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『なぜ重力は存在するのか』でめぐる知的探求世界の旅
“なぜ物は落ちるのか?”――私たちが日常で当たり前に感じているこの現象の背後には、宇宙全体を支えているある力が隠されています。それが「重力」です。そもそも、なぜ重力は存在するのでしょうか。ニュートンのリンゴの逸話や、アインシュタインの相対性理論など、誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、これらが実際に何を意味し、どのように世界を説明しているのか、よくわからないという人も少なくないでしょう。
今回ご紹介する本『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(野村泰紀著、マガジンハウス新書)は、中高生でも読めるようにわかりやすく、物理学の面白さを教えてくれる一冊です。「重力」というミステリアスな物理現象を切り口に、ニュートン力学から最先端の研究まで解説されています。この本を読み進めていくと、物理学がどのように世界の「謎」を解き明かそうとしているのかが見えてくるはずです。
本書が生まれたきっかけは、野村氏がYouTubeチャンネル『ReHacQ-リハック-』で配信された動画に出演したことです。「ビジネスパーソンのための物理学入門」として全4回にわたり行われた授業の動画は、100万回以上再生され、大きな反響を呼びました。本書は、その動画の内容をもとに、追加取材と再編集を経て書籍化されたものです。動画のテンポの良さを生かし、さまざまな物理の「謎」に対する明快な解説が続く構成となっており、スムーズに読み進めることができます。
本書で扱われるのは、400年の歴史を持つ近現代物理学です。ニュートン力学から始まり相対性理論に至る「古典物理学」と、20世紀に急速に発展した量子論に代表される「現代物理学」が、全4章(+補講)にわたって説明されています。例えば、第2章ではアインシュタインの「相対性理論」が取り上げられていますが、そこで解き明かされる「謎」は次のようなものです。
・アインシュタインはいつ、どうやって「相対性理論」を確立したのか?
・原子と分子の動きを明らかにした「ブラウン運動」とは何か?
・「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の違いとは?
・そもそも「相対性」とはどういう意味か?
・アインシュタインが問い直した「時間」と「空間」の謎とは?
・「光速に近づけば長生きできる」は本当か?
・相対性理論は実社会でどう生かされているのか?
・世界一有名な方程式「E=mc^2」が意味することとは?
・特殊相対性理論がどうやって「原子爆弾」の開発につながったのか?
・「一般相対性理論」はどういう理論なのか?
・アインシュタインが解明した「重力の仕組み」とは?
このように、その章で解き明かされる「謎」が冒頭で示されており、それを追って読み進めることで、読者が迷子にならないよう工夫されています。
ニュートンといえば「万有引力の法則」ですが、第2章では「リンゴは木から落ちるのに、月が落ちてこないのはなぜ?」という疑問が取り上げられています。その内容を簡単にご紹介しましょう。
次のようなイメージで考えるとわかりやすいでしょう。まず、ボールを斜め上方向に投げると、ボールは放物線を描いて地面に落ちます。これは、ボールが空中を直進しながら、重力によって地面に引っ張られているためです。ボールが投げられる速度が遅いと、重力の影響がまさり、すぐに地面に落ちます。
一方、月は地球の周りを円軌道で回っています。この軌道は、月が地球に向かって常に「落ち続けている」結果なのです。これは、月が非常に速い速度で地球の周りを進んでいるため、地球に向かって落ちようとする力(地球の万有引力)と、直進しようとする力(慣性)がバランスを取っている状態です。このバランスのおかげで、月は地球に衝突せず、一定の距離を保ちながら地球の周りを回り続けています。
このバランスは、ボールを非常に速く投げたときの例で考えることができます。もしボールを秒速7.9キロメートルで投げることができれば(これを第1宇宙速度といいます)、ボールは地球のカーブに沿って落ち続けながら、地面に衝突せずに地球の周りを回り続けることになります。
さらに速く秒速11.2キロメートルで投げると(第2宇宙速度)、ボールは地球の重力を振り切って宇宙空間に飛び出します。これが、ロケットが地球の引力を脱出するために必要な速度です。そして、もっと速く秒速16.7キロメートルで投げることができれば(第3宇宙速度)、ボールは太陽系の引力圏からも脱出してしまいます。
