社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
今の若者に求められる能力「コンピテンシー」とは?
「最近の若者はモチベーションに欠ける」と思うことはないだろうか。もしそう思う瞬間があったとすれば、もう少し広く状況を見た方がいい。端的に言えば、そこに欠けているのは、「モチベーション」ではなく、「自律的に考える能力」かもしれない。
ここでの個人は、多方面に渡って状況を把握し、コントロールし、問題を解決したり、新しい形を提案したりすることのできる能力が必要になる。この職務遂行能力を「コンピテンシー」という。また、利益を上げる対象が「モノ」から「サービス」に変化していくところで、企業の形態も、トップダウン式(もしくはピラミッド式)から、個人の判断で動く自律的な組織(=「コンピテンシー」を持った人間が活躍する組織)に変化している。
一つの事例として、星野リゾートを紹介しよう。
星野リゾートは、2015年にトマムのレジャー施設を中国企業に売却した。これに関して星野佳路代表は、「所有」する企業から「運営」する企業への脱却を掲げている。運営に特化することで所有にかかる費用を抑えることが狙いだ。これは売るものが「モノ」から「サービス」へ変化していく社会における一連の動きの一端と考えてもよい。この後、同社は着実に成長している。
ではどう運営しているのか。まず四半期ごとに「次の季節のこの宿泊施設の魅力は何か? どう感じてもらうか?」を全員で議論する「魅力会議」を行い、次に現場のホテルでは、毎日、過去の顧客情報を共有し、今回はどうやって喜んでもらうかを議論する「作戦会議」を行う。上司が訓辞を垂れるようなことはなく、皆が対等に意見を出し合う場だ。また、経営が行き詰った宿泊施設があった場合、「あなたたちはこの宿をどうしたいのか?」と、従業員たちに議論させるプロセスを必ず取る。
つまり、サービスをする人間たちを刺激し、相互に考え合う場を最も大切にしている。こうして従業員は自ら考え、行動し、実践する自律した人材へと成長していく。ここで上司や経営陣は、議論を促す存在に徹している。この点で、上役が方針を決めて現場がそれに従うという運営方式とは大きく異なっている。
もし、若い社員に「モチベーションが欠けている」と感じたら、今どういう問題に直面しているのか、真剣に問い、共に考えてみることから始めてもいいかもしれない。
「モノ」から「サービス」に変化する時代に求められる能力「コンピテンシー」
1990年代から、売る対象は「モノ」から「サービス」へ大きく変化してきた。モノを売る企業の営業は、売るためのモチベーションとスキルで乗り切ることができたかもしれない。しかし、ソリューションやコンサルティング事業などの個別的で多様性に応じる営業の場合、モチベーションやスキルだけでは売り上げを出すことはできないだろう。ここでの個人は、多方面に渡って状況を把握し、コントロールし、問題を解決したり、新しい形を提案したりすることのできる能力が必要になる。この職務遂行能力を「コンピテンシー」という。また、利益を上げる対象が「モノ」から「サービス」に変化していくところで、企業の形態も、トップダウン式(もしくはピラミッド式)から、個人の判断で動く自律的な組織(=「コンピテンシー」を持った人間が活躍する組織)に変化している。
一つの事例として、星野リゾートを紹介しよう。
星野リゾートは、2015年にトマムのレジャー施設を中国企業に売却した。これに関して星野佳路代表は、「所有」する企業から「運営」する企業への脱却を掲げている。運営に特化することで所有にかかる費用を抑えることが狙いだ。これは売るものが「モノ」から「サービス」へ変化していく社会における一連の動きの一端と考えてもよい。この後、同社は着実に成長している。
ではどう運営しているのか。まず四半期ごとに「次の季節のこの宿泊施設の魅力は何か? どう感じてもらうか?」を全員で議論する「魅力会議」を行い、次に現場のホテルでは、毎日、過去の顧客情報を共有し、今回はどうやって喜んでもらうかを議論する「作戦会議」を行う。上司が訓辞を垂れるようなことはなく、皆が対等に意見を出し合う場だ。また、経営が行き詰った宿泊施設があった場合、「あなたたちはこの宿をどうしたいのか?」と、従業員たちに議論させるプロセスを必ず取る。
つまり、サービスをする人間たちを刺激し、相互に考え合う場を最も大切にしている。こうして従業員は自ら考え、行動し、実践する自律した人材へと成長していく。ここで上司や経営陣は、議論を促す存在に徹している。この点で、上役が方針を決めて現場がそれに従うという運営方式とは大きく異なっている。
人材育成は「モチベーションマネジメント」から「コンピテンシー」の獲得へ
現場でぶつかり考えたことを共有し、同僚も上司も並列になって共に問い、思考する。ここはあくまで提案し合う場であり、同時に、この会社が何に、どのように対応していくのかという方向性やビジョンを共有する場ともなる。確かに時間はかかるだろう。しかし、長い目で見てこれは、自律した組織で自律して動く「コンピテンシー」を備えた社員を育てる1つの方法とは言えないだろうか。もし、若い社員に「モチベーションが欠けている」と感じたら、今どういう問題に直面しているのか、真剣に問い、共に考えてみることから始めてもいいかもしれない。
<参考サイト>
・『ホワイト企業』(高橋俊介/PHP新書)
・『ホワイト企業』(高橋俊介/PHP新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
日本の財政をくまなく検査し、その収入と支出を把握する会計検査院。日本のメディア報道などでは、予算の決定や補助金などの政策決定については詳しく報じられるが、それがどのように実際に使われたかは、ほとんど言及がない。...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/11
なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る
今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期
なぜ思春期に注目するのか。この十年来、10歳だった子どもたちのその後を10年追跡する「コホート研究」を行っている長谷川氏。離乳後の子どもが性成熟しておとなになるための準備期間にあたるこの時期が、ヒトという生物のライ...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/05
AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!
編集部ラジオ2025(14)なぜAI時代に文芸評論が甦るのか
どんどんと進む社会のAI化。この大激流のなかで、人間の仕事や暮らしの姿もどんどん変わっていっています。では、AI時代に「人間がやるべきこと」とはいったい、何なのでしょうか? さらにAIが、驚くほど便利に何でも教えてく...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/07/10
日本の所得は世界よりこんなに低い!その中身の特徴は?
日本人の「所得の謎」徹底分析(1)所得の国際比較とその中身
いま、税や社会保障など「分配」の議論が盛んに行われている。しかし、そのような議論の前提として、われわれは現在の日本の「所得」の中身がどうなっているのか、世界と比較してどうなのかを、詳しく知っておく必要があるので...
収録日:2025/05/29
追加日:2025/06/12
マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性
作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性
印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/10