幕末長州~松下村塾と革命の志士たち
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
村田清風が変えた長州藩の安全保障の意識
幕末長州~松下村塾と革命の志士たち(2)村田清風と長州藩の国防意識
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
黒船来航からさかのぼることおよそ20年、長州藩では村田清風による藩政改革が行われていた。改革は、外国からの脅威に対し国防を強化するものだった。なぜ長州藩にはその必要があったのか。幕末の長州藩に大きな影響を与えたと言われる村田清風の国防論に迫る。シリーズ講話第2話目。
時間:5分46秒
収録日:2014年12月15日
追加日:2015年1月9日
≪全文≫

●幕末の長州藩を考える際に一番重要なポイントは地理的なロケーション


 皆さん、こんにちは。今日は、長州藩について少し語ってみたいと思います。

 長州藩は、黒船が来航する20年ほど前の天保年間に藩政改革を行います。このことによって、海防、すなわち、外国からの脅威に対する国防を強化するのです。この点からすると、長州藩は、国防意識、あるいは、安全保障に関する関心が高かったと思われますが、果たして、実際はどうだったのでしょうか。

 幕末の長州藩を考える際に一番重要なポイントは、長州と周防、すなわち、今の山口県が置かれていた地理的なロケーション(場所)で、言わば地政学とも言うべきものです。

 地図をご覧になればすぐにお分かりになるように、長州藩は朝鮮半島を介して、中国をはじめとするアジア大陸に最も近い日本の藩、すなわち、日本の事実上の小国の一つであり、大陸であれ海であれ、おのずと外に対する意識は高いものがありました。


●村田清風の国防論と長州藩の海防への強い意識


 外に対する意識とはどのようなことかと言うと、この海の彼方からもし敵が攻めてきたらどうするのか、すなわち、長州藩の安全保障に対して脅威が現れたらどうするのかという問題意識です。

 そういう問題意識を持って自分たちの藩を改革しなければならないと考えたのが、村田清風でした。長州藩の藩政改革は、アヘン戦争と同時期の天保11(1840)年に始まりますから、まさに村田清風は、アヘン戦争のインパクト、あるいは、アヘン戦争が奏でてくる脅威、すなわち、当時の中国を取り巻く国際環境を、十分に意識していたということでしょう。

 村田清風は、藩の重役に挙げられた時、藩主の毛利敬親に対して、「いつ外国船が攻めてくるか分かりません。いつ攻めてきてもおかしくないのです。そういう状況において大事なことは、軍事技術の習得が第一番目です。そのためには、外国に対する国の守りを固める必要があります」と進言します。

 毛利敬親は、この進言を受け入れまして、対外防備を主眼とする大規模な操練(軍事訓練)を行います。すなわち、藩全体で海防に取り組む強い意識を持って、藩士たちの士気を高めようとしたのです。このことが、後に吉田松陰などを生む時代の背景になっていきます。


●村田清風から国防論を引き継いだ吉田松陰


 村田清風は、黒...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治