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「オール・サポーティング・オール」社会のためにすべきこと

『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(5)時間軸を分けて考える

出口治明
元・立命館アジア太平洋大学(APU)学長/学校法人立命館副総長・理事
概要・テキスト
「消費税は貧しい人に厳しい」といわれるが、人口構成の変化をベースに考えると、それは間違いだという。高齢化の進んだヨーロッパの国々は消費税を採用している。重要になるのは、古い常識や慣行にとらわれず、「数字、ファクト、ロジック」を基礎に自分の頭で考えることだ。そして、物事を考えるときには、全体を見るとともに、時間軸を分けることも大切だ。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:46
収録日:2020/06/30
追加日:2020/08/29
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≪全文≫

●高齢者が若者に「肩車」する社会保障の限界


―― 先生がおっしゃっている非常に重要な発想の転換だと思うのが、「ヤング・サポーティング・オールド」(若者が高齢者をサポートする)社会から、「オール・サポーティング・オール」(全ての人が全ての人をサポートする)社会にしないと、もはや成り立たないということです。

 政府などが最近、よく出してくるのは、これまで20人なり10人なりで1人を支えていたのが、3人に1人になり、やがて肩車になっていくということで、こんな時代は、きついですという話です。

出口 人口が増えているときは若者10人で高齢者1人を支えるわけですから、それでいいわけです。働いている10人の若者から所得税を集めて、それで1人の高齢者に敬老パスをあげればいい。でも、肩車社会になったら、若者と高齢者のウエイトが1:1に近くなるわけです。そうなると、働いている若者は2人分払わないといけなくなる。

―― そうですね。

出口 10人で1人を養うのだったら、なんとか胴上げできますよね。でも、1:1で胴上げしろというのはしんどいでしょう。

―― それは大変ですね。

出口 そこで、働いている・いないにかかわらず、若者も高齢者も税金を払うべきだと考えると、ほぼ自動的に消費税になるわけです。所得税から消費税に変わるのは、人口構成の変化がベースになっているので、高齢化の進んだヨーロッパの国々はほぼ全ての国が消費税を採用しています。こういう当たり前のことを考えずに、「所得税は累進性がある。消費税はフラットだから貧しい人に厳しい」などといわれる。

―― そういう議論はよくなされますね。

出口 ほんとに全体を見ない愚かな議論です。


●「データ」をベースに自分の頭で考える


出口 消費税のほうが高齢化社会にとってはるかに公平だということは、誰でも分かります。今の若者の不安は、やはり肩車がいやだということです。

―― そうですね。今の若い方からは、「自分たちは年金の原資を取られるけれども、もらえることはないだろう。結局出し損ではないか」などという声も聞かれています。先生の言われる「オール・サポーティング・オール」に変えていけば、まさにその不安がなくなっていくということですね。

出口 だって年齢フリーで考えたら、若者と高齢者は対立しないわけです。

―― そうですね。まさに年齢フリーですから。

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