要するに、月は地球の重力に引っ張られて「落ち続けて」いますが、同時に非常に速い速度で進んでいるため、地球に衝突せずにそのまま周回し続けているのです。このように、月が地上に落ちない理由は、遠心力と地球からの万有引力がちょうど釣り合っているからなのです。
その中で誕生したのが「量子力学」です。量子力学は、物質の基本的な単位である「量子」の振る舞いを解明するための新しい理論で、古典物理学の枠を超えたまったく新しい世界像を示しました。量子力学は、粒子が波の性質を持つことや、エネルギーや物質が不確定な状態にあることを明らかにし、従来の物理学の常識を大きく覆しました。
同じ時期に、アルベルト・アインシュタインが「相対性理論」を発表しています。相対性理論は、時間と空間が絶対的なものではなく、観測者の状態によって相対的に変わるという考え方に基づいています。さらに、重力も空間の歪みによって説明されるべき現象であることを示しました。これにより、ニュートンが定義した重力の概念は一新され、相対性理論は宇宙の構造を理解するための重要な理論となりました。
現在の物理学は、相対性理論と量子力学を統合する新たな理論の構築を目指しています。その有力な候補とされているのが「超弦理論(超ひも理論)」です。この理論は、すべての粒子を振動する「ひも」として捉え、宇宙のもっとも基本的な構造を説明しようとするものです。超ひも理論はいまだ完成には至っていませんが、自然界のすべての現象を統一的に説明する究極の理論として期待されています。
本書は、近現代物理学の400年にわたる歴史を通じて、物理学が何を追求してきたのかをわかりやすく解説しています。サブタイトル「世界の『解像度』を上げる物理学超入門」のとおり、この本は世界の見え方を大きく変えてくれる、そんな可能性を秘めているのです。本書を読んで、知的探求世界の旅に出てみてはいかがでしょう。
今回ご紹介する本『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(野村泰紀著、マガジンハウス新書)は、中高生でも読めるようにわかりやすく、物理学の面白さを教えてくれる一冊です。「重力」というミステリアスな物理現象を切り口に、ニュートン力学から最先端の研究まで解説されています。この本を読み進めていくと、物理学がどのように世界の「謎」を解き明かそうとしているのかが見えてくるはずです。
YouTube発、天才物理学者による物理学入門講義
著者の野村泰紀氏は、カリフォルニア大学バークレー校の物理学教授であり、バークレー理論物理学センターの所長を務めています。主な研究領域は素粒子物理学や量子重力理論で、近年はブラックホールの情報問題に焦点を当てた研究などで注目されています。その卓越した業績により、アメリカ物理学会のフェローに選出されるなど、目覚ましい活躍を続ける研究者です。本書が生まれたきっかけは、野村氏がYouTubeチャンネル『ReHacQ-リハック-』で配信された動画に出演したことです。「ビジネスパーソンのための物理学入門」として全4回にわたり行われた授業の動画は、100万回以上再生され、大きな反響を呼びました。本書は、その動画の内容をもとに、追加取材と再編集を経て書籍化されたものです。動画のテンポの良さを生かし、さまざまな物理の「謎」に対する明快な解説が続く構成となっており、スムーズに読み進めることができます。
本書で扱われるのは、400年の歴史を持つ近現代物理学です。ニュートン力学から始まり相対性理論に至る「古典物理学」と、20世紀に急速に発展した量子論に代表される「現代物理学」が、全4章(+補講)にわたって説明されています。例えば、第2章ではアインシュタインの「相対性理論」が取り上げられていますが、そこで解き明かされる「謎」は次のようなものです。
・アインシュタインはいつ、どうやって「相対性理論」を確立したのか?
・原子と分子の動きを明らかにした「ブラウン運動」とは何か?
・「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の違いとは?
・そもそも「相対性」とはどういう意味か?
・アインシュタインが問い直した「時間」と「空間」の謎とは?
・「光速に近づけば長生きできる」は本当か?
・相対性理論は実社会でどう生かされているのか?
・世界一有名な方程式「E=mc^2」が意味することとは?
・特殊相対性理論がどうやって「原子爆弾」の開発につながったのか?
・「一般相対性理論」はどういう理論なのか?
・アインシュタインが解明した「重力の仕組み」とは?
このように、その章で解き明かされる「謎」が冒頭で示されており、それを追って読み進めることで、読者が迷子にならないよう工夫されています。
リンゴは木から落ちるのに、月が落ちてこないのはなぜ?
