テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.04.25

日本にある「エレベーターで上陸する島」とは?

 知る人ぞ知る、「エレベーターで上陸する島」をご存じですか。エレベーターで上陸……だなんて、まるでSF世界のできごとのような話ですが、事実、そのような島は日本に存在します。

 その島の名は、瀬戸内海に浮かぶ「岩黒島(いわくろじま)」。船のみ、あるいは飛行機のみと、上陸手段の乏しい離島は日本各地にありますが、エレベーターでしか上陸できないというのはほとんど聞いたことがありませんよね。

 さてこの「岩黒島」とは、いったいどんな島なのでしょうか。

瀬戸大橋の通り道に浮かぶ、漁業とクマゼミの島

 岩黒島は、香川県の坂出港から北へ13kmに位置し、面積は0.17平方キロメートル。上野動物園ほどの大きさで、島民の人口も75名(2022年)という非常に小さな島です。

「岩黒島」という島の名は、閃緑岩(せんりょくがん)という黒っぽい岩が島の半分を占めていることが由来だそうです。島の北には、この閃緑岩がごろごろと落ちている黒っぽい砂浜、その名も「黒浜」があります。

 主な産業は漁業。島民の多くが漁師で、島外からも釣り人がたくさん訪れます。そのため小さな島ながら民宿が3軒もあり、瀬戸内の豊かな海の幸を堪能できるということです。

 島内には島の守護神である「田子神社」や、珍しい陶器製の狛犬がいる「大天狗神社」などの名所がありますが、中でもひときわ目立つのが、中学校の体育館に描かれた巨大な「クマゼミの壁画」。かつて島内にたくさん生息していたクマゼミを島のシンボルにしようと、島内の中学生らが中心となって描いたものです。瀬戸大橋からもよく見え、“クマゼミの島”を強く印象づけるものとなっています。

「岩黒島」へのアクセス方法

 さて肝心のアクセス方法ですが、島への定期船はなく、瀬戸大橋から入島するしかありません。島には瀬戸大橋の橋脚が立っており、直接車で入れるように感じられるでしょう。

 しかし、橋から車で入島できる道『岩黒島ランプウェイ』を使えるのは、島民のみ。一般観光客は、坂出駅または児島駅から路線バスで瀬戸大橋を進み「岩黒島」バス停に下車後、島へとつながるエレベーターを使う必要があります。上陸手段は、このエレベーターのみなのです。

 エレベーターはガラス張りで、ガラス越しに見える美しい島と海の景色は抜群の眺め。島に降り立つと、島民専用道路のランプウェイを見上げることができます。ぐるぐると渦巻くコンクリートのらせん道路と豊かな自然、青い空の対比は、過去と未来の世界が融合したかのような圧巻の光景といえるでしょう。

 島まで行くのに、船も飛行機も車も使えない。エレベーターでしか上陸手段がないが、ひとたび島に降り立てば、ほかにはない絶景が待っている――――……そんな物珍しさから、岩黒島は人気テレビ番組『ナニコレ珍百景』で取り上げられ(しっかり“珍百景”に登録)、全国的にその名が知られるようになりました。

エレベーターで上陸する島、実はもうひとつある!

 実はエレベーターで上陸できる島は、岩黒島だけではありません。愛媛県今治市、岩黒島と同じく瀬戸内海に浮かぶ島「馬島(うましま)」です。

 馬島は、人気サイクリングスポット「しまなみ海道」に含まれる、来島海峡大橋の通り道にあります。面積は0.5平方キロメートルと岩黒島よりも広いですが、島民はわずか10名ほど(2022年)。島の名は、江戸時代に今治藩がこの島で馬の放牧をしていたことに由来しています。

 島までは路線バスを利用して「馬島」バス停で下車するか、本数は少ないですが定期船の運行があります。一般観光客は特別な許可がない限り、自家用車で入島することはできません。

 岩黒島と同じく橋脚の下に島があるため、エレベーターで降りて上陸します。サイクリスト憧れの地とも言われるだけあって、エレベーターは自転車も乗り入れ可能。ゆうゆう入れる大きさです。

 降り立った先の景色は、まさに別世界。特に海岸から目の前に広がる来島海峡の潮流はすさまじく、その迫力から自然の雄大さを感じられるでしょう。

 目立った観光名所はありませんが、近年、グランピングが楽しめる高級リゾートホテルが開業し、注目を集めています。観光客は増えつつあるものの、島民の居住エリアへの立ち入りは厳禁。また海域の潮流は非常に激しく危険なため、遊泳も禁止されています。

 馬島に限りませんが、入島の際はしっかりとルールを確認しましょう。

非日常の体験だらけの別天地へ

 いかがでしたか。いずれの島も、上陸する瞬間から非日常感あふれる秘境の地です。忙しい毎日に疲れたら、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・エレベーターで行く島(岩黒島)(香川県HP)
https://www.pref.kagawa.lg.jp/chiiki/seto-island/detail/iwakurojima.html
・「クマゼミの島」よもう一度…岩黒島の中学校に巨大壁画が完成 香川・坂出市(KSBニュース)
https://news.ksb.co.jp/article/13848251
・「エレベーターで上陸する島」は、うねる渦潮を目の前で見ることができる激レアスポットだった!(ローカリティ)
https://thelocality.net/umashima-shimanamikaido/
・馬島(いよ観ネット)
https://www.iyokannet.jp/spot/3321
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
2

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長
3

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

DEIの重要性と企業経営(3)健康経営でDEIを推進する

どのようにすればDEIを実現していけるのか。一つのヒントとなるのが「健康経営」である。はたして健康経営を目指している企業にとって、DEIの視点を取り入れることが企業利益につながるのか。また、従業員のウェルビーイングと...
収録日:2025/05/22
追加日:2025/08/22
山本勲
慶應義塾大学商学部教授
4

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授