社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
『ネガティブクリエイティブ』に学ぶ「おもしろい」仕事術
ネガティブ思考は一般的にあまりいい意味で捉えられないかもしれません。しかし、本当にダメなことでしょうか。メリットをあげるとすれば、たとえばネガティブな人は安易な結論に飛びつきません。また、日々失敗を想定して動くので、多少の失敗にも耐えられるかもしれません。もしかしたらネガティブ思考は、人が生き残るために必要な能力なのではないでしょうか。
ということで、今回紹介する一冊は『ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる』(藤井亮著、扶桑社)です。
著者の藤井亮さんは、1979年生まれで愛知県出身、武蔵野美術大学・視覚デザイン科卒です。はじめに所属した電通関西では「アートディレクター」として活躍。その後、フリーランスを経て、「豪勢スタジオ(GOSAY studios)」を設立。「TAROMAN(タローマン)」「ミッツ・カール君」「石田三成CM」「造船番長CM」などなど「くだらなさ」を徹底した遊び心のあるコンテンツを多く生み出すと同時に、さまざまな賞を受賞しています。
ネガティブ人間がネガティブを武器にする方法を学べるのが本書です。また、藤井さんが現場で積み重ねた経験をもとに考えた、さまざまな仕事術や発想の方法、物事の捉え方や人間関係術なども収められていますので、あらゆる仕事、人間関係に通じる内容といえるでしょう。
この理由について、藤井さんは「おもしろさとは、世間の『常識』や『普通』からいかにジャンプするか、その距離が適切に測れないとつくれないものだからだ」と言います。普通の感覚を持っている人、つまり「つまらない人」のほうが「おもしろい」を客観的に見られるということです。もちろん「天才肌」の人もいますが、「浮き沈みのコントロールは難しいと思う」と藤井さんは言います。
ただ、これが限られた予算でつくる『造船番長』のようなCMでは役に立ったそうです。このCMは昭和テイストのイラストと、ごく簡単なアニメーションで作られた、チープさが味のCMで、藤井さんの言葉を借りれば、「一つの突出したスキルや才能がなくても、できることをかけ合わせることでそれが個性となり、他の人にはできない仕事ができるようになる」事例です。現場では、「予算」が限られています。このとき、自分が持ち合わせているまあまあの力は意外と役にたつ可能性があります。
本書の冒頭では「ビジネス書のコーナーでは、『ポジティブのつくりかた』やら『ポジティブな働き方』といった感じの本が並ぶなど、ポジティブ思考の大安売りが行われている」といいます。しかし、藤井さんはネガティブ思考は武器だと言い切ります。大事なポイントは、「ネガティブだからポジティブにならなければ」と考えるのではなく、「自身のネガティブといかにうまく付き合っていくか」ということです。
本書からは、藤井さんが表現したものの背景にある「仕事術」「物事の捉え方や考え方」といった点で新たな視点が得られます。同時に表現の現場における「苦しみと喜び」「熱量」まで伝わってきます。ここで示されていることは、必ずしも表現の現場に限られたことではなく、あらゆる仕事の場面に置き換えて考えることができそうです。
ありがたいことに、大事な部分にはあらかじめマーカーが引かれている点も本書の特徴です。そこだけを追って読んでも考えのヒントになります。ぜひ手に取って開いてみてください。少しずつ無駄な力が抜けて、だんだんと元気になり、そして「おもしろい」の芽が出てくるはずです。
ということで、今回紹介する一冊は『ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる』(藤井亮著、扶桑社)です。
著者の藤井亮さんは、1979年生まれで愛知県出身、武蔵野美術大学・視覚デザイン科卒です。はじめに所属した電通関西では「アートディレクター」として活躍。その後、フリーランスを経て、「豪勢スタジオ(GOSAY studios)」を設立。「TAROMAN(タローマン)」「ミッツ・カール君」「石田三成CM」「造船番長CM」などなど「くだらなさ」を徹底した遊び心のあるコンテンツを多く生み出すと同時に、さまざまな賞を受賞しています。
ネガティブ人間がネガティブを武器にする方法を学べるのが本書です。また、藤井さんが現場で積み重ねた経験をもとに考えた、さまざまな仕事術や発想の方法、物事の捉え方や人間関係術なども収められていますので、あらゆる仕事、人間関係に通じる内容といえるでしょう。
なぜ「つまらない人」のほうが「おもしろい」を生みだせるのか