第1章では、ガリレオ、ニュートン、ライプニッツ、ケプラーといった物理学の巨人たちに焦点が当てられています。中でも重要なのはニュートンです。ニュートンは、ガリレオやケプラーなど先人たちの研究成果をもとに、それらを統合し発展させることで、ニュートン力学という近代物理学の基盤を築き上げました。彼の業績は、まさに「近代物理学の父」と呼ばれるのにふさわしいものです。ニュートンといえば「万有引力の法則」ですが、第2章では「リンゴは木から落ちるのに、月が落ちてこないのはなぜ?」という疑問が取り上げられています。その内容を簡単にご紹介しましょう。
次のようなイメージで考えるとわかりやすいでしょう。まず、ボールを斜め上方向に投げると、ボールは放物線を描いて地面に落ちます。これは、ボールが空中を直進しながら、重力によって地面に引っ張られているためです。ボールが投げられる速度が遅いと、重力の影響がまさり、すぐに地面に落ちます。
一方、月は地球の周りを円軌道で回っています。この軌道は、月が地球に向かって常に「落ち続けている」結果なのです。これは、月が非常に速い速度で地球の周りを進んでいるため、地球に向かって落ちようとする力(地球の万有引力)と、直進しようとする力(慣性)がバランスを取っている状態です。このバランスのおかげで、月は地球に衝突せず、一定の距離を保ちながら地球の周りを回り続けています。
このバランスは、ボールを非常に速く投げたときの例で考えることができます。もしボールを秒速7.9キロメートルで投げることができれば(これを第1宇宙速度といいます)、ボールは地球のカーブに沿って落ち続けながら、地面に衝突せずに地球の周りを回り続けることになります。
さらに速く秒速11.2キロメートルで投げると(第2宇宙速度)、ボールは地球の重力を振り切って宇宙空間に飛び出します。これが、ロケットが地球の引力を脱出するために必要な速度です。そして、もっと速く秒速16.7キロメートルで投げることができれば(第3宇宙速度)、ボールは太陽系の引力圏からも脱出してしまいます。
要するに、月は地球の重力に引っ張られて「落ち続けて」いますが、同時に非常に速い速度で進んでいるため、地球に衝突せずにそのまま周回し続けているのです。このように、月が地上に落ちない理由は、遠心力と地球からの万有引力がちょうど釣り合っているからなのです。
古典物理学から現代物理学へ――すべての現象を説明する統一理論の探求
18世紀にニュートン力学が誕生し、物理学は完成したかに思われていました。しかし、20世紀に入ると、理論と実験結果が一致しない現象が次々と発見され、物理学は新たな局面を迎えます。その中で誕生したのが「量子力学」です。量子力学は、物質の基本的な単位である「量子」の振る舞いを解明するための新しい理論で、古典物理学の枠を超えたまったく新しい世界像を示しました。量子力学は、粒子が波の性質を持つことや、エネルギーや物質が不確定な状態にあることを明らかにし、従来の物理学の常識を大きく覆しました。
同じ時期に、アルベルト・アインシュタインが「相対性理論」を発表しています。相対性理論は、時間と空間が絶対的なものではなく、観測者の状態によって相対的に変わるという考え方に基づいています。さらに、重力も空間の歪みによって説明されるべき現象であることを示しました。これにより、ニュートンが定義した重力の概念は一新され、相対性理論は宇宙の構造を理解するための重要な理論となりました。
現在の物理学は、相対性理論と量子力学を統合する新たな理論の構築を目指しています。その有力な候補とされているのが「超弦理論(超ひも理論)」です。この理論は、すべての粒子を振動する「ひも」として捉え、宇宙のもっとも基本的な構造を説明しようとするものです。超ひも理論はいまだ完成には至っていませんが、自然界のすべての現象を統一的に説明する究極の理論として期待されています。
本書は、近現代物理学の400年にわたる歴史を通じて、物理学が何を追求してきたのかをわかりやすく解説しています。サブタイトル「世界の『解像度』を上げる物理学超入門」のとおり、この本は世界の見え方を大きく変えてくれる、そんな可能性を秘めているのです。本書を読んで、知的探求世界の旅に出てみてはいかがでしょう。
<参考文献>
『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(野村泰紀著、マガジンハウス新書)
https://magazineworld.jp/books/paper/7525/
<参考サイト>
野村泰紀氏のX(旧Twitter)
https://x.com/YasuNomu1
『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(野村泰紀著、マガジンハウス新書)
https://magazineworld.jp/books/paper/7525/
<参考サイト>
野村泰紀氏のX(旧Twitter)
https://x.com/YasuNomu1
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