『貞観政要』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「殷鑒遠からず」――『貞観政要』の有名な教え
『貞観政要』を読む(6)旧敵に学ぶ重要性
経営ビジネス
田口佳史(東洋思想研究家)
老荘思想研究者・田口佳史氏による『貞観政要』の読解講座第6弾。創業が終わり、継続の時期に入った国家においてリーダーはいかに行動すべきか。この問いを考えるにあたり、『貞観政要』は驚くべき言葉を連ねる。国家安泰を願わない君主はいない。しかしそう思うほど、目的とは反対のことをやってしまう。古典の知は、現代にも重く響く。(全15話中第6話)
時間:12分17秒
収録日:2016年8月1日
追加日:2016年12月19日
≪全文≫

●創業から継続に転換する際に気をつけるべきこと


 引き続き、『貞観政要』を読んでいきましょう。この書物は、リーダーの実質的な在り方について述べています。大義名分ばかりではなく、「こういう時はこうすべきだ」という実質的なことが書かれており、実際の判断や行動に非常に効いてくる文章です。

 今日読むのは、第四章です。「貞觀十一年、特進魏徴上疏(じょうそ)して」。前の箇所で出てきた魏徴が上疏し、太宗に建白書を出して、「臣」私が「古より圖(と)を受け運に膺(あた)り」。この「圖を受け運に膺り」というのは、トップリーダーに就任することです。伝統的な言い方として、そう言います。トップリーダーに就任し、それで「體を繼ぎ文を守り」。これは、すでに話したように「継体守文」です。創業期が終わり、今度はそれを運営していかなければいけないという時である、ということです。

 創業期において、国家はどうしても武力や腕力で平定するということになります。しかし継体守文になると、そうではいけません。真っ先に出てくる大いなる問題が、この次の「英傑を控御(こうぎょ)し」です。

 「英傑」と言えば、「豪傑」のことです。武断政治は、馬上で天下を取るわけですから、豪傑がいなければいけません。豪傑という人は、戦乱の時は無類の力を発しますが、平定して非常に平和になってしまうと、かえって厄介な存在になります。皆がとても困ってしまうような無理難題を言ったり、「俺が(天下を)取ったのだ」と言ったりするようになります。

 よく創業期の会社も、しばらくたつと腕力・武力でやってきた上層部の人間を、何とか交代させなければいけなくなります。そういう事態にどうしてもなってくるため、非常に厄介な問題が生じてしまうわけです。最悪の場合、仲間割れして会社が空中分解してしまうというようなことになります。何気なく「英傑を控御し」と書いてありますが、ここは非常に重要なところです。


●どんなリーダーでも、国家継続を願わない者はいない


 「南面して」。「北面の武士」という言葉がありますが、北面の武士はトップを守る武士です。これは南面している人を見ているから北面と言います。「南面」とは、玉座に座って南を見ていることです。すなわち、天位に就いているという意味です。

 「下に臨むを觀るに」。自分がずっと古今東西の古典を読み、天...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(2)50歳からの目標
伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
核DNAからさぐる日本のルーツ(2)原人・旧人・新人
原人・旧人・新人は長い年月をかけて分岐と混血を重ねた
斎藤成也