

 中国はこれまでも国をあげて交通インフラ、ホテルの建設などへ積極的に投資しており、過去10年間で観光のGDP寄与額を大きく伸ばし続けてきました。北京は今回330億ドルとなりましたが、WTTCは今後10年間で北京は770億ドル(約9.9兆円)となり、現在4位の上海も710億ドル(約9.1兆円)と倍以上の成長を遂げ、世界1、2位を争う“最強”観光都市となると予測しています。

 パリも360億ドルから490億ドルになると試算されていますが、北京・上海の躍進には敵わず、3位に転落するだろうと指摘しています。

 WTTCはほかにも、リゾート地として観光客に人気を集めている中国の三亜(さんあ)が、2019年から比較してGDP寄与額が10.2%増と急成長を遂げていることに注目。三亜は、市のGDP全体の43.6%が観光で占められたそうです。

 今後10年の間に、中国が観光大国としてますます存在感を示すことになるのかもしれません。

<2032年 世界の観光都市ランキングトップ10(予測値)>
1位:北京 770億ドル(約9.9兆円)
2位:上海 710億ドル(約9.1兆円)
3位:パリ 490億ドル(約6.3兆円)
4位:オーランド 450億ドル(約5.8兆円)
5位:ラスベガス 370億ドル(約4.7兆円)
6位:広州 350億ドル(約4.5兆円)
7位:ニューヨーク 340億ドル(約4.4兆円)
8位:マカオ 330億ドル(約4.2兆円)
9位:バンコク 320億ドル(約4.1兆円)
10位:東京 300億ドル(約3.8兆円)

 なお、観光客の「支出額」のみに焦点を当ててみると、トップ10位以内にランクインしている中国の都市はマカオのみ。1位はドバイ、2位はドーハ、3位はロンドンとなっています。

<2022年 海外旅行者支出額ランキングトップ10>
1位:ドバイ 290億ドル(約3.7兆円)
2位:ドーハ 168億ドル(約2.2兆円)
3位:ロンドン 160億ドル(約2兆円)
4位:マカオ 156億ドル(約1.9兆円)
5位:アムステルダム 136億ドル(約1.7兆円)
6位:イスタンブール 131億ドル(約1.67兆円)
7位:バルセロナ 127億ドル(約1.6兆円)
8位:ニューヨーク 125億ドル(約1.6兆円)
9位:シンガポール 110億ドル(約1.4兆円)
10位:パリ 98億ドル(約1.2兆円)

 GDP寄与額で7位となった東京は、残念ながらここではランクインならず。インバウンド政策による観光客誘致が十分でないか、感染症の流行のダメージが未だ残っているせいもあるでしょう。記録的な円安により、日本で使われる金額がそこまで高くないことも影響しているかもしれません。

 とはいえ10年後予想では、東京は180億ドルから300億ドルに大幅アップされると試算されており、観光都市としてはまだまだこれから。今後も注視していきたいですね。

<参考サイト>
・WTTC reveal Paris as the World’s Most Powerful City Destination
https://wttc.org/news-article/wttc-reveal-paris-as-the-worlds-most-powerful-city-destination
・世界「最強」の観光都市ランキング パリ1位、東京は7位(CNN)
https://www.cnn.co.jp/travel/35198881.html
世界の観光都市力ランキング2022、トップはパリ、東京は7位、10年後は北京と上海がツートップの予測も│トラベルボイス
https://www.travelvoice.jp/20230124-152807
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動

国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
中西輝政
京都大学名誉教授 歴史学者 国際政治学者
2

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
3

葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る

葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る

編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為

葛飾北斎と応為という「画狂親娘」の人生と作品について、堀口茉純先生にそれぞれの絵をふんだんに示しながら教えていただいた講義を、今回の編集部ラジオで紹介しました。

葛飾北斎といえば知らぬ人はいない江戸の絵...
収録日:2025/12/04
追加日:2025/12/18
4

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生

葛飾北斎の娘であるお栄は、「応為」という画号で独自の絵画表現を切り拓いた。北斎とは異なる、女性ならではの描き方は、特に身体表現に現れ、西洋画の陰影表現の色濃い影響を感じさせる。積極的に新たな画法を吸収し、後世の...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/13
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
5

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由

かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授