藤井さんは淡々とした口調でボソボソと喋ります。制作されたものはコミカルなコンテンツが多いので、会った人には「機嫌悪い?」と無用な心配をさせてしまうそうです。また、たとえば狂気じみたアニメーションを作る人でも、倫理観が吹き飛んだようなギャグ漫画を描く人であっても、実際に会うと紳士的な人ばかりとのことです。この理由について、藤井さんは「おもしろさとは、世間の『常識』や『普通』からいかにジャンプするか、その距離が適切に測れないとつくれないものだからだ」と言います。普通の感覚を持っている人、つまり「つまらない人」のほうが「おもしろい」を客観的に見られるということです。もちろん「天才肌」の人もいますが、「浮き沈みのコントロールは難しいと思う」と藤井さんは言います。
まあまあの武器をかけ合わせることで個性になる
また、「70点くらいのまあまあできるくらいの武器をいくつか持っておくことをおすすめします」とも言います。それらをかけ合わせることで独自の作風になるとのこと。たとえば藤井さんは、自身でイラストを描いたり、アニメーションを作ったりすることもできます。本人曰く、これは「まあまあ」のものでプロフェッショナルの仕事ではないとのこと。ただ、これが限られた予算でつくる『造船番長』のようなCMでは役に立ったそうです。このCMは昭和テイストのイラストと、ごく簡単なアニメーションで作られた、チープさが味のCMで、藤井さんの言葉を借りれば、「一つの突出したスキルや才能がなくても、できることをかけ合わせることでそれが個性となり、他の人にはできない仕事ができるようになる」事例です。現場では、「予算」が限られています。このとき、自分が持ち合わせているまあまあの力は意外と役にたつ可能性があります。
ネガティブ人間とポジティブ人間のバランスも大事
ネガティブ絶賛の本書ですが、現場では「アクセルを踏む人(ポジティブな人)、ブレーキをかける人(ネガティブな人)の両方がいなければレースはできません」とも言います。実際にポジティブだらけの現場では、立ち止まって考えることができなくなったそうです。一方でネガティブだらけの現場であれば、リスクを精査しすぎて現場が回らなくなることも想像に難くありません。本書の冒頭では「ビジネス書のコーナーでは、『ポジティブのつくりかた』やら『ポジティブな働き方』といった感じの本が並ぶなど、ポジティブ思考の大安売りが行われている」といいます。しかし、藤井さんはネガティブ思考は武器だと言い切ります。大事なポイントは、「ネガティブだからポジティブにならなければ」と考えるのではなく、「自身のネガティブといかにうまく付き合っていくか」ということです。
力が抜けて元気になる本
自身のことを「ネガティブ」と言う藤井さんですが、実際には「自分の置かれた状況や自分の性質をどう活かして、何に力を注ぐか」ということを絶えず考えながら実践してきた人です。これができるのは、ある程度タフで内側に情熱を秘めているからと言えそうですが、藤井さんが表現された「変なもの」はなんとも力が抜けていて楽しいのです。本書からは、藤井さんが表現したものの背景にある「仕事術」「物事の捉え方や考え方」といった点で新たな視点が得られます。同時に表現の現場における「苦しみと喜び」「熱量」まで伝わってきます。ここで示されていることは、必ずしも表現の現場に限られたことではなく、あらゆる仕事の場面に置き換えて考えることができそうです。
ありがたいことに、大事な部分にはあらかじめマーカーが引かれている点も本書の特徴です。そこだけを追って読んでも考えのヒントになります。ぜひ手に取って開いてみてください。少しずつ無駄な力が抜けて、だんだんと元気になり、そして「おもしろい」の芽が出てくるはずです。
<参考文献>
『ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる』(藤井亮著、扶桑社)
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594096939
<参考サイト>
藤井亮氏のウェブサイト
https://gosay.studio/
藤井亮氏のX(旧Twitter)
https://twitter.com/ryofujii2000
『ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる』(藤井亮著、扶桑社)
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594096939
<参考サイト>
藤井亮氏のウェブサイト
https://gosay.studio/
藤井亮氏のX(旧Twitter)
https://twitter.com/ryofujii2000
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02


