●プーチンは、ソ連を潰したノーメンクラトゥーラの生き残り
執行 (今回のテーマの)「戦争論」には、具体的なものや思想論などいろいろありますが、具体的な話をするとキリがないので一番の問題をまず話します。戦争云々は置いておいて、とにかくアメリカの尻馬に乗って、日本はウクライナの味方をし過ぎているように感じます。これは、「ロシアがいい」という意味でもないですし、「戦争をいい」と肯定しているわけでもありません。
ただ、あまりにも日本の報道機関は、アメリカから出てくる情報のままです。アメリカのことを「国際社会」と言うのもそうです。私は、本当にロシアから恨み買わなければいいと思います。これは怖いです。ロシアのほうが、ずっと隣国ですから。
私はロシア人の性格も、ある程度、文学で知っていますが、すごく怖いものを感じます。ロシア人の魂の中に、自分の国でもないもので、とんでもない恨みを残すのではないかと。そういう大所高所からの危惧をまず持っています。
―― はい。
執行 プーチンがいいという意味ではありません。まずロシアの民族についていうと、ロシア人は非常に芸術的であり、日本人と魂が非常に近いのです。縄文的というか。
―― 縄文的なんですね。
執行 縄文的。原始的。だから私はロシア人が大好きです。ただし「ロシア人は」です。戦争肯定ではないし、プーチン は嫌いです。なぜかについては、あとから少し喋りますが、要は「プーチン憎し」ですべてのものを忘れてしまう危険を感じているのです。
―― なるほど。
執行 プーチンが大統領になったときからずっと言っていますが、彼は本当に世界を破滅させるかもしれない。私は昔から、本当に小さな予言をしています。理論的には、みんなが覚えていることでいえば、ソ連崩壊です。ソ連崩壊がどうして起きたかというと、神藏さんは私より年齢は下だけど知っている世代ですね。
―― はい。
執行 あのソ連が築いた官僚主義、大官僚主義です。あれが裏目に出て、もうどうにもならない。共産国は。あの東ドイツも全部。
―― 動きが取れないんですね。
執行 そう、全然(取れない)。最初はいいものと思って作ったけれど、要は官僚機構を作るのに失敗したわけです。
―― そうですね。
執行 日本の官僚なんて、ソ連に比べたら、もうとんでもなく優秀です(笑)。あれでも、みんな生き生きしている。そのくらいソ連、中共(中国共産党)もそうですが、硬直してしまっていて、それでソ連は崩壊したわけです。だからソ連崩壊の頃は、覚えていると思いますが、穀物がなくてアメリカが援助していました。ところが知っていると思いますが、穀物は流通しないだけで、山ほどできていた。全部、産地で腐っていたのです。
―― 腐らせてしまったのですね。
執行 要するに商売する人、流通する人の間で、全部ネットワークできていないのです。その間に官僚が入って、全部、「思想」でやっているからです。私も若い頃は共産主義をずいぶん勉強した世代です。ソ連の研究もずいぶんしましたが、プーチンはKGB上がりです。昔の言葉でいうと「ノーメンクラトゥーラ」。
―― はい。
執行 有名なノーメンクラトゥーラ。諸悪の根源です。あの大官僚主義のノーメンクラトゥーラがソ連を潰したのです。
―― そうですね。
執行 はっきり申し上げると、プーチンはその生き残りなのです。
―― 確かにKGBの生き残りですよね。
執行 KGBでやっていたのも、そうです。経歴はある程度知っていますが、(ロシアの初代大統領)エリツィンの子分で、ノーメンクラトゥーラから出てきて政治家になった人です。だからプーチンというのは、「ソ連」なのです。
―― ソ連そのものなんですね。
執行 それがみんな分かっていない。ロシアではないのです。
―― ロシアじゃない。なるほど。
執行 あれはソ連だということが分かっていない。
―― それは根本的なところですね。
執行 これを日本人は思い出して、「プーチン攻撃」はいいけれど「ロシア攻撃」はやめなければダメです。
―― 別物ですからね。
執行 ロシアがあれほど(対ウクライナ)戦争に弱いのも、要はロシア国民とプーチンがどのぐらい乖離しているかということです。
●ウクライナ侵略の構図は、実は日中戦争にも似ている
そしてウクライナの状態は(日中戦争と似ています)。私は日本人なので、日本を例にすると手前みそに思われるかもしれませんし、軍国主義の日本を擁護するわけではありませんが、(1937年以降)日本は中国と戦争をしていたのです。
―― そうですね。
執行 (当初は)日本は中国と戦争していただけです。蒋介石政権で、毛沢東政権ではない。あとで(中国の国民党と共産党が)合体しますが、日本は蒋介石政権と戦...