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「狂気」といえるほどの信念を失ったとき国は衰亡していく

人生のロゴス(7)「狂」といえるほどの信念

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
『人生のロゴス 私を創った言葉たち』(執行草舟著、実業之日本社)
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〈これは狂気かもしれない。しかし筋が通っている〉。この言葉が意味するのは、人間の歴史や人間生命の道理に適っていれば、「狂」の部分があってもいいということである。過去を振り返れば、「狂」が歴史をつくってきた例は、いくらでもある。むしろ、そんな逸話ばかりだといってもよい。ただし、「筋が通っている」というところを忘れてはならない。筋道を忘れると、ただの狂気になってしまうからである。(全14話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:33
収録日:2023/03/29
追加日:2023/07/07
カテゴリー:
≪全文≫

●これは狂気かもしれない。しかし筋が通っている


―― 先生、(ウィリアム・)シェークスピアの言葉も挙げていますね。〈これは狂気かもしれない。しかし筋が通っている〉。

執行 『ハムレット』です。私もこのとおりで、『葉隠』は狂気なのです。武士道は「狂う思想」ですから。だから私は『葉隠』が好きで、狂気に憧れているのです。

―― はい。

執行 世の中を動かしたのは狂気です、全部。狂気だけれど筋が通っているということは、人間の歴史や道理に適っているということです。だから、人間の歴史や人間生命の道理に適っていれば、狂気でいいということです。

 これと同じようなこと言っているのが吉田松陰です。

 吉田松陰も、人間にとって最も重要な働きは「狂」であると。もちろん『葉隠』もそうです。この狂気の段階に行けるのが、言葉を換えると信念なのです。

―― そうか。狂気だけど、信念。

執行 信念は全部、狂気。これは日本人に限りません。英国ジェントルマンもそうです。英国ジェントルマンの本はほとんど読み尽くしましたが、全員持っている信念は狂気です。今言ったローマの元老院議員、つまり神の子孫たちも全部、狂気です。

 『ローマ帝国衰亡史』という、ローマがどんどんダメになっていくさまを(エドワード・)ギボンという英国の学者が書いている有名な本があります。この『ローマ帝国衰亡史』も読むとわかりますが、ローマ帝国がダメになりだしたのは、自分たちエリート層が神の子孫であることを疑いだしたときです。

―― 疑いだしたときですか。

執行 そう。だから「まともになった」ということです。今風に言うと「よい人になった」。だから、ローマが世界を支配していた頃は、元老院議員は全員が神の子孫だと信じて疑わないときです。これも重大です。

―― 重大ですね。ものすごく大事なところです。


●カルタゴは滅ぼさねばならぬーーその背景にあるもの


執行 あとは、有名な大カトー(マルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウス)がいますね。カトー家も一番有名な貴族の家系で、何人も有名な人が出ています。

―― 小カトーでなく、大カトーのほうですね。

執行 そう、カルタゴとのポエニ戦争を戦った人です。誰と喋っていても、いつ演説していても、死ぬまで締めくくりの言葉が必ず「であるからゆえに、カルタゴは滅ぼさねばならぬ」だったと...
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