社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
心が楽になる!『REAPPRAISAL』で学ぶ最先端脳科学の思考法
いつの時代も人間は感情との付き合い方に悩まされてきました。不安、恐怖、緊張、焦燥……。ネガティブな感情は時として私たちを振り回し、日常生活に影響を及ぼすことがあります。感情を上手にコントロールして、充実した心穏やかな生活を送りたいと願う人は少なくないでしょう。
今回ご紹介する『REAPPRAISAL(リアプレイザル) 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(内田舞著、実業之日本社)はそのような願いに答えてくれる一冊です。脳科学の専門家が科学的な根拠に基づいた感情のコントロール方法を解説してくれます。著者の経験談やわかりやすい具体例などを交えながら平易な言葉で説明してくれるため、とても読みやすくなっています。
本書の内容を目次に沿って簡単にご紹介しましょう。まず第1章「課題の発見」では、人はなぜ不安を感じるのかについて説明されます。脳科学の観点から脳と感情のメカニズムについて学ぶことができます。
第2章「解決の手法」では、感情に支配されず、自分をコントロールする方法について解説されています。本書のタイトルにもなっている「リアプレイザル(Reappraisal)」についても具体例を交えて紹介されています。
第3章「レジリエンスを育てるために」では、困難を乗り越え、レジリエンスを育成するための実践的なアドバイスが示されます。「回復力」とも訳され、近年ビジネスシーンでも注目されている「レジリエンス」ですが、この力はどのようにすれば身につくのでしょうか。
第4章「メンタルヘルスが崩れたときに」では、心の調子が崩れてしまったときの対処法が、主に医学的な観点から解説されます。
最後の第5章「揺れ動く社会と再評価」では、複雑化する現代社会の中で、自分の心の安定を保つ方法に焦点が当てられています。社会問題について発信し続けてきた内田先生の洞察が光る章です。
具体的には、不安などのネガティブな感情を抱いてしまった時、「どうして今このように感じているのか」や、「その背景にある考え方や自分の経験とはどんなものなのか」、そして「その感情や考え方から起きている行動を変えることができるだろうか」といった問いを自らに投げかけることで、感情に対処し、コントロールするのです。これが「再評価」とも訳される「リアプレイザル(Reappraisal)」という思考法です。
この手法において重要なのは、ネガティブな感情を感じた時に、一度「立ち止まること」です。人間の脳は、好きか嫌いか、快いか不快かを瞬時に判断するようにできています。脳の仕組みがそうなっている以上、それは避けようがありません。ですが、人間は心に湧いた感情のままに、直情的に行動を起こすだけの生き物ではありません。「この感情に従うべきだろうか、行動すべきだろうか」あるいは「立ち止まるか」という、行動への判断が大切なのです。
ある日、内田先生が仕事から帰宅したとき、3歳になる息子が保育園で作った工作を見せたがっていました。しかし、内田先生には帰宅後すぐに対応すべきことがあったため、息子の工作を見てあげられませんでした。これに息子は怒り、わざとコップの水を絨毯にこぼしてしまったのです。
通常ならば、「どうしてそんなことをするの!」と怒りたくなる場面です。ですが、内田先生は息子を抱き上げ、「今何が起きたか一緒に考えてみよう」と提案しました。
息子は「ママが見てくれないから悲しくて、怒りたくなった」(感情)と言います。「どうして悲しかったのか」と尋ねると、息子は「ママにとって自分が一番大切ではないと感じたから」(考え)と答え、「だから水をこぼした」(行動)と続けました。内田先生は息子に謝り、工作をすぐに見てあげられなかった理由を説明しました。そして、息子が持っていた「ママにとって自分は一番大切ではない」という考えが誤りであることを伝えました。その後、一緒に水を拭いたそうです。
この対話を通じて、息子のネガティブな「感情」と「行動」がポジティブなものに変化しました。結果として、2人はお互いにハッピーな気持ちでその日を終えることができたのです。このように、イライラしたり、怒りを感じたりしたとしても、一度立ち止まって状況を整理することで、お互いにとって良い結果を得ることができるのです。
本書は、感情に振り回され、生きにくさを感じているすべての人におすすめできます。「また怒ってしまった……」「何度言ったらわかるの!」「どうせまたうまくいかないよ」など、このような負の感情は誰もが持っているものです。大切なのは、その感情をコントロールすることであり、それがもともとの性格や才能などとは関係なく習得可能な技術だと知ることです。本書を読んで、今よりもきっと心が楽になる思考法「リアプレイザル(Reappraisal)」を試してみてはいかがでしょうか。
今回ご紹介する『REAPPRAISAL(リアプレイザル) 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(内田舞著、実業之日本社)はそのような願いに答えてくれる一冊です。脳科学の専門家が科学的な根拠に基づいた感情のコントロール方法を解説してくれます。著者の経験談やわかりやすい具体例などを交えながら平易な言葉で説明してくれるため、とても読みやすくなっています。
現役ハーバード大学医学部准教授が教える感情との付き合い方
著者の内田舞先生は現在ハーバード大学医学部の准教授として活躍している小児精神科医です。北海道大学医学部を卒業後、イェール大学での研修を経て、日本人として史上最年少で米国の臨床医となるという卓越した経歴の持ち主です。専門知識を生かして一般向けの本も執筆しており、『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)などの著書があります。本書の内容を目次に沿って簡単にご紹介しましょう。まず第1章「課題の発見」では、人はなぜ不安を感じるのかについて説明されます。脳科学の観点から脳と感情のメカニズムについて学ぶことができます。
