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医療費の軽減には今までとは違うアプローチが必要

医療とビジネスの健全な関係(4)医療費削減対策として

真野俊樹
中央大学大学院戦略経営研究科 教授/多摩大学大学院 特任教授/医師
概要・テキスト
素晴らしい医療レベルを持つ日本の最大の課題は医療費削減である。そこで、厚生労働省は医療・介護が必要となる手前の段階が重要であると捉え、新たな医療費削減対策として保険医療に関するビジョンを打ち出した。それは一体どのようなものなのか。(全6話中第4話)
≪全文≫

●イノベーションで変化・進化する時期


 前回、「日本の医療は素晴らしい。しかし、医療費がどんどん増えていって少々心配なので、そのお金を減らすにはどうしたらよいのかを考えましょう」ということをお話ししました。その中で、ご紹介した『医療危機』(中央公論社)という本にも出ていますが、やはりイノベーションではないかと思っています。

 もちろん、いろいろなイノベーションがあるので、その話をこれからしていきます。その中にはいろいろな方法があるのですが、やはり今のままではいけません。これは実は進化にもつながっており、変化しないといけないという時期に、われわれ医療界も来ているのではないかと思います。


●医療費軽減の対策-地域包括ケアの考え方


 一つはまず、厚生労働省の考え方です。医療費が増えているというのは、やはり高齢化と、薬の開発、あるいはロボット手術のように医療技術の中でもレベルの高いものがどんどん保険に収載されて、安い値段でいい医療を受けることができるようになったからです。これは素晴らしいことなのですが、そのために医療費が上がったのです。

 そこで、特に高齢化対策をしないわけにはいかない、ということになり、日本が考え出したのが、「地域包括ケア」という考え方です。治療というよりできればケアを、ということで、もちろんケアの中には治療も含まれるという考え方もあるのですが、やはりケアに力を入れていこうという考え方です。どういうことかというと、上の植木鉢の図がよく持ち出されるのですが、まず本人の選択と本人・家族の心構えを水のように考えて、その上に住まいおよび住まい方という植木鉢があります。これらが基本です。つまり、あくまで生活をもとに考えようということです。何が言いたいかというと、第2話でお話しした健康寿命の延伸ともつながることですが、要は入院したり、要介護で施設に入所したりして、健康寿命ではない状態で十年ほど過ごすのではなく、やはり家で健康的に生きましょうということです。


●自分で健康を維持することを基本とする


 では、「本人の選択」とは何かというと、もちろん「入院したい」という人もいて、それも一つの考え方ではあるけれども、これからはそういう考え方ではない方がいいですよ、ということです。そうなってくると、家族もそれを...
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