今の日本の間違いは、弱い人を中心にしていることである。学校も、勉強ができる人ではなく、できない人に合わせている。また、外国で活躍しているある日本人女性が「昔の、あの偉そうなおじさんは、どこにいったの?」とインタビューで語っていたのが印象的であった。「偉そうな人」がいることも大事で、彼らは努力をしている人でもある。私が好きなのは1930年代のアメリカで、当時のアメリカ人は自分が貧乏でも「国が悪い」「経済政策が悪い」ではなく、「それは自分のせい」と考えた。すべてを自己責任と考えられる国は強く、だから当時のアメリカは強かった。(全10話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
≪全文≫
●「昔の、あの偉そうなおじさん」がいなくなった
執行 ただいつも自慢にしている、あのトインビーの『歴史の研究』を読んだのが高校生から大学生のときで、あれで失明しましたから。失明したということは、バランスを間違えた。
―― 間違えたのですね。
執行 体のほうを苛んでいたわけです。だから自分が「読書をしよう」という魂を抱くと、肉体は「させまい」とするほうに動くのです。「疲労」です。「これをしていると健康に悪いぞ」と。だから、「疲労」と「読書しようとする魂」との拮抗作用を覚えることがコツなのです。これは私の経験では失敗しないと覚えられない。
―― やはり体にしみつけないとダメなんですね。
執行 ダメなのです。だから、やるところまでやらせないと。
―― それが今はできないから、ひ弱なやつしか出てこない。
執行 そういうことです。例えば自殺者を一人止めるために全員がやってはいけないということになるのです。ちょっと言葉が悪いですが、昔だとそういう人は「そいつが弱いんだ」で切り捨てられたわけです。
―― それでおしまいですよね。
執行 勉強なら、できる人が学校では中心なのです。でも今は、できない人が落ちこぼれないようにやろうとしているから、もう学校ではありません。
―― もう全体的にレベルが、めちゃくちゃ下がっていますよね。
執行 勉強したい人は、学校でしていません。みんな自学自習だし、塾です。学校で勉強している人なんて聞いたことがない。
―― そうでしょうね。
執行 弱いほうが中心だから。これは間違いなのです。中心はあくまでも、良いほうでないと。これは弱い人間を「見捨てろ」とか「殺せ」といっているのではありません。
―― ええ。でも中心は……。
執行 中心は、やはり良いほうです。
―― 良いほうを置かないと1万人か2万人のジェントルマン……。
執行 も出ないし、民族も興隆しません。
―― もったいないですよね。
執行 それは、もったいないです。
―― ちょっと前まで、70年代まではまだいたわけですから。
執行 私が30歳になるまでは、たくさんいました。ただ30代から確実にいなくなった。
―― 40年前ですね。
執行 私が20代の頃は各業界でちょっと名を成している人は、何かで知り合うとみんな魅力がありました。
名前を忘れましたが、何年か前に(作家の)塩野七生...