テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.11.04

ストレスや逆境を乗り越える力「レジリエンス」を鍛える4つの方法

 ちょっとした上司の叱責などから、引きこもってしまったり、いきなり会社を辞めてしまう社員の話をよく聞く。

 「心が折れる」そんな経験は少なからず誰もが持っているのでは。問題は心が折れたままになってしまう人が増加傾向あることだ。

 会社での理不尽なパワハラやいじめ、試験に失敗するなど、個人にとっての逆境は、想像以上に心身を蝕むものである。端から見ると深刻ではなくても、当事者にとってはいたたまれない事態となる。そんな状況を客観的に語ることができるのであればあまり心配することではないが、一度、心が折れてしまうとそこからの再起はなかなか難しくなる。

 こうした状況を背景に近年、ストレスや逆境への耐性、乗り越えるためのスキルこそ、人生をサバイバルする上でもっとも重要な能力として注目されはじめた。「レジリエンス」と呼ばれる逆境から立ち直る力のことである。

 レジリエンスが注目され始めたのは1970年代。第2次世界大戦でホロコーストを経験した孤児たちの研究がキッカケとなった。孤児たちの追跡調査において、戦禍によるトラウマから抜け出せず、生きる気力を持てない人たちがいる一方で、トラウマを乗り越え、幸せな人生を勝ち得た人の存在が確認されたのだ。その違いはどのように発生したのか?この研究で、逆境を乗り越えた人たちの共通の傾向が明らかとなった。

 「レジリエンスには、思考の柔軟性が必要な事が分かってきました。つまり、厳しい状況でもネガティブな面だけではなくポジティブな面を見いだす事ができる人が、逆境を乗り越える事ができる」と、心理学者であるイローナ・ボニウェル博士は語る。

 ポジティブ思考といってしまえば身も蓋もなくなるので、現段階の研究から、折れない心のためにレジリエンスを鍛えるポイントを整理すると、

・状況に一喜一憂しない感情コントロール力
・自分の力を過小評価しない自尊感情力
・自分が成長前進していると感じる事ができる自己効力感
・失敗の中でもいつか成功すると考える楽観力

 この4つが上げられる。

 このポイントを強化するのが、運動と食事にある。感情をコントロールするためには、食事を小量ずつ3時間置きにする事で、脳の活動に必要なブドウ糖を一定のレベルに保つことが求められる。加えて、全力でのランニングを何度も繰り返すインターバルトレーニングもレジリエンスをUPする効果が認められている。体力の限界を乗り越える経験を通じて、自己効力感が養われるのだ。

 レジリエンスについては、おそらく一般的に心が強いと言われている人ほど注意したほうがよい。ガラスと木材では壊れかたが違うように、心をどのような状態にしておくかが運命の分かれ道となる。心の折れにくさとは、ストレスに対抗するというよりは、しなやかに逆境をやり過ごす、そんな心の状態を整えるべきとレジリエンスの最新研究は告げている。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療

消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
糸井隆夫
東京医科大学病院 消化器内科 主任教授
2

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

今どきの若者たちのからだ、心、社会(2)思春期の成長、青春の脳

思春期にからだが急激に成長することを「思春期のスパート」と呼ぶ。先行して大きくなった脳にからだを追いつかせるための戦略である。脳はそれ以上大きくならないが、脳内の配線が変化する。そうした青春期の脳の実態を知るた...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/12
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
3

イエスも法華経のアバター?「全世界救済」の具体像を示す

イエスも法華経のアバター?「全世界救済」の具体像を示す

おもしろき『法華経』の世界(7)真の救済に向かう

『法華経』の原題は「サッダルマ・プンダリーカ・スートラ」といい「白蓮の正しい教え」を表す。想像を超えた長い年月、無数のアバターを通して『法華経』が目指すのは真の救済である。それゆえキリスト教のイエスも「久遠実成...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/07/13
鎌田東二
京都大学名誉教授
4

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査

日本の財政をくまなく検査し、その収入と支出を把握する会計検査院。日本のメディア報道などでは、予算の決定や補助金などの政策決定については詳しく報じられるが、それがどのように実際に使われたかは、ほとんど言及がない。...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/11
田中弥生
東京大学客員教授
5

信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み

信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み

日本経済が低迷する原因は何か。大きなポイントとして「お金が回っておらず、死蔵されてしまっていること」が挙げられる。そもそも、お金が市中にどのように流通し、どのような役割を果たしていくのかを理解しなければ、経済を...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/02/22
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員