社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.09.12

キレイ好きと潔癖症は別!深刻な場合は病気かも…

 近頃、よく耳にする「潔癖」というキーワード。TVに出演している芸能人の人たちが潔癖エピソードを語ることも多く、身近な話題かと思います。

 メディアでよく見かける例を挙げると、「大勢で囲んだ料理をじか箸でつつけない」「電車のつり革がつかめない」「1日に何回も手を洗う」「人が飲んだコップやペットボトルの飲みものに直接口をつけられない」「外食でも食事の前には除菌ウエットティッシュで手をアルコール消毒」「病院や旅館で他人が履いたスリッパを履けない」「外のトイレのドアノブを触れない」「人の家のお風呂や温泉に入れない」などがあります。中には「家族が触ったドアノブも触れない」「家でしかトイレをしない」なんていう日常生活に支障をきたしそうなケースも。

 これらの例に「私にも少なからずそういう部分はある」と共感する人が少なくないからこそ、これだけ話題になっているのではないでしょうか。それを裏付けるかのように除菌に関する商品をいたるところで目にします。

ウエットティッシュからフィルム石けんまで、除菌グッズに注目

 除菌ウエットティッシュは、いわゆる「潔癖」な人のナンバー1マストアイテムといえるのではないでしょうか。各社から発売されており、今や100円ショップでもコンビニでもどこでも手に入りやすいもののひとつです。

 自宅用として“ボタンを押すだけで消毒剤が噴射し、普通のティッシュがウエットティッシュに早変わり”というティッシュボックス「ルテラ」(アーネスト)も人気。また、アルコール手指消毒剤の「手ピカジェル」(健栄製薬)は携帯用から、使い切りタイプ、女性がポーチに入れて持ち運びしやすいコスメっぽいデザインのものまで、シチュエーションにあわせたラインナップが充実しています。このほか、無印良品から出ている「フィルム石けん」などの携帯用ハンドソープも注目グッズです。

 このように除菌をキーワードにした商品の市場はまだまだ拡大していく勢いです。

潔癖症とは?

 ではあらためて潔癖症とはどういうものなのでしょう?

 一般に、キレイ好きという性格の特徴があります。これは目に見える汚れや気になる匂いを取り去るために、手を洗ったり掃除をすることで自身が満足できるものだそうです。つまり“性格”といえる範疇のもの。

 しかし極度な潔癖症、強迫性障害(OCD)の不潔恐怖症を持つ人は、目に見えない汚れや頭の中にある不潔への恐怖を取り去るために手を洗うなどの行動をとるため、自身でコントロールするのが難しいようです。これは頭の中の強迫観念を拭い去らない限りは、行動を収めらない状態のため、一般的には“心の病気”と捉えられることが多いそうです。

 症状がひどい場合は、人とのコミュニケーションにも支障をきたすことも。たとえば、あなたが職場で同僚にペンを貸したとします。返してもらったペンを除菌クリーナーなどで消毒している姿を相手が目にしたら、どう思うでしょう。潔癖症の人に悪気はないにもかかわらず、「バイ菌扱いされた」と相手が不快な思いをしてしまうかもしれません。

 またその逆もあります。気心知れたメンバーなら問題ないかもしれませんが、「じか箸はイヤだ」と言えないような食事の席は、潔癖症の人自身にはつらいはず。周りに気を遣わせないように一番先に食事を取り分けるなど、人知れず努力をしている場合もあり、そうできない場合にかかるストレスは、時と場合によっては深刻なものになり得ます。

深刻な場合は専門家や医師へ相談を

 このように、コミュニケーションに支障をきたすほどの症状がある人は、それが大きな悩みであり、できれば改善したいと考えているはずです。しかし、強迫性障害の場合は、個人での努力では克服できないことも多いため、ひとりで抱えずに医師や専門家に相談することをおすすめします。

 いずれにしても、潔癖性の人がどんなに苦しみを抱えているか、周囲からはよくわからないかもしれません。それゆえ、周囲の人が理解をし、気遣ってあげることで、お互いにとってよりよい状況になっていくといいですね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
3

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方

眠る環境は各家庭の状況や個人の好みによって大きく異なるが、一般的に「良い睡眠」のために望ましい環境はどのようなものだろうか。布団や枕などの寝具、エアコンなどの室温コントロールを含めた寝室の環境、また寝つきの良く...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/07
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
4

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化

浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
5

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授