幕末長州~松下村塾と革命の志士たち
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長州藩の財政的基盤を支えた「防長三白」
幕末長州~松下村塾と革命の志士たち(03)“実質”百万石、成功の要因
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
関ケ原の戦いで120万石から37万石に減封された長州藩が、天保の改革後、実質的に加賀の前田家に匹敵する大藩になっていたという。このことが、明治維新を理解する上で大事な点だと山内昌之氏は指摘する。鍵となるのは「防長三白」である。長州藩を大藩へ導いたその要因に迫る。(シリーズ講話第3話目)
時間:8分48秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年1月19日
≪全文≫

●実は財政的基盤が盤石だった長州藩


 皆さん、こんにちは。

 先週、少し触れましたように、関ケ原の戦いで長州藩毛利家は大きな領土を失いました。徳川家康によって禄高が120万石から37万石に減封されたのです。

 ところが、天保の改革後、この藩が実質的に100万石、すなわち、加賀の前田家に匹敵する大藩になっていたことはあまり知られていません。それはなぜか。このことは、私たちが明治維新を理解するときに大事な点です。

 政治革命を行うにしろ、安全保障を充実するにしろ、何をするにしても、先立つものはイデオロギーや思想ではありません。お金です。すなわち、財政的基盤がしっかりしていないと駄目なのです。その点、長州藩はまさに盤石でした。


●防長三白によって有事に備えることができた


 「防長三白(ぼうちょうさんぱく)」という言葉があります。これは、長門と周防、長州と防州、今の山口県が幕末において、特に栄えた名産3点「米、紙、塩」のことです。これらは、いずれも白く輝き、そして、光るように作られた大変良質な名品であったため、そう表現されました。

 長州藩は、そもそも18世紀中頃からこうした改革に努めてきました。安全保障は、村田清風による19世紀の改革でしたが、すでに18世紀、いわば一種の産業革命ともいえる改革を試みました。

 18世紀中期の藩主であった毛利重就(もうりしげたか)の時代に、「撫育方(ぶいくかた)」という一種の開発局(防長開発局)を設け、防長三白の生産力向上に努める役職を置いたのです。しかも撫育方の収入は、現在で言う一般会計ではなくて、特別会計でした。すなわち、藩の通常の予算、支出、あるいは、収入ということで財政処理するのではなくて、特別会計として藩の手元金として、使わずに手元に置いておきました。まさにいざというときに使うために、蓄積されたのです。

 財政赤字を垂れ流していくような現代の世界において、日本もそうした非常に不幸な時代にあるのですが、財政で黒字になった部分に関して、きちんと蓄積し、使わないというのは、なかなか勇気の要ることです。これが後々効いてくるのです。

 これによって、長州藩の財政は、余裕を持つことになり、重就は、散財も贅沢もせず、有事に備えたということです。


●ヒト、モノ、情報が集まる恵まれた位置にあった


 もう一度、長州...

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