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各国の「百万人当たりの感染率・死亡率」比較でわかること

脱コロナを「知の構造化」で考える(2)世界の感染状況

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
新型コロナウイルスの状況を把握するには、新規の感染者数だけでなく、人口100万人当たりの感染率、感染した人の死亡率についてのデータを各国間で比較する必要がある。これにより、国ごとで異なる状況が起きていることを知ることができ、このウイルスがどれくらいの恐さなのかを判断することにもつながる。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:06:32
収録日:2020/04/22
追加日:2020/04/29
キーワード:
≪全文≫

●新規感染者数の減少を状況の安定化と見なすことができる


―― まさに世界の状況も各国ごとに違う形ですから、それぞれがどんな姿なのかを、数字によって示せると良いと思います。先生が資料を作ってくださっています。まずは、感染者の人数と人口に対する比率についてです。

小宮山 現時点の日本では、毎日200人~数百人ほど新規の感染者が増えているといわれています。それを示しているのがグラフ中の、一番左側の図です。これは2月16から4月21日までの、新規の感染者数です。

 韓国では2ヶ月くらい前から大量の感染者が出て(これには宗教団体との関係があったりしたのですが)、今は収まっていることが分かります。

―― 確念のため確認すると、このグラフの縦軸は、それぞれ数字が違うということでよろしいですか。

小宮山 はい。各国によって変えてあります。韓国であれば新規の感染者は500~600人ですし、下のイタリアは1桁多い。ここで確認すべきなのは、状況の安定性を新規感染者が出なくなることによって判断できるということです。その意味で、このデータは非常に重要です。新規の感染者がたくさん出ているときは、感染がどんどん拡大していくときであり、新規感染者が減っているときは落ち着きかけているときです。韓国の場合には、大体落ち着いたということが見て取れます。

 それでは、ニューヨークと並んで一番ひどい状況にあるイタリアはどうでしょうか。発生している数を見てみると、1ヶ月くらい前に新規の感染者が激しく増え、途中で明らかに医療破綻を起こしました。しかしまだ、新規の感染者は減っていません。ピークの3分の2くらいまで数字は落ちましたが、イタリアではまだ終息していないということが分かります。


●感染者数だけでなく、人口に対する割合を見る必要がある


小宮山 その下のグラフは、アイスランドのデータです。小さな島国ですが、ここでも激しく感染者が出ています。実はアイスランドは、世界で一番感染率が高い部類に属している国です。しかし、グラフを見ると、新規の感染者の発生はほとんどなくなっているので、終息に向かいつつあることが分かります。

 ただしこれは、人数そのものの数字なので、国の大きさによって感染率は異なります。アイスランドは人口が30万人ほどであるのに対して、イタリアや韓国は数千万人です。ですから、感染の状況を見るためには、この感染者数を人口で割って、何パーセントの人が感染しているのかという比率を見る必要があります。

 それを表したのが真ん中のグラフです。人口100万人当たり何人が感染しているのかを示しています。パーセントではありませんが、比率が示されています。これを見ると、韓国の発生数は実を言うと非常に小さいのです。ごく一部の場所で発生したということです。現時点では、韓国における新しい発生率はほぼゼロに近いのです。

 それに対して医療崩壊が起きているイタリアは、感染率としても相当高い。

―― 100万人当たり100人くらいですか。

小宮山 そうですね。毎日それくらい出ていたということです。アイスランドは人口が少ないので、比率でいえばものすごく高い。世界でも、感染している人の割合が一番高い国です。


●致死率の状況も、各国ごとで大きく違う


小宮山 しかし、もう1つ見なければならないのは、感染した人の中でどれくらいが死んでいるかということです。100万人当たり何人が新しく死んでいるかを示しているのが、一番右側の図です。

 韓国はほとんど見えません。

―― 下に小さく書いてあるだけですね。

小宮山 ちゃんと書いてあるのですが、見えないくらいです。イタリアは100万人当たり毎日10人くらいの方が亡くなっています。それに対してアイスランドでは、国民の感染率はイタリアよりも高いにもかかわらず、死んでいる方は極めて少ない。実数でいうと数人です。こうした状況では、感染数も重要なのですが、どれくらい感染しているかという比率や国民のどれくらいが比率として死んでいっているかが重要で、これを見なければ、このウイルスがどれくらい恐いかは分かりません。
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