社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.10.03

「神社でしてはいけないこと」6選

 神社はお寺と並んで日本人に非常になじみ深い場所であるとともに、日本人の心を象徴する場所でもあります。厳格な作法があるわけではありませんが、俗世と離れた神域にいるという意識を持ち、神様に敬意を払うという意味でも、境内でのふるまいやマナーを心得ておくのは大切です。

NG行動【1】一礼せずに鳥居をくぐる

 門や入口は神域と俗世を分ける結界の意味があります。神社の結界は鳥居で、その先は神様の居場所です。よそ様のお宅にお邪魔する時のように、まずは鳥居の前で一礼してから境内に入りましょう。

 初詣の人混みなど立ち止まるとどうしても通行の妨げになってしまう場合は、心の中で「失礼します」「お邪魔します」など一言述べてから鳥居をくぐるようにします。

NG行動【2】“穢れ”とされるものを持ち込む、連れてくる

 神様は清浄を好まれるため、神域内に穢れを持ち込むのは御法度です。清浄を保つという意味で、ペットなどの動物連れを禁止するところが多くあります。もちろんペット同伴可能な神社もありますので、あらかじめHPなどを見て確認しておきましょう。

 アニマル柄の衣装や毛皮製品を身につけた状態、生ものを持ち歩いての参拝も、殺生や不浄を連想させるためNG行為となります。衣装はスーツのような正装が理想ですが、そこまでいかずともできるだけナチュラルめで露出を控え、清潔感のある身だしなみを心がければ、神様も喜ばれるでしょう。

 また、発熱や咳、鼻水といった症状があるまま境内に上がるのも、神域を汚すことにつながります。体調不良の時は「まずは自分の体を労りなさい」という神様からの愛あるメッセージと受け取り、無理せず静かにお家で過ごすとよいでしょう。

 なお、私たちの体には目に見えない穢れがついており、鳥居をくぐることで体を浄化するという意味があるそうです。そのため駐車場から近いから、近道だからと、鳥居をくぐらず境内に上がるのは、できるだけ避けたほうが好ましいとされます。

NG行動【3】参道の真ん中を歩く

 鳥居の前で軽く一礼をしたら参道に入りますが、この時、参道は左右どちらかの端を歩くようにし、真ん中を歩くのは避けましょう。参道の中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれる神様の通り道で、そこを人が通るのは失礼とされるのです。

 とはいえ、絶対に通ってはいけない、というわけではなく、どうしても横切らなければならない時もあるでしょう。そんな時は、本殿に向かって頭を少しさげつつ、心の中で「失礼します」などとお断りしながら通ればOKです。

 また、せっかくの参道を傷つけないために、ヒールのある靴は控えましょう。

NG行動【4】金属、宝飾品を過度に身につける

 大昔の神職は裸になって川に入り、体を清める「みそぎ」をしてから神前奉仕を行いました。そのため参拝時はできる限り着飾らず、余計なものは身につけないほうが、本来の参拝の形に近いとされています。

 現在も昇殿参拝において「時計、携帯電話、アクセサリー類はこちらへ」と預かり用の箱や袋が用意されていることがあります。意外に思われるかもしれませんが、神様は貴金属や宝飾品がはなつギラギラした光が苦手なのです。

 一般参拝の場合は、本殿に着いたら可能な範囲でアクセサリー類や帽子、サングラス等は外し、カバンの中にしまうなどして神様から見えないようしましょう。

NG行動【5】本殿のご神体に向かって写真を撮る

 SNSの普及もあり「映える」写真を求める人が多くなりました。本殿の参拝待ちで並んでいると、たまに本殿に向けてスマホを掲げる人を見かけますが、これはマナー違反です。ご神体は見世物ではなく神様の分身ですから、撮影は失礼な行為にあたります。

 本殿の写真を撮りたい場合は、まずはしっかりと参拝をして神様にご挨拶をしてからにします。そしてご神体が見えないよう建物の側面から撮るか、どうしても正面を取りたい場合は少し離れた位置から撮影し、本殿の内部が見えないようにしましょう。

NG行動【6】「ながら」参拝をする

 スマホを見ながら、飲食しながら、音楽を聴きながら、ぺちゃくちゃおしゃべりしながら……といった「ながら歩き」にあたる行為は、他の参拝者の迷惑や衛生面の問題につながるのはもちろんのこと、せっかくの清浄な気を取り込む機会を自ら制限していることになり、非常にもったいない行為です。どんなに強力なパワースポットだとしても、心ここにあらずでは十分な効果は得られないでしょう。

 美しい社殿のたたずまい、吹き抜ける風、木漏れ日のやわらかさ、境内の森の匂い、鳥のさえずり、池で魚が跳ねる音……などなど、神社で見聞きするものにはぜひ五感をフル活用し、体全体で堪能してみてください。帰るころには、身も心も清々しい気で満たされているはずです。

神様への敬意と感謝をこめて参拝しよう

 いかがでしたか。頻繁に「清浄」「礼儀」「マナー」「NG」といった言葉が使われていたため、どこか厳しい印象を持たれた方も多いかもしれません。寺社個別でのルール、作法も存在しますので、戸惑うこともあるでしょう。

 しかし、どのようなマナー、参拝方法であっても、神様仏様に対して「敬意」と「感謝」に基づいていることに変わりなく、私たち日本人なら誰でも持ち合わせている大切な精神から生まれたものです。ぜひその意味を理解し、寺社の格式・大小関係なく、心を込めてお参りしましょう。

<参考文献>
・『神社で引き寄せ開運☆』(白鳥詩子 著/三笠書房)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動

国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
中西輝政
京都大学名誉教授 歴史学者 国際政治学者
2

2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る

2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力

「織田家中一の武略者」――今までの大河ドラマでは見たことがない秀吉の姿が見られるという2026年NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。いったいどういうことなのか。日本史の中でもファンの多い戦国時代だが、特に「天下一統」に向かう...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/17
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
3

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由

かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
4

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生

葛飾北斎の娘であるお栄は、「応為」という画号で独自の絵画表現を切り拓いた。北斎とは異なる、女性ならではの描き方は、特に身体表現に現れ、西洋画の陰影表現の色濃い影響を感じさせる。積極的に新たな画法を吸収し、後世の...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/13
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
5

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授