●アメリカは本当に日米安保条約で日本を守ってくれるか?
―― だから(ドイツの)メルケルは、やはり失っていなかったのですね。
執行 メルケルはまだ持っていた。一線は守っていました。
―― トランプの言う通りにはならなかった。
執行 それは、ならない。ドイツはドイツ。
―― そしてプーチンとも、それなりにちゃんと付き合う。
執行 プーチン(のロシア)は隣国で、プーチンと仲良くしておくほうが、ドイツは得ですから。アメリカなんて、いつ逃げてしまうか分からない。
―― それもよく分かっていたわけですね。
執行 信じているのは日本ぐらいです。
―― そうでしょうね。
執行 あとはフランスも信じているかもしれない。ドイツも今はわかりません。グローバリズムに侵されてしまった人たちです。要はヒューマニズムというアメリカの表看板(にやられたの)です。
―― やはり日米安保は張子の虎であるという感じの。
執行 戦争が起こって日本が攻撃されるまでのもの。日ソ不可侵条約と一緒です(笑)。その日まで。ある種、条約とはそういうものです。独ソ不可侵条約も、みんなそうです。
だから日米安保条約は、中国やロシアが本当に怒ったときに、アメリカが引いて終わるのです。日本が何を言っても、もうダメです。
―― そのときに初めて気がつくわけですね。
執行 気がついても、もうダメです。
―― 「日米安保は張子の虎だった。ものすごく動揺するけれど、間に合わない」と。
執行 だって日本の戦争で、アメリカがやるわけがない。やってくれると思うのが、私は分からない。
―― でも、やはり(日本人は)ナイーブなんですね。無知というか。
執行 日本人は純真なんです、まだ。奥底は純真なんです。だから、やはり(日本は)怖い国です。まだ隠れているところが純真だから。私は小学校から信じていませんが。
―― そこは自分なりに考えるし、反骨精神がある。
執行 私の場合は武士道です。武士道精神ばかり研究していますから。武士道精神から見れば、そんなことはあり得ないので。武士道にだってない。この世にないことは起きませんから。
―― なるほど。
執行 アメリカが助けてくれるわけがない。冷静に考えれば分かります。
―― それはその通りです。
執行 そうです(笑)。だから怖いのです。プーチンが「ソ連人」だというのを忘れています。
―― なるほど、そこが全然違いますね。
執行 ロシアとは別の国だから、「ソ連」は。あれは、ボリシェヴィキが思想で作り上げた体制です。大官僚主義によって人民を奴隷状態にして、収奪した。今は中国共産党もそうですが、それをや っていたのがノーメンクラトゥーラで、(プーチンは)その生き残りです。
―― 確かにそうですね。KGBの中で育った人ですから。
執行 KGBはノーメンクラトゥーラの代表的な機関で、CIAと一緒です。その国を代表するノーメンクラトゥーラの顔です。(プーチンは)それが分かっている人です。運よくクーデターでも起きて、違う人がなれば、まだいいですが。ただロシアは核を使わない限り、アメリカに相当痛めつけられます。
―― そうでしょうね。
執行 二度と立ち上がれないところまでやられる。私はロシア人の誇りをよく分かっているので、ロシア人がこのまま引っ込むのか、という危惧を持っているということです。ロシア人は非常に誇り高い国民ですから。
―― やはり誇り高い。
執行 すごく高い。それがあの偉大な芸術も生み出しているわけです。
―― そうでしょうね。誇り高くなければ偉大な芸術は出てきません。
執行 偉大な芸術は、人間が命を削って、死ぬ気でやって生み出した。ドストエフスキーも全部そうでした。そういう国民だということを覚えていないのです。
―― しかも手元に戦術核を……。
執行 もう良い悪いではなく、持っているわけですから。
―― 世界最大の核保有国ですからね。
執行 そうです。
―― 使わないで、おめおめ負けるような人たちではない。
執行 そう思うのです。
●吉田松陰も損得で動かなかった
―― でもそこは、けっこう致命的ですよね。
執行 この錯覚は致命的で、さすがは歴史のないアメリカ人が考える幼稚な国際情勢です。知っていると思いますが、中国の蒋介石を援助しているつもりが、最後に日本にも勝って、全部取ったのが毛沢東です。結局、(アメリカの)援助物資は全部、(毛沢東の)八路(パールー)軍に流れた。同じ構図です。
―― 同じ構図ですよね。かつ、毛沢東が文革でひどく苦労しているところに、もう一回キッシンジャーが助けに行くわけです。
執行 そうでした。
―― それで化け物みたいなものを作ってしまった。
執行 何を見てもそうです。それが(アメリカの)良...