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逆境の克服とリーダーの胆力
一財務官僚として総理と官邸に戦いを挑んだ香川俊介
逆境の克服とリーダーの胆力(7)気骨の官僚・香川俊介
経営ビジネス
神藏孝之(公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事 /松下政経塾塾長代理/テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
日本の政府債務残高は、GDP比で240パーセントに達しようとしている。国家破綻を食い止めるため、消費増税に向けて総理と官邸に戦いを挑んだ官僚がいた。財務官僚・香川俊介氏である。生涯の友人である公益財団法人松下政経塾副理事長・イマジニア株式会社代表取締役会長兼CEOの神藏孝之氏が、彼の気骨ぶりを語る。(全8話中第7話)
時間:8分02秒
収録日:2018年1月19日
追加日:2018年7月10日
収録日:2018年1月19日
追加日:2018年7月10日
≪全文≫
●日本に改革者が全くいなかったわけではない
日本は現在、GDPの240パーセントもの借金を抱えてしまいました。しかし、ここまでに至る中で、日本に改革者が全くいなかったというわけではありません。私の30年来の友人に、香川俊介氏という方がいました。
彼は2015年に、がんで亡くなってしまいました。彼が亡くなった後、彼のための追悼文集に『正義とユーモア』という題を付けて、同時代を一緒に生きた仲間や先輩方とともに制作しました。どうしても追悼文集を残しておかなければならないと感じたからです。
彼は高校1年生の時、父親ががんにかかります。彼の父は社長候補だったのですが、水俣の工場長を任され、がんになりました。香川氏は、高校1年生から大学1年生まで、父の闘病を支えながら過ごしたわけです。
開成高校から東大に入り、何とか母に楽をさせようと、当初は弁護士になって稼ぐつもりでいました。しかしあまりにも優秀だったため、東大法学部のゼミの先生が、国のために尽くすべきだと言って役人になるよう勧めたのです。そこで彼は大蔵省の役人になりました。
私がちょうど松下政経塾の塾生になった1年目に、彼と出会いました。彼は大蔵省に入って3年目くらいでした。お互いに若い時代に出会ったので、それ以来、おそらく人生で最も一緒に飯を食い、飲んだ仲間になったと思います。20代、30代、40代、50代と、お互い年を重ねるにつれ、収入も増えてきますから、飲み食いする店は変わりましたが、会う回数は1年間でおよそ40~50回のまま変わりませんでした。
●税金が雲散霧消する仕組みがすでにできている
彼の人生を見ていて、日本というのは非常に面白い国だと感じたことがあります。構想を練り、大きな絵図面を描いて、それを根回しするという仕組みがどこにあるのか、全く分からないことです。鄧小平やリー・クアンユーのような政治家がそうしたことを行っていたのか、あるいは霞が関の中でそれが行われていたのか、彼の人生を見ていても、全く分かりませんでした。
むしろ日本の生態系は、財務省や経産省、外務省、警察、検察が横に連携して、霞が関の連合政府のような形で存在しているのかもしれません。各省に入ったキャリア組20数人のうちでも、1軍、2軍、3軍とグループが分かれ、1軍は1軍同士と付き合うことになります。このよ...
●日本に改革者が全くいなかったわけではない
日本は現在、GDPの240パーセントもの借金を抱えてしまいました。しかし、ここまでに至る中で、日本に改革者が全くいなかったというわけではありません。私の30年来の友人に、香川俊介氏という方がいました。
彼は2015年に、がんで亡くなってしまいました。彼が亡くなった後、彼のための追悼文集に『正義とユーモア』という題を付けて、同時代を一緒に生きた仲間や先輩方とともに制作しました。どうしても追悼文集を残しておかなければならないと感じたからです。
彼は高校1年生の時、父親ががんにかかります。彼の父は社長候補だったのですが、水俣の工場長を任され、がんになりました。香川氏は、高校1年生から大学1年生まで、父の闘病を支えながら過ごしたわけです。
開成高校から東大に入り、何とか母に楽をさせようと、当初は弁護士になって稼ぐつもりでいました。しかしあまりにも優秀だったため、東大法学部のゼミの先生が、国のために尽くすべきだと言って役人になるよう勧めたのです。そこで彼は大蔵省の役人になりました。
私がちょうど松下政経塾の塾生になった1年目に、彼と出会いました。彼は大蔵省に入って3年目くらいでした。お互いに若い時代に出会ったので、それ以来、おそらく人生で最も一緒に飯を食い、飲んだ仲間になったと思います。20代、30代、40代、50代と、お互い年を重ねるにつれ、収入も増えてきますから、飲み食いする店は変わりましたが、会う回数は1年間でおよそ40~50回のまま変わりませんでした。
●税金が雲散霧消する仕組みがすでにできている
彼の人生を見ていて、日本というのは非常に面白い国だと感じたことがあります。構想を練り、大きな絵図面を描いて、それを根回しするという仕組みがどこにあるのか、全く分からないことです。鄧小平やリー・クアンユーのような政治家がそうしたことを行っていたのか、あるいは霞が関の中でそれが行われていたのか、彼の人生を見ていても、全く分かりませんでした。
むしろ日本の生態系は、財務省や経産省、外務省、警察、検察が横に連携して、霞が関の連合政府のような形で存在しているのかもしれません。各省に入ったキャリア組20数人のうちでも、1軍、2軍、3軍とグループが分かれ、1軍は1軍同士と付き合うことになります。このよ...
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