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社会・経済の出来事を追体験できる!おすすめのビジネス小説
「事実は小説よりも奇なり」。ことわざにもあるように、現実で起きることは、時に小説よりも奇妙で面白いことがある。では事実に基づいて小説を書いたら面白いのでは?その通り。中でも実際に起きたことをなぞって書かれたビジネス小説は、小説だからこそ書ける内容が盛りだくさんで読み応えのある作品が多いのだ。
社会派小説を数多く残した山崎豊子著「沈まぬ太陽」は、日本航空と同社の労働組合を中心とした作品。あくまでフィクションのため舞台となる航空会社は「国民航空」という名称だが、日本航空がモデルとなっていることは明白。「御巣鷹山編」では単独機の航空事故で世界最多となる死者を出した日本航空123便墜落事故をモデルとした事故が描かれている。
「半沢直樹」シリーズで知られる池井戸潤の作品「空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」はそれぞれ三菱自動車のトラック脱輪事故やリコール隠し、大手ゼネコンの談合事件がモデル。著者が三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)で勤務した経験から、銀行と企業の生々しい“戦い”もストーリーに深く関わってくる。
一風変わった作品はホリエモンこと元ライブドア社長の堀江貴文著「拝金」。彼の自伝的小説とも言える作品で、ITバブルが華やかな時代、そしてライブドア絶頂期にホリエモンがどう考え、テレビに映らない場所では何をしていたのか、小説という形で“暴露”している。ストーリーとは直接関係がない部分ではあるが、当時のIT長者たちのえげつない豪遊っぷりは一読の価値がある。
最近の作品では、今年9月に発売された幸田泉著「小説新聞社販売局」の描写も生々しい。ストーリーは「半沢直樹」シリーズを思わせるような逆襲、困難克服的なものだが、特徴はタイトル通り新聞社の販売局を舞台としていること。記者とは違い脚光を浴びることが少ない販売局(販売部数増を図るため、新聞販売店の管理などを行う部門)の暗部を“告発”している。著者本人が新聞社で記者、販売局員を担当した経験があるため、リアルな表現が出来るのだろう。
ノンフィクションの場合、著者が取材した内容を取捨選択することはあっても、事実をねじ曲げて書くことは許されない。だが小説はフィクションなので、事実を「盛る」こともできるし、架空の話を織り交ぜることもできる。逆にほぼノンフィクションと言えるほど徹底的に現実路線で書くこともできる。
告発、暴露系のノンフィクションは名誉棄損を始めとした訴訟リスクがあるが、実は小説なら何を書いても大丈夫というわけではない。高杉良が2004年に上梓した「乱気流-小説・巨大経済新聞」は日本経済新聞の子会社の不正経理を描いた作品だったが、当時の鶴田卓彦社長は単行本出版などの差止めと損害賠償、謝罪広告掲載を求めて提訴。東京地裁は一部の名誉棄損を認め、470万円の支払いを命じた、というケースもある。
エンタメ作品として楽しみつつ、社会・経済の出来事を追体験することもできるジャンル、ビジネス小説。日々忙しく過ごしている社会人にぜひ一読をおすすめしたい。
社会派小説を数多く残した山崎豊子著「沈まぬ太陽」は、日本航空と同社の労働組合を中心とした作品。あくまでフィクションのため舞台となる航空会社は「国民航空」という名称だが、日本航空がモデルとなっていることは明白。「御巣鷹山編」では単独機の航空事故で世界最多となる死者を出した日本航空123便墜落事故をモデルとした事故が描かれている。
「半沢直樹」シリーズで知られる池井戸潤の作品「空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」はそれぞれ三菱自動車のトラック脱輪事故やリコール隠し、大手ゼネコンの談合事件がモデル。著者が三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)で勤務した経験から、銀行と企業の生々しい“戦い”もストーリーに深く関わってくる。
一風変わった作品はホリエモンこと元ライブドア社長の堀江貴文著「拝金」。彼の自伝的小説とも言える作品で、ITバブルが華やかな時代、そしてライブドア絶頂期にホリエモンがどう考え、テレビに映らない場所では何をしていたのか、小説という形で“暴露”している。ストーリーとは直接関係がない部分ではあるが、当時のIT長者たちのえげつない豪遊っぷりは一読の価値がある。
最近の作品では、今年9月に発売された幸田泉著「小説新聞社販売局」の描写も生々しい。ストーリーは「半沢直樹」シリーズを思わせるような逆襲、困難克服的なものだが、特徴はタイトル通り新聞社の販売局を舞台としていること。記者とは違い脚光を浴びることが少ない販売局(販売部数増を図るため、新聞販売店の管理などを行う部門)の暗部を“告発”している。著者本人が新聞社で記者、販売局員を担当した経験があるため、リアルな表現が出来るのだろう。
ノンフィクションの場合、著者が取材した内容を取捨選択することはあっても、事実をねじ曲げて書くことは許されない。だが小説はフィクションなので、事実を「盛る」こともできるし、架空の話を織り交ぜることもできる。逆にほぼノンフィクションと言えるほど徹底的に現実路線で書くこともできる。
告発、暴露系のノンフィクションは名誉棄損を始めとした訴訟リスクがあるが、実は小説なら何を書いても大丈夫というわけではない。高杉良が2004年に上梓した「乱気流-小説・巨大経済新聞」は日本経済新聞の子会社の不正経理を描いた作品だったが、当時の鶴田卓彦社長は単行本出版などの差止めと損害賠償、謝罪広告掲載を求めて提訴。東京地裁は一部の名誉棄損を認め、470万円の支払いを命じた、というケースもある。
エンタメ作品として楽しみつつ、社会・経済の出来事を追体験することもできるジャンル、ビジネス小説。日々忙しく過ごしている社会人にぜひ一読をおすすめしたい。
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