第2章「解決の手法」では、感情に支配されず、自分をコントロールする方法について解説されています。本書のタイトルにもなっている「リアプレイザル(Reappraisal)」についても具体例を交えて紹介されています。
第3章「レジリエンスを育てるために」では、困難を乗り越え、レジリエンスを育成するための実践的なアドバイスが示されます。「回復力」とも訳され、近年ビジネスシーンでも注目されている「レジリエンス」ですが、この力はどのようにすれば身につくのでしょうか。
第4章「メンタルヘルスが崩れたときに」では、心の調子が崩れてしまったときの対処法が、主に医学的な観点から解説されます。
最後の第5章「揺れ動く社会と再評価」では、複雑化する現代社会の中で、自分の心の安定を保つ方法に焦点が当てられています。社会問題について発信し続けてきた内田先生の洞察が光る章です。
「リアプレイザル(Reappraisal)」とは何か
本書の重要概念である「リアプレイザル(Reappraisal)」とはいったい何を意味するのでしょうか。一言で言えば、それは「嫌な気持ちの扱い方」だと内田先生は言います。具体的には、不安などのネガティブな感情を抱いてしまった時、「どうして今このように感じているのか」や、「その背景にある考え方や自分の経験とはどんなものなのか」、そして「その感情や考え方から起きている行動を変えることができるだろうか」といった問いを自らに投げかけることで、感情に対処し、コントロールするのです。これが「再評価」とも訳される「リアプレイザル(Reappraisal)」という思考法です。
この手法において重要なのは、ネガティブな感情を感じた時に、一度「立ち止まること」です。人間の脳は、好きか嫌いか、快いか不快かを瞬時に判断するようにできています。脳の仕組みがそうなっている以上、それは避けようがありません。ですが、人間は心に湧いた感情のままに、直情的に行動を起こすだけの生き物ではありません。「この感情に従うべきだろうか、行動すべきだろうか」あるいは「立ち止まるか」という、行動への判断が大切なのです。
「リアプレイザル」の実践例――「水をこぼした息子と一緒に」
この「再評価」について、内田先生は自身の実践例を紹介しています。ある日、内田先生が仕事から帰宅したとき、3歳になる息子が保育園で作った工作を見せたがっていました。しかし、内田先生には帰宅後すぐに対応すべきことがあったため、息子の工作を見てあげられませんでした。これに息子は怒り、わざとコップの水を絨毯にこぼしてしまったのです。
通常ならば、「どうしてそんなことをするの!」と怒りたくなる場面です。ですが、内田先生は息子を抱き上げ、「今何が起きたか一緒に考えてみよう」と提案しました。
息子は「ママが見てくれないから悲しくて、怒りたくなった」(感情)と言います。「どうして悲しかったのか」と尋ねると、息子は「ママにとって自分が一番大切ではないと感じたから」(考え)と答え、「だから水をこぼした」(行動)と続けました。内田先生は息子に謝り、工作をすぐに見てあげられなかった理由を説明しました。そして、息子が持っていた「ママにとって自分は一番大切ではない」という考えが誤りであることを伝えました。その後、一緒に水を拭いたそうです。
この対話を通じて、息子のネガティブな「感情」と「行動」がポジティブなものに変化しました。結果として、2人はお互いにハッピーな気持ちでその日を終えることができたのです。このように、イライラしたり、怒りを感じたりしたとしても、一度立ち止まって状況を整理することで、お互いにとって良い結果を得ることができるのです。
本書は、感情に振り回され、生きにくさを感じているすべての人におすすめできます。「また怒ってしまった……」「何度言ったらわかるの!」「どうせまたうまくいかないよ」など、このような負の感情は誰もが持っているものです。大切なのは、その感情をコントロールすることであり、それがもともとの性格や才能などとは関係なく習得可能な技術だと知ることです。本書を読んで、今よりもきっと心が楽になる思考法「リアプレイザル(Reappraisal)」を試してみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
『REAPPRAISAL(リアプレイザル) 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(内田舞著、実業之日本社)
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-65047-0
<参考サイト>
内田舞先生のツイッター(現X)
https://twitter.com/mai_uchida
内田舞先生の公式サイト
https://maiuchida.com/
『REAPPRAISAL(リアプレイザル) 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(内田舞著、実業之日本社)
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-65047-0
<参考サイト>
内田舞先生のツイッター(現X)
https://twitter.com/mai_uchida
内田舞先生の公式サイト
https://maiuchida.com/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
ある国について、あるいはその社会についての詳細な実状は、なかなか外側からではわからないところがあります。やはり、その国についてよくよく知るためには、そこに住んでみるのがいちばんでしょう。さらにいえば、たんに住む...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/20
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13


