『貞観政要』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『貞観政要』で最も有名な「創業と守成いずれが難きや」
『貞観政要』を読む(5)難しいのは「創業」か「守成」か
経営ビジネス
田口佳史(東洋思想研究家)
老荘思想研究者・田口佳史氏による『貞観政要』の読解講座第5弾。『貞観政要』で有名なのは、創業と守成をめぐる議論だ。国や組織を創るのと維持するのとでは、どちらが難しいか。李世民の二人の側近は、なんと完全に相反する結論を出してきた。その時、李世民はどのように応じたか。優れたリーダーの資質が垣間見える瞬間だ。(全15話中第5話)
時間:12分37秒
収録日:2016年7月25日
追加日:2016年12月5日
≪全文≫

●第三は、創業と守成のどちらが困難か


 続けて第三章を読んでいきたいと思います。「貞觀十年、太宗、侍臣に謂いて曰く、帝王の業」、トップの仕事としては「草創と守文と孰(いず)れか難(かた)き」か。「貞観政要という本をご存じですか」と聞くと、多くの人は「知っていますよ。あの「創業」と「守成」のどちらが難しいかを言っているあの本ですね」と言います。その通り、ここは非常に有名になった箇所です。ですので、正しく読むのがいいと思います。

 「帝王の業、草創と守文と孰れか難き」と言います。草創と守文については、少し解説をしておかないといけないところがあります。物事の順番、国家建設の順番というものがあります。会社もいきなり「創業」をしてはいけません。創業の前に、実はやらなければいけない重大な仕事がある。これが、中国古典でずっと説かれている最大のポイントです。

 これを「撥乱反正(はつらんはんせい)」と言います。「はつ」は、「発」を「打つ」と書きます。三味線の撥(ばち)や太鼓の撥(ばち)です。撥(ばち)とは打つことです。「正す」、そして「反省」。つまり正しさに返ることです。「撥乱反正」というのは、「乱をまず打たなければいけない。それで正しさに返る」ということです。

 前のビルを壊して新しいビルを建てる場合を考えましょう。前のビルが少し残っていてもいいから、新しいビルを建ててしまおうということはしないと思います。全部片付けて整地にし、何にもなくして真っ平らな土地に戻してから建てますね。あれが「撥乱反正」です。まず乱を正さなければいけない、打たなければいけない。そうやって正しさに返ることが、まず基本です。

 今でも、M&Aなどで会社を買うことが非常に流行していますが、私が見ていても、失敗する例では、最初に「撥乱反正」をしていません。欠点を残したまま、組み入れてしまうことが非常に多く、その結果、本体にも影響が出てしまう。そういう取り入れ方は絶対に良くない。そのためにもぜひ「撥乱反正」という言葉を知っていただきたい。これが、まず一つです。


●「創業」と「守成」の本来の意味


 それから、次が「創業」です。創業とは、正しく言うと「創業垂統」と言います。「創業」とはどういうことか。「業を創る」ことですが、その時に忘れてほしくないのが「垂統」です。これは「伝統を垂れる」という...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
田口佳史
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子