社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
幸せのU字曲線…40~50代におとずれる「中年の危機」を乗り越えるには?
「中年の危機」という言葉をご存じだろうか。主に40代~50代にやって来る精神的な危機のことで、「本当にこのままでよいのだろうか」「悔いのない人生を送れるのだろうか」と悩んだ結果、何らかの依存性になったり、最悪の場合ドラッグや自殺に走るケースが少なくないのだ。中年の危機とはいったいどういうことなのだろうか。どうすれば克服できるのか。
特に生活満足度と年齢の関係を示すグラフは「U字曲線」を描くことがわかっている。若者と老人は比較的高く、中年で最も下がるのだ。とても面白い最新の研究結果によれば、幸福はゴリラ、チンパンジー、オランウータンなどの大型類人猿でも同様のU字曲線になっているという。
なお、すべての幸福度がU字になるわけではない。生活満足度は40~50代で一気に落ちるが、日々の快楽に対する評価は年齢によってそれほど変わらないことがわかっているし、ドイツ人の調査では、やりがいは中年が最も高くなる「逆U字曲線」を描く。
全体的に見れば、「中年の危機」は確かにあるのだが、国民性、個別性を考慮して、一つひとつを細かくみていくと、幸福度はかなり複雑だ。当然、かなり幸福な中年も存在している。
誤った願望とは、自分が幸せになれるものとは違う目標を持つことだ。たとえば、本当は家族とゆっくりする時間が一番幸せにもかかわらず、金持ちを目指している人は、なかなか家族との時間をつくれず、いつまでも幸せになれないだろう。
誤った予測とは、たとえば「東京に行けば幸せになれる」「天気が良いところに住めば幸せになれる」といったもので、私たちはこうした予測がうまくできない。
誤った思い込みとは、自分は優秀だ、料理が上手だ、などと過度に自信をもち、過度に期待し、上手に自分を受け入れられないことである。
これらから解放されるだけで、人生はかなり変わってくる。そのために重要なのは、自らが幸せだと思うことに集中することだ。誤った願望、誤った予測、誤った思い込みに注意を向けず、ただ幸せに注意を向けるのである。
中年は、生活満足度が低い
イギリスの国家統計局は、毎年20万人ほどの幸福度を調査している。「生活満足度」「やりがい」「昨日の幸福度」「昨日の不安度」を聞いているのだが、45~49歳が、生活満足度・やりがい・昨日の幸福度が最も低く、50~54歳はどの年齢層よりも昨日の不安度が高い。統計的にも、中年の危機が確認されているというわけだ。特に生活満足度と年齢の関係を示すグラフは「U字曲線」を描くことがわかっている。若者と老人は比較的高く、中年で最も下がるのだ。とても面白い最新の研究結果によれば、幸福はゴリラ、チンパンジー、オランウータンなどの大型類人猿でも同様のU字曲線になっているという。
「幸福のU字曲線」は期待と関係か
幸福度がU字曲線になる理由として、「期待」と関係しているという仮説がある。若者は、年を取ればもっとよい生活ができるだろうと考えるが、実際に中年になってみると期待以下ということが多く、逆に中年時に思い描くほど、老年の生活は悪くないのではないかと想定できる。ゴリラやチンパンジーも、その点で私たちと同じなのかもしれない。なお、すべての幸福度がU字になるわけではない。生活満足度は40~50代で一気に落ちるが、日々の快楽に対する評価は年齢によってそれほど変わらないことがわかっているし、ドイツ人の調査では、やりがいは中年が最も高くなる「逆U字曲線」を描く。
全体的に見れば、「中年の危機」は確かにあるのだが、国民性、個別性を考慮して、一つひとつを細かくみていくと、幸福度はかなり複雑だ。当然、かなり幸福な中年も存在している。
誤った願望/予測/思い込みが問題だ
では、中年の危機はどのように脱すればよいのか。中年に限らず、幸福になるための方法として、ポール・ドーラン氏が『幸せな選択、不幸な選択―行動科学で最高の人生をデザインする』でお勧めしているのは、まず「誤った願望」「誤った予測」「誤った思い込み」から解放されることだ。誤った願望とは、自分が幸せになれるものとは違う目標を持つことだ。たとえば、本当は家族とゆっくりする時間が一番幸せにもかかわらず、金持ちを目指している人は、なかなか家族との時間をつくれず、いつまでも幸せになれないだろう。
誤った予測とは、たとえば「東京に行けば幸せになれる」「天気が良いところに住めば幸せになれる」といったもので、私たちはこうした予測がうまくできない。
誤った思い込みとは、自分は優秀だ、料理が上手だ、などと過度に自信をもち、過度に期待し、上手に自分を受け入れられないことである。
これらから解放されるだけで、人生はかなり変わってくる。そのために重要なのは、自らが幸せだと思うことに集中することだ。誤った願望、誤った予測、誤った思い込みに注意を向けず、ただ幸せに注意を向けるのである。
<参考文献>
・『幸せな選択、不幸な選択―行動科学で最高の人生をデザインする』(ポール・ドーラン/早川書房)
・『幸せな選択、不幸な選択―行動科学で最高の人生をデザインする』(ポール・ドーラン/早川書房)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
実際に史料をどうやって読み解いていけばいいのか。今回から具体的な史料の読み解き方をケース・スタディしていく。最初は『太閤記』に関する参考資料を用いて、太閤・豊臣秀吉と関白・秀次の関係を考える。そもそも『太閤記』...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/22
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
労働経済を学んでいた島田氏は、ウィスコンシン大学留学中、労働者の教化運動に参加している。アメリカ産業史を学習する中、労働運動の実態を触れ、ウォルター・ルーサーとヘンリー・フォードの熾烈な闘いを知ったからだ。労働...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/18


