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DATE/ 2016.11.15

いくつ知ってる?平成生まれは知らない「死語」

 いつの時代にも世の中、世相、流行、ムードから「時代性を表す言葉」が生まれてきました。それは、流行語といってもいいでしょう。そして、世の中が移りゆくにつて、それらの言葉は忘れ去られ、死語となっていきます。

 いわゆる死語とは、かつてその言葉を使っていた人にとっては「そんな時代があったなぁ」と過去を懐かしむことができるものであり、その言葉が使われた以降に物心がついた人にとってはユニークな言葉であるとともに、「温故知新」的に楽しめるものでもあります。

 今回は、主にバブルを謳歌した40代から50代の方にとって、親しみのある?死語をカテゴリー別に紹介していきましょう。

世相・風俗・流行を伝える死語

・マブだち
 1980年代初頭の「ツッパリブーム」から生まれた言葉が「マブだち」。「マブ」は「真の」、「だち」は「友達」なので「親友」という意味です。その派生的な使い方として、美人が「ハクい」と呼ばれたりもしました。

・ネアカ、ネクラ
 「経済大国ニッポン」の幕開けにあたる1980年代初頭、世の中は明るいムードに包まれていました。そこで登場した言葉が「ネアカ(根が明るい人)」。明るくてライト、ひょうきんな振る舞いこそがよしとされたのです。一方、「ネアカ」に乗り切れない考え込むタイプは「ネクラ(根が暗い人)」と呼ばれてしまいました。

・新人類
 「新人類」は「ネアカ」の時代に登場した若者たちのこと。豊かになり、ある程度の自由を手にした彼らの価値観を大人たちは理解できず、「新人類」と呼んだのです。明るく、やんちゃで、自信に満ちた「新人類」でしたが、プロ野球・ソフトバンクホークスの工藤公康監督も、西武の選手だった当時、その代表格でした。

・DCブランド、ハウスマヌカン
 ファッションシーンで1980年代中頃に大流行したのが「DCブランド(デザイナーズ&キャラクターズブランド)」。これは、デザイナーの個性が発揮されたブランドのことで、コムデギャルソンなどが大人気となりました。
 『ホットドッグ・プレス』『POPEYE』『Olive』などのファッション誌にはDCブランドの最新作の情報が踊り、若者がこぞってショップに訪れました。夏と冬のバーゲン時には、DCショップが集結する丸井(OIOI)などのファッションビルに人々が殺到する姿が社会現象となったほどです。
 DCショップの店員は「ハウスマヌカン」と呼ばれ、憧れの的に。しかし、華やかな世界の裏には「激務と薄給に涙する悲哀」があり、そのギャップは「夜霧のハウスマヌカン」という歌になったほどです。なお、この曲の作詞はいとうせいこう氏が手がけています。

・朝シャン
 家庭のお風呂にシャワーがあることが珍しくなくなった1980年代後半。家庭の朝の風景に変化が生まれました。「何よりもおしゃれが大事!」、そんな女子高生、女子大生が、朝食の時間を割いてでも、朝からシャンプーをして「洗いたて・ブローしたて」の髪をなびかせて出かけるようになったのです。この現象は「朝シャン」(朝のシャンプー)と呼ばれ、ハンドシャワーがついた洗面台も登場するほど浸透。今では朝からシャワーを浴びる習慣は当たり前のものとなりました。

・イタ飯、ワンレン、ボディコン、お立ち台、アッシー君
 1980年代中盤から1990年代初頭にかけてのバブル期。世の中は好景気に沸き、若者もその恩恵を受けていました。若者にとってバブリーな食事、デート、ディスコ、ドライブはマストな日常的なエンタメとしてもてはやされます。
 そんな風潮のなか、食事ではイタリア料理をカジュアルに味わうお店が「イタ飯」と呼ばれ一斉を風靡。また、ディスコでは、体にぴっちりと張り付いたセクシーな「ボディコン(ボディコンシャス)」で身を飾り、長髪&サラサラのヘアスタイル「ワンレン(ワンレングス)」を振りながら「お立ち台」で踊る女性たちがブイブイといわせたものです(ブイブイも死語ですね)。
 そして、ディスコや食事の帰り道、イケてる女性に、タクシー代わりに呼び出される「車を運転してやってくる都合のいい男友達」が「アッシー君」。当然、女性を家まで送り届けるだけの役目ですが……。

・チョベリバ、チョベリグ
 バブル崩壊後の混迷する1990年代後半、「新人類」以上に大人たちを理解不能に陥れる若者の集団が登場。それが、渋谷のセンター街を闊歩した「コギャル」です。彼女たちのギャル文化は全国に派生。社会的なブームを巻き起こしました。「チョベリバ」「チョベリグ」は「コギャル」が好んで使った言葉で、「チョベリバ」は超ベリーバッド=最低、「チョベリグ」は超ベリーグッド=最高を意味した言葉です。

ビジネスシーンでもてはやされた死語

・半ドン
 平成の世になり週休2日が当たり前となりましたが、かつては、土曜日は半日勤務が当たり前でした。この半日だけ働くことを「半ドン」と呼んだのです。「ドン」の由来には諸説あるようですが、有力なのはオランダ語と日本最大級のお祭り「博多どんたく」に由来するという説です。「どんたく」の語源にあたる「ドンタク」とは、「日曜日、休日」を意味するオランダ語。そこから「半分だけドンタク」、つまり「半日だけ休日」=「半ドン」と省略されたと考えられているそうです。

・花金
 「花金」とは「花の金曜日」のこと。1980年代後半から、週休2日制の働き方を導入する企業が増えたことで、サラリーマンもOLも金曜日の夜は街に繰り出しては、翌日の仕事を気にせずおおいに遊ぶようになったのです。

・バタンキュー
 たくさん働いて、家に帰った途端にバタンと倒れこむ様が「バタンキュー」。もちろん仕事の場以外でも使う言葉でしたが、やはり「モーレツサラリーマン」という流行語が生まれるほど、働きづくめだったお父さんたちにこそ、「バタンキュー」はふさわしいものでしょう。

・タク券
「タク券」とはタクシーチケットのこと。タクシーチケットがなくなったわけではありませんが、不景気な世の中になって「タク券」を自由に使える人は激減。「タク券」という言葉を耳にする機会もなくなり、今では、タクシーチケット自体、見たことがない若い方も多いのではないでしょうか。

まだまだあるユニークな死語

 紹介した以外にも、今は懐かしい言葉はいっぱいあります。ばっちりという意味の「バッチグー!」、言いづらいことを伏せる時に使う「チョメチョメ」、恋心の高まりを表す「胸キュン」、宮沢りえとアーノルド・シュワルツェネッガーが共演したアリナミンVのCMから生まれた「だいじょうV」、まったく眼中に入らないことを表す「アウト・オブ・眼中」、などなど。

 いかがでしょう。時には記憶をさかのぼって、当時流行った言葉に触れてみると、意外な発見ができて、とても楽しい気分になるかもしれません。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授