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人間に関心を持って詳しく知っていた、かつての偉人たち

人生のロゴス(10)無関心と人間の劣化

執行草舟
実業家/著述家/歌人
情報・テキスト
『人生のロゴス 私を創った言葉たち』(執行草舟著、実業之日本社)
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最も非情なのは無関心な人間である。関心を持ったら、家族構成から先祖まで含めて知るように努めるということが、かつてはあった。だが、今はすっかりなくなってしまって、浅い知識で他人をけなしたり、人の言葉尻をとらえるようなことばかりになってしまった。一方で、社会への関心はテレビを通してということが主流になって以降、個性が低下し、知能が劣化した。こうした劣化は世界レベルで起きていて、人類全体の問題でもある。昔のヨーロッパでは、「人間は、幸福になるために生まれて来たのではない」という言葉は、ある意味では常識であった。だが今、ほとんどの人は「人間は幸福になるために生きている」と思っている。そこに大きな間違いがある。(全14話中第10話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10:03
収録日:2023/03/29
追加日:2023/07/28
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≪全文≫

●テレビの時代から劣化した現代人の個性と知能


執行 (その意味で)バーナード・ショウの〈無関心こそが、非人間性の本質である〉は、本当に深い言葉です。実は反対者とかそういうことではなく、人間性が最も発達しない人は歴史上、物事に無関心な人なのです。無関心な人が最も非情で、悪魔で、ひどい人間。今の日本は、ほとんどそうなっています。

―― 確かにそうですね。無関心ですから。

執行 前回話の出た山縣有朋は反対で、あらゆることに興味を持って、自分の権力基盤を作ることにもすごかった。あのような文明社会に興味を持っている人が、本当に温かい、国民のためになることもできるのです。山縣有朋は、いい例です。

―― 本当にそうですね。あれだけ膨大な人脈地図を作れるのは、人間に対してものすごい関心を持っていないと、できないですね。

執行 そう。どんな人間か隅々に至るまで、全部知っています。

―― 原敬もそうですね。

執行 あの頃の政治家には多い。そうじゃないと、(政治は)できないから。私が若い頃までの日本の偉い人は大体そうです。評論家で有名な村松剛もそうです。高校・大学とかわいがってもらいましたが、彼もインテリで有名です。若い頃に驚いたのは、人の微に入り細に入り親戚の末端に至るまで、学歴から職歴から肩書まで全部知っていることです。

―― すごいですね。

執行 彼はちょっと強面で、論客としても有名で、仏文学者としてもすごい。当時、一番の教養人です。私はかわいがられて、彼の家に何度も遊びに行きましたが、行くたびに驚きました。あまりに微に入り細に入りで。例えば、政治家の人脈でも閨閥とか、誰と誰が結婚して、できた子どもがこの人で、この人とあの人が結婚してということで全部知っている。

―― ものすごいですね。

執行 驚くのは世間などに興味ないというか、学問とフランス語、仏文学、あとはいろいろな政治だけ。その学問がすごいのです。

執行 例えば、関心ある政治家が1人いたとします。安倍さんなら安倍さん。すると安倍晋三さんの家系から、江戸時代以上にさかのぼって全部知っています。

―― やっぱりすごい人ですね。

執行 すごいですよ。

―― 人間に対する関心の度合いが全然違うのですね。

執行 そうでしょう。それは驚いてしまいます。今(の人)みたいに、非常に浅い知識で他人をけなしたり、人の言葉尻ばかりとらえたりする、あんなものは理解できません。そんな人が政治家をやっている。

 少なくとも論客みたいに、ある政治家をけなすのなら、村松剛さんのように(する)。50年前は彼のように深く研究し、知っている人がそれを言っているということです。

―― 本当に劣化の仕方が速かったわけですね、日本も。

執行 1代ですね。

―― 1970年代は、そういう人がいた時代ですからね。

執行 何度も言っていますが、現代人はテレビを通して社会のことが好きだからダメなのです。私が一番成功した、自分を維持できたのは社会に関心がないからです。嫌いというか、そのぐらいにならないと、これだけの情報社会は流されてしまいます、知らないうちに。

 テレビがある時代とない時代で、(そこが)決定打です。私が小学校3年生まで、うちもテレビはありませんでした、高度成長(期)前で。だから、私の知識の大半は、おばあちゃんと親から受けた知識です。それ以外ない。だから、みんなそれぞれが十人十色です。生まれた家によって教養も違う。みんな、そうでしょう。

―― そうですね。

執行 近所の家も、全部そうです。私が小学校3年のときから大体の家にテレビが少しずつ入りだして、『月光仮面』ではないですが、子どもも全員、世代の共通項ができた。そこからがダメなのです。どんどん個性が低下した。もう、ひどくなる一方です。

―― 確かにそうですね。テレビはおろかSNSになったら、もっとおかしくなりますね。

執行 テレビの時代が懐かしいぐらいですからね、今は(笑)。

―― もうここまで進んでしまうと難しいですね。

執行 そうです。劣化は世界レベルだから。日本だけなら戦後問題で解決できますが、今はドイツ、フランス、イギリス、どこを見ても(同じです)。あのヨーロッパにしても偉大だったのは、ちょっと前までです。今は全然ダメ。日本のほうがましで、ヨーロッパの劣化は見られたものではありません。これはホモ・サピエンスの問題です。もう民族の問題は通り越しました。

―― なるほど、ホモ・サピエンス自体の問題だということですね。

執行 知能の劣化という点では、もう民族を超えているので、ホモ・サピエンスの問題です。われわれが人類として、本当に存続できるかどうかというところです。


●「人間は幸せになるために生まれた」は現代人の最大の間違い


―― アン...
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