社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
JR会長が語った!「新幹線のココが凄い」
50年前の今日、1964年10月1日、東海道新幹線が開通した。戦後復興のただ中で日本の高度経済成長を支えた高速鉄道は、当時「夢の超特急」と呼ばれた。
高速鉄道ならフランス・ドイツなどヨーロッパにもある。フランスのTGVしかり、ドイツのICEしかり。だが実は、それら欧州の高速鉄道と新幹線では、しくみそのものが根本的にちがうのだという。そうなのか。知らなかった。
いったい東海道新幹線は、何が、どう、スゴいのか。JR東海の葛西敬之名誉会長は、こう語る。
まず、線路が専用線であること。
在来線には、さまざまな速度、重さ、長さ、停車パターンの列車が入り混じって走ります。そこに高速鉄道が加わるのは、効率が悪く、危険もあります。
そこで我々は、独立した高速旅客列車専用線をつくりました。そこは平面交差がなく(線路や道路と交わらず)、物理的にも法律的にも厳重に守られた空間で、他のものは一切入ってくることができません。そのなかできわめて高性能な制御装置を駆使し、世界で初めて、「衝突回避」の原則確立に成功したのです。
のべ56億人を乗せた半世紀の歴史の中で、列車事故による旅客の死傷ゼロ。完全な安全記録を維持してきました。
次に、徹底した効率化です。現在、東海道新幹線では、ベースとなる車両は700系、N700系の2種類のみ。全ての列車が16両編成です。そして、その全ての車両の長さ、ドアの位置、座席数が決まっていて、いかなる編成も皆その形になっています。このきわめて高い互換性、汎用性が、抜群の高効率化をもたらしています。
しかしヨーロッパでは、これができません。なぜか。19世紀に飛躍的に発展したヨーロッパでは、当時たくさんの鉄道網が敷かれ、今もそれが使われているからです。もちろん、新設区間は高速列車専用にします。しかし、列車は、19世紀につくられた在来線にもそのまま乗り入れます。そんな環境で「衝突回避」はむずかしい。安全性を高めるため、むしろ衝突しても列車の乗客は大丈夫なようにと、さまざまな対策がなされ、大きく、重く、頑丈な列車ができてきました。ヨーロッパの都市のなりたちからすれば、それは自然で妥当な選択です。しかし、日本の東海道新幹線のような安全性、高効率性、省エネ性(車輛が軽いのでエネルギーが少なくてすむ)は望めません。
ひとくちに「高速鉄道」といっても、そんなにも別物だということに驚いた。葛西会長は言う。
「東海道新幹線開業50周年を機に、われわれが今やろうとしていることは、東海道新幹線の持っているその特性を、一つの国際的な高速鉄道技術の標準にして世界に発信するということです」
たしかに、アジアをはじめ、古い鉄道網をもっていない国は多い。いや、持っている国こそ少ないだろう。そこに日本の高効率システムを導入すればいいという発想だ。うむ、なるほど。
東海道新幹線、半世紀。「夢の超特急」は、いま、新たな「夢」をのせて、今度は世界にはばたこうとしている。
高速鉄道ならフランス・ドイツなどヨーロッパにもある。フランスのTGVしかり、ドイツのICEしかり。だが実は、それら欧州の高速鉄道と新幹線では、しくみそのものが根本的にちがうのだという。そうなのか。知らなかった。
いったい東海道新幹線は、何が、どう、スゴいのか。JR東海の葛西敬之名誉会長は、こう語る。
まず、線路が専用線であること。
在来線には、さまざまな速度、重さ、長さ、停車パターンの列車が入り混じって走ります。そこに高速鉄道が加わるのは、効率が悪く、危険もあります。
そこで我々は、独立した高速旅客列車専用線をつくりました。そこは平面交差がなく(線路や道路と交わらず)、物理的にも法律的にも厳重に守られた空間で、他のものは一切入ってくることができません。そのなかできわめて高性能な制御装置を駆使し、世界で初めて、「衝突回避」の原則確立に成功したのです。
のべ56億人を乗せた半世紀の歴史の中で、列車事故による旅客の死傷ゼロ。完全な安全記録を維持してきました。
次に、徹底した効率化です。現在、東海道新幹線では、ベースとなる車両は700系、N700系の2種類のみ。全ての列車が16両編成です。そして、その全ての車両の長さ、ドアの位置、座席数が決まっていて、いかなる編成も皆その形になっています。このきわめて高い互換性、汎用性が、抜群の高効率化をもたらしています。
しかしヨーロッパでは、これができません。なぜか。19世紀に飛躍的に発展したヨーロッパでは、当時たくさんの鉄道網が敷かれ、今もそれが使われているからです。もちろん、新設区間は高速列車専用にします。しかし、列車は、19世紀につくられた在来線にもそのまま乗り入れます。そんな環境で「衝突回避」はむずかしい。安全性を高めるため、むしろ衝突しても列車の乗客は大丈夫なようにと、さまざまな対策がなされ、大きく、重く、頑丈な列車ができてきました。ヨーロッパの都市のなりたちからすれば、それは自然で妥当な選択です。しかし、日本の東海道新幹線のような安全性、高効率性、省エネ性(車輛が軽いのでエネルギーが少なくてすむ)は望めません。
ひとくちに「高速鉄道」といっても、そんなにも別物だということに驚いた。葛西会長は言う。
「東海道新幹線開業50周年を機に、われわれが今やろうとしていることは、東海道新幹線の持っているその特性を、一つの国際的な高速鉄道技術の標準にして世界に発信するということです」
たしかに、アジアをはじめ、古い鉄道網をもっていない国は多い。いや、持っている国こそ少ないだろう。そこに日本の高効率システムを導入すればいいという発想だ。うむ、なるほど。
東海道新幹線、半世紀。「夢の超特急」は、いま、新たな「夢」をのせて、今度は世界にはばたこうとしている。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
日本の陸軍は第二次世界大戦を「100年戦争」であると見なした。勝てる見込みは少なかったにもかかわらず、天皇と国民の一体性という精神主義によって、総力戦になだれこんでいった。石原莞爾が満州事変を起こした時に描いたスト...
収録日:2020/02/26
追加日:2020/08/04
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15