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水道管の崩壊が多発…水道クライシスとは
日本の水道は、2021年現在で約98%という高い普及率に達し、必要不可欠な社会インフラとなっています。
ところが、2024年現在、水道管が老朽化によって次々と崩壊していく「水道クライシス」が、全国的かつ深刻な社会課題となっています。
しかし、2024年現在、高度経済成長期に整備された水道管は老朽化し、年間2万件を超える漏水等の破損が多発。また、法定耐用年数である40年を超えた水道管は全国に約15万キロもあるとされ、割合も年々上昇しています(2017年度16.3%)。
なお、すべての水道管を更新するためには、140年以上かかるとの想定もされているほど、事態は深刻です。
2022(令和4)年4月付けの「令和3年度全国水道関係担当者会議」によると、水道管路の耐震適合率は約4割しかなく、耐震化(年1%の上昇率)が進んでいません。また、大規模災害時には、断水が長期化するリスクがあるとされています。
小規模な水道事業は職員数も少なく、適切な資産管理や危機管理対応に支障がでています。さらに、人口減少社会を迎え経営状況が悪化する中で、水道サービスを継続できないおそれもあります。
そして、多くの事業者が、計画的な更新のために必要な資金を十分確保できていないといわれています。
そのため、水道の基盤強化を図るべく、2019(令和元)年に水道法が改正されました。改正された水道法では、(1)関係者の責務の明確化、(2)広域連携の推進、(3)適切な資産管理の推進、(4)官民連携の推進、(5)指定給水装置工事事業者制度の改善――が主な内容として挙げられ、水道事業の経営基盤の強化に向けたさまざまな方策が定められました。
繰り返しになりますが、水道は生命と安全な生活に直結する、必要不可欠な社会インフラです。
国・都道府県・自治体、さらには水道事業者が改正された水道法の方針に沿って水道事業の基盤強化に努めることは基本となりますが、水道を正しく運用し適切に更新するためには莫大な更新費用、つまり水道事業に係る負担も必要です。しかし、高度成長期でない現在、官だけでは財源の確保が難しくなっています。
そのため、消費者であり水道を必要としている一人ひとりの生活者も、水道クライシスの現状を鑑みつつ長期的な視点と未来志向をもって、水道事業のあり方を考えなおすことが求められています。
ところが、2024年現在、水道管が老朽化によって次々と崩壊していく「水道クライシス」が、全国的かつ深刻な社会課題となっています。
水道クライシスの背景1:老朽化の進行
1957(昭和32)年の「水道法」(水道事業の認可・経営・業務・施設・衛生管理等について規定した法律)制定以降、日本の水道の普及率が飛躍的に上昇しました。そして、1955(昭和30)年~1972(昭和47)年頃のいわゆる高度成長期に、全国各地に水道施設が整備され、多くの水道管が布設されました。しかし、2024年現在、高度経済成長期に整備された水道管は老朽化し、年間2万件を超える漏水等の破損が多発。また、法定耐用年数である40年を超えた水道管は全国に約15万キロもあるとされ、割合も年々上昇しています(2017年度16.3%)。
なお、すべての水道管を更新するためには、140年以上かかるとの想定もされているほど、事態は深刻です。
水道クライシスの背景2:耐震化の遅れ
一方、災害大国ともいわれる日本に特化した課題として耐震化も重要な課題ですが、遅れていることも課題です。2022(令和4)年4月付けの「令和3年度全国水道関係担当者会議」によると、水道管路の耐震適合率は約4割しかなく、耐震化(年1%の上昇率)が進んでいません。また、大規模災害時には、断水が長期化するリスクがあるとされています。
水道クライシスの背景3:経営基盤の脆弱性
他方、水道事業は主に市町村単位で経営されており、多くの事業が小規模で経営基盤が脆弱です。小規模な水道事業は職員数も少なく、適切な資産管理や危機管理対応に支障がでています。さらに、人口減少社会を迎え経営状況が悪化する中で、水道サービスを継続できないおそれもあります。
水道クライシスの背景4:計画と備えの不足
最後に、計画的な更新のための備えが不足していることも課題です。実は、約3分の1の水道事業者において、給水原価が供給単価を上回る原価割れを起こしています。そして、多くの事業者が、計画的な更新のために必要な資金を十分確保できていないといわれています。
水道クライシスへの対策:水道の基盤強化
以上のような水道クライシスにまつわる課題を解決し、将来にわたり安全な水の安定供給を維持していくためには、水道の基盤強化を図ることが必要です。そのため、水道の基盤強化を図るべく、2019(令和元)年に水道法が改正されました。改正された水道法では、(1)関係者の責務の明確化、(2)広域連携の推進、(3)適切な資産管理の推進、(4)官民連携の推進、(5)指定給水装置工事事業者制度の改善――が主な内容として挙げられ、水道事業の経営基盤の強化に向けたさまざまな方策が定められました。
繰り返しになりますが、水道は生命と安全な生活に直結する、必要不可欠な社会インフラです。
国・都道府県・自治体、さらには水道事業者が改正された水道法の方針に沿って水道事業の基盤強化に努めることは基本となりますが、水道を正しく運用し適切に更新するためには莫大な更新費用、つまり水道事業に係る負担も必要です。しかし、高度成長期でない現在、官だけでは財源の確保が難しくなっています。
そのため、消費者であり水道を必要としている一人ひとりの生活者も、水道クライシスの現状を鑑みつつ長期的な視点と未来志向をもって、水道事業のあり方を考えなおすことが求められています。
<参考文献・参考サイト>
・『トコトンやさしい水道の本(第2版)』(高堂彰二著、日刊工業新聞社)
・“水道クライシス”全国危機MAP あなたの町は大丈夫?
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4893/
・8割が知らない水道管の実情 耐用年数超え、交換作業には140年│毎日新聞
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202110_04.pdf
・水道の現状と未来を考える - 国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202110_04.pdf
・日本全国に安全でおいしい水を提供する水道インフラの今
https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/5/data-box/article2.html
・令和3年度全国水道関係担当者会議
https://www.suidanren.or.jp/cms/wp-content/uploads/全国水道関係担当者会議資料(資料編).pdf
・水道事業における官民連携の推進
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001584618.pdf
・『トコトンやさしい水道の本(第2版)』(高堂彰二著、日刊工業新聞社)
・“水道クライシス”全国危機MAP あなたの町は大丈夫?
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4893/
・8割が知らない水道管の実情 耐用年数超え、交換作業には140年│毎日新聞
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202110_04.pdf
・水道の現状と未来を考える - 国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202110_04.pdf
・日本全国に安全でおいしい水を提供する水道インフラの今
https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/5/data-box/article2.html
・令和3年度全国水道関係担当者会議
https://www.suidanren.or.jp/cms/wp-content/uploads/全国水道関係担当者会議資料(資料編).pdf
・水道事業における官民連携の推進
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001584618.pdf
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