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世界が多極化していく中、日本の国益をどう守っていくか

北朝鮮の脅威と日本の国益(9)多極化の時代へ

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
日本の国益を考えた際、短期的にはアメリカの北朝鮮に対する出方が、長期的には、その結果としての在韓米軍の撤退が、日本の安全保障にとって大問題になる可能性がある。いずれにせよ今後は多極化の時代に入っていく中で、より戦略的な観点に立つ必要があるだろう。(全9話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:37
収録日:2019/08/21
追加日:2019/11/17
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≪全文≫

●短期的にはアメリカの出方次第で日本の対応が決まる


―― そういう中で最後に、日本はこれからどう対応すべきかというところをお聞きしたいと思うんですけれども、短期的な部分と長期的な部分と、2つあるかと思います。短期的な部分でいうと、さきほど先生が重要なご指摘をされて、これから厳しい局面に行くということで、そこに向けてどう動くべきかというところが一つあろうかと思います。

 長期的な部分でいうと、今日の講義で先生がお話しくださったように、まさにデカップリングの話です。アメリカからすれば、自分の国への核攻撃の手段さえ取ればいいということになりますが、日本としてはそれでは「えっ、いいんですか」となるでしょう。逆に、もう1つの危機である先制攻撃みたいなことをアメリカが仕掛ける可能性もあります。こうしたアメリカベースの交渉で行った場合に、日本としては本当に国益が守れるのかどうかという問題があります。現状のままで良いのかということです。

 先生は『日本の国益』(講談社現代新書)の中で、非常に印象的なことをおっしゃっています。つまり、アメリカが日本にとって脅威が消えないような条件で北朝鮮と交渉を妥結した場合において、日本としては日米同盟による抑止力でこのまま良しとするのかどうか、判断が迫られる可能性もあるんじゃないか、というご指摘です。その短期的な部分でどう対応するか。あるいは長期的な構えとして日本はどう戦略を組んでいくべきか、ということについては、どのようにお考えでしょうか。

小原 先ほどの流れからいうと、短期的には金正恩さんはアメリカしか見ていませんから、ドナルド・トランプさんがどう出るかということだと思うんですよね。この間、トランプさんも危機を察して板門店に駆けつけて会合をしました。中身はほとんどなかったんだと思うんですけど、ああいうパフォーマンスをすることによって、現状は悪くないんだということを彼は言いました。

―― 友好的なムードを出していましたね。

小原 彼は国民にも、現状は悪くないんだと言いました。一度は戦争になるかもしれなかったんです。半分、マッチポンプですよね。自分で火をつけておいて、自分で消火する。彼がアメリカで今言われているのはね、要するに、いわゆる火付け屋だというものです。同時にね、消防士だということも言われているんです。

―― まさにマッチポ...
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