●中国が台頭すると日本は大変な緊張感を持った
現在の日本が置かれている状況を考える際に着目したい第2の点は、中国の台頭です。歴史上、中国が台頭すると日本は大変な緊張感を持つことになります。現在でも同様です。しかし、鄧小平の頃の中国はせいぜい九州一国分のGDPにすぎませんでした。そこから江沢民、胡錦涛の時代は経済一心の30年だったのです。
中国の現代史を大ざっぱに見れば、共産中国の最初の30年は政治オンリー、毛沢東の時代です。この間、中国では大躍進があり、数千万人が殺されましたが文化大革命(文革)がありました。そういった意味で毛沢東は極めて重要な指導者です。
毛沢東の次が鄧小平の時代です。毛沢東の時代に官僚として取り上げられた代表的な人物は、陳元の父で社会主義経済学者だった陳雲、習近平の父・習仲勲(しゅうちゅうくん)、薄熙来(はくきらい)の父・薄一波でした。彼らは毛沢東に抜てきされたのですが、その後、文革で完膚なきまでにつぶされてしまいます。
●習近平は迫害された暮らしの中から頭角を現した
習仲勲は16年間も拘束されるなど、ひどい迫害を受けるのですが、習近平もそのあおりをくらって、15才から21才、つまり精華大学に入るまでの間、穴倉暮らしのような生活でした。太子党出身でお坊ちゃんの家系というような世間でいわれるイメージとは、全く違う暮らしを強いられていたわけです。習近平は、そこから頭角を現してきた人物です。
他方、陳元を見てみましょう。現在、中国人民銀行や中国建設銀行の勢いは相当なものですが、やはり中国最大の銀行は、共産党の銀行である国家開発銀行です。その中で一帯一路を担っているのが陳元です。彼の父親・陳雲は毛沢東の経済政策を作り上げた経済学者でした。陳雲は比較的、政治闘争の外におり、一度は左遷させられますが、中央には早く戻りました。陳元は父親の政争を見ていて、自分は政治闘争には加わらないと決意します。経済学者としてキャリアを積んで、今では開発銀行の総裁になっています。
最後に、薄熙来は汚職腐敗によって徹底的につぶされてしまった人ですが、当時は重慶の書記を務めていました。大連の書記を務めていたこともあります。彼の父である薄一波も、経済官僚として大変優秀でした。