社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
親しくなれる人数の限界が「150人」な理由とは?
「ダンバー数」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ヒトが社会のなかで互いを理解し合い、複雑な関係を維持できる集団の大きさの限界を示す数字で、150人である。
しかし、いまだに狩猟採集民として暮らす約20の部族社会では、氏族や村といった集団の平均人数は153人であることが分かった。アメリカで厳しい宗教戒律に基づいた独自の共同体を形成する「アーミッシュ」は、構成員の平均が110人で、人数が150人を超えると共同体を二つに分けてしまう。
ビジネス組織論では、1950年代から、組織の規模が150~200人を越えるとさぼりや病欠がぐっと増えることが知られてきた。うまく機能しているヒトの集団は、どこでも150人程度なのである。
このことから予想できるのは、実は、複雑な社会こそ脳の発達を促した原因ではないかということだ。ヒトの脳がこれほど発達したのは、大きく複雑な集団を作るためだったとも考えられる。
ヒヒ、アカク、チンパンジーなど、地上で生活する時間が長く、敵に出会うリスクが大きいサルほど、集団を大きくすることが分かっている。ほぼすべての時間を地上で生活するヒトが、大集団を作るのは当然のことだ。「ヒトは独りでは生きられない」とよく言うが、はるか昔は、今よりずっと切実に、ヒトは独りでは生きられなかったのである。
しかし一方で、ダンバー数を越えたところでは、巨大組織は複雑な人間関係を築かなくても済むような仕組みで作られている。隣の部署や隣町のことがほとんど分からなくても、うまく回るように設計されているのだ。
ダンバー数を踏まえると、フェイスブックで1000人の友達がいる人気者も、結局お互いをよく知っている友達はおそらく150人、多くても200人だと予想がつく。あとはきっと、友達の友達とか、昔の友達とか、ちょっとした仕事上の知り合いのはず。お互いに信頼できる友達の数には限界があるのだ。
複雑な関係を維持できるのは、150人
一見、この数字には根拠がなさそうに思える。フェイスブックには、1000人以上の友達がいる人が別に珍しくない。社員10000人を超える会社がいくつもあり、都市には何百万人、何千万人が共に生きている。150という数字はどこにも見当たらないようだ。しかし、いまだに狩猟採集民として暮らす約20の部族社会では、氏族や村といった集団の平均人数は153人であることが分かった。アメリカで厳しい宗教戒律に基づいた独自の共同体を形成する「アーミッシュ」は、構成員の平均が110人で、人数が150人を超えると共同体を二つに分けてしまう。
ビジネス組織論では、1950年代から、組織の規模が150~200人を越えるとさぼりや病欠がぐっと増えることが知られてきた。うまく機能しているヒトの集団は、どこでも150人程度なのである。
脳の新皮質のサイズが、ダンバー数を決定
一体なぜ、ダンバー数は150人なのか。実は、脳の大きさに秘密がある。動物の集団サイズと、脳の「新皮質」と言われる部分のサイズに、強い相関関係があるのだ。つまり、脳が大きいサルほど、集団が大きくなるのである。当然、ヒトの集団サイズが最も大きい。それが150人なのである。このことから予想できるのは、実は、複雑な社会こそ脳の発達を促した原因ではないかということだ。ヒトの脳がこれほど発達したのは、大きく複雑な集団を作るためだったとも考えられる。
敵から身を守るために、大集団を作る
では、なぜ霊長類は大きな集団を作ってきたのか。最大の理由は、敵から身を守るためである。ヒヒ、アカク、チンパンジーなど、地上で生活する時間が長く、敵に出会うリスクが大きいサルほど、集団を大きくすることが分かっている。ほぼすべての時間を地上で生活するヒトが、大集団を作るのは当然のことだ。「ヒトは独りでは生きられない」とよく言うが、はるか昔は、今よりずっと切実に、ヒトは独りでは生きられなかったのである。
巨大組織では、全員を知らなくてもよい
こう考えると、ヒトが150人を越える大組織を次々に作ってきたことは興味深い。巨大組織もダンバー数から逃れることはできないから、10000人の大企業でも、細かく見ていけば必ず100~200人程度の小集団に分かれているはずだ。しかし一方で、ダンバー数を越えたところでは、巨大組織は複雑な人間関係を築かなくても済むような仕組みで作られている。隣の部署や隣町のことがほとんど分からなくても、うまく回るように設計されているのだ。
ダンバー数を踏まえると、フェイスブックで1000人の友達がいる人気者も、結局お互いをよく知っている友達はおそらく150人、多くても200人だと予想がつく。あとはきっと、友達の友達とか、昔の友達とか、ちょっとした仕事上の知り合いのはず。お互いに信頼できる友達の数には限界があるのだ。
<参考文献>
・『友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著 インターシフト)
・『友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著 インターシフト)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13


