源氏将軍断絶と承久の乱
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
黒幕は牧の方?…暴挙に走った北条時政VS義時、政子
源氏将軍断絶と承久の乱(3)北条時政の失脚と牧氏事件
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
畠山重忠の死は、無実であったゆえに罠を仕掛けた北条時政の立場を著しく悪化させる。若き源実朝の身柄をめぐり、北条政子・北条義時との駆け引きの末、追い詰められた時政は失脚、伊豆に隠居となる。これが牧氏事件である。こうして有力な御家人たちが次々と退場していく中、幕府の実権は北条義時へと移っていくことになる。(全12話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分23秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年9月25日
≪全文≫

●父・北条時政に汚名を着せた北条義時の思惑


―― この事件(畠山重忠の乱)はそれだけに終わらなかったということになるわけですね。

坂井 そうですね。134騎しかいなかった彼らが謀叛を起こそうとしたはずがないということは、誰の目にも明らかでした。だから、鎌倉に戻ってきた北条義時はそれを声高に唱えるわけです。このことは同時に、北条時政が無実の重忠を滅ぼした、つまり北条時政が悪いということになります。

 私の考えでは、義時は三浦氏に敵(かたき)討ちのカタルシスを与えるための口実として、「自分も畠山追討の大将軍になった。畠山氏は無実だが、自分(義時)たちは討たざるを得ず、それを命じたのは執権である父の時政だ」ということを、他の御家人たちに目の当たりにさせる、そのような策略があったのではないかと思っています。

 義時はなかなか頭のいい男なので、ずっと控えていて前面には立たないのですが、常にいろいろなことを考えている。そして、ここぞというときに行動を起こす人です。したがって、重忠には申し訳ないけれども、この局面を使うしかないという決断を下し、行動を起こした。そのように私は考えています。

 結果的に、「時政が無実の重忠を討たせた」という汚名を着たことになり、御家人たちの支持が衰えます。

 そこで、北条政子と義時の姉弟は行動に出ます。時政から権力を奪わなければいけない。ということで、政子は実朝の実の母親であり頼朝の後家という立場で、重忠追討の論功行賞を行うのです。これは、いわば将軍権力を代行するということになります。もちろん義時の承認の下といいますか、義時がそのようにしようと持ちかけたのだと思います。


●源実朝をめぐる父・時政と義時・政子の虚々実々


坂井 時政にとっては自分の権力が脅かされる状況になり、相当追い込まれたと考えざるを得ません。なんとか義時と政子の手を封じなければいけない。そこで一番効果的なことは何かといえば、政子は頼朝の後家ではありますが、権力の源泉は現将軍・実朝の母であるというところにありますから、その実朝を自分(時政)たちのところに取り込んでしまうということです。

 まず、将軍御所にいた実朝を、鎌倉の南東の位置にある「名越邸」という時政の館に連れてきてしまう。要するに実朝の身柄を確保するということをします。これは、場合によっては実朝の命が奪...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将