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習近平のすごさは、毛沢東以来のもの

逆境の克服とリーダーの胆力(2)習近平の野心

神藏孝之
公益財団法人松下政経塾 副理事長/イマジニア株式会社 代表取締役会長兼CEO
情報・テキスト
公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、中国を超大国化させつつある習近平の野心について解説する。習近平は中国共産党史上、最弱の皇帝であるという世評は全く的外れだ。むしろ彼は自らの野心を内に秘め、権力闘争に勝利し、毛沢東以来の政治家にまで上り詰めた。(全8話中第2話)
時間:07:43
収録日:2018/01/19
追加日:2018/06/05
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≪全文≫

●中国が台頭すると日本は大変な緊張感を持った


 現在の日本が置かれている状況を考える際に着目したい第2の点は、中国の台頭です。歴史上、中国が台頭すると日本は大変な緊張感を持つことになります。現在でも同様です。しかし、鄧小平の頃の中国はせいぜい九州一国分のGDPにすぎませんでした。そこから江沢民、胡錦涛の時代は経済一心の30年だったのです。

 中国の現代史を大ざっぱに見れば、共産中国の最初の30年は政治オンリー、毛沢東の時代です。この間、中国では大躍進があり、数千万人が殺されましたが文化大革命(文革)がありました。そういった意味で毛沢東は極めて重要な指導者です。



 毛沢東の次が鄧小平の時代です。毛沢東の時代に官僚として取り上げられた代表的な人物は、陳元の父で社会主義経済学者だった陳雲、習近平の父・習仲勲(しゅうちゅうくん)、薄熙来(はくきらい)の父・薄一波でした。彼らは毛沢東に抜てきされたのですが、その後、文革で完膚なきまでにつぶされてしまいます。


●習近平は迫害された暮らしの中から頭角を現した


 習仲勲は16年間も拘束されるなど、ひどい迫害を受けるのですが、習近平もそのあおりをくらって、15才から21才、つまり精華大学に入るまでの間、穴倉暮らしのような生活でした。太子党出身でお坊ちゃんの家系というような世間でいわれるイメージとは、全く違う暮らしを強いられていたわけです。習近平は、そこから頭角を現してきた人物です。

 他方、陳元を見てみましょう。現在、中国人民銀行や中国建設銀行の勢いは相当なものですが、やはり中国最大の銀行は、共産党の銀行である国家開発銀行です。その中で一帯一路を担っているのが陳元です。彼の父親・陳雲は毛沢東の経済政策を作り上げた経済学者でした。陳雲は比較的、政治闘争の外におり、一度は左遷させられますが、中央には早く戻りました。陳元は父親の政争を見ていて、自分は政治闘争には加わらないと決意します。経済学者としてキャリアを積んで、今では開発銀行の総裁になっています。

 最後に、薄熙来は汚職腐敗によって徹底的につぶされてしまった人ですが、当時は重慶の書記を務めていました。大連の書記を務めていたこともあります。彼の父である薄一波も、経済官僚として大変優秀でした。


●習近平のすごさは、毛沢東以来のものである



 習近平と薄熙来は非常に対照的です。片や生き残り、片やつぶされるという運命をたどりました。何が運命の分け目となったのかといえば、やはり父親の境遇でしょう。習近平は父親から、毛沢東の怖さ・恐ろしさ、偉大さ、性癖など、さまざまなことを学んでいました。学校で勉強したというよりも、家族とも離れて穴倉の中のような暮らしでそれを学んだのです。

 習仲勲は16年間の拘束の後、復活し、最後は深センの市長になります。今でも習近平の母親は深センに住んでいます。習仲勲は、毛沢東の怖さ・恐ろしさと強さを骨の髄までしゃぶった人物だったのです。

 習近平のすごさは、最近の中国では毛沢東以来のものがあるところです。国家主席として国を押さえ、総書記として党を押さえ、軍事委員会主席として軍を押さえ、かつ自分の思想を「革新」という言葉で憲法の中に位置付けてしまいました。このやり方は、皇帝になろうとするのと同じやり方です。塩野七生氏の『ローマ人物語』には、カエサルの後継者だったオクタビアヌスが、いかにしてアウグストゥスにまで上り詰めたのかが描かれていますが、そのやり方に似ています。


●自分の野心を全く人に悟らせなかった


 習近平は第1期政権の頃、江沢民や胡錦涛と違って、鄧小平の指名を受けずにその地位にまで上ってきました。習近平は中国共産党最弱の帝王であると、産経新聞を中心に伝えられたこともありましたが、全く的外れです。習近平は自分のことを抜てきしてくれた江沢民派を、その後全部切っていきました。例えば彼は、盟友であり国務院副総理であった王岐山を、党中央規律検査委員会書記に就任させます。これは日本でいう検事総長のような役職です。そして王岐山と一緒に、石油関連で実権を握っていた周永康や人民解放軍の徐才厚など、片っ端から江沢民派をつぶしていったのです。

 習近平のすごさは、自分の力で強い中国を作り上げるという野心と、一見御しやすい人に見えながら、その実、自分の中に強烈に強いものを持っていることを全く悟らせなかったところにあります。習近平が今このようなことを行うとあらかじめ分かっていれば、江沢民にしても胡錦涛にしても、絶対に彼を権力の座に上げなかったでしょう。それほど習近平は、自分の野心を人に全く悟らせなかったのです。

 日本でいえば、もっと小型版になりますが、田中角栄に全く野心を悟られなかった小渕...
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