幕末長州~松下村塾と革命の志士たち
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伊藤博文、山縣有朋ら俊才を輩出した松下村塾の2つの特徴
幕末長州~松下村塾と革命の志士たち(07)松陰の教育と幕末の志士たち
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
東京大学名誉教授である歴史学者・山内昌之氏は、吉田松陰の教育者としての才能を高く評価している。それぞれの個性や長所を伸ばすことに長けていた松陰。松下村塾でどのような教育を施したのか。また、そこで学んだ若者たちがなぜ幕末の歴史を動かす原動力となっていったのか。山内氏が松下村塾の特徴を解説する。(シリーズ講話第7話目)
時間:13分44秒
収録日:2014年12月24日
追加日:2015年2月15日
≪全文≫

●弟子の個性を伸ばすことに長けていた教育者・吉田松陰


 皆さん、こんにちは。前回は、吉田松陰の思想と実践を重視した「実践知」が最大の特色であると申しました。

 松陰の書物の中には手紙を集めたものがあり、岩波文庫で『吉田松陰書簡集』として簡単に読むことができます。私の大好きな本の一つで、愛読書と言ってもよいものです。

 こういう書簡集などに残されている手紙から推察すると、松陰は、教育者として実に素晴らしいものがあったことは、申すまでもありません。私たち多少なりとも教育に携わった人間からすれば、誠にうらやましく、そして、尊敬すべき教育者で、私たちが到底かなわないにしても、教師たるものが理想の一人として仰ぎたくなるほどの力量であったことが分かります。

 それは何なのか。松陰の教育者としての才能で一番優れていたのは、自分の考え方を押し付けるのではなく、弟子、生徒一人一人の個性をよく観察し、弟子たちの個性や長所を実によく伸ばした点にあろうかと思います。


●松陰はそれぞれの適性に応じて育てようとした


 人間には生まれつき頭脳のさえた鋭い人間もいますし、一を聞けば十も分かる賢い子もいます。しかし、一を聞いて、その一とは何かを粘り強く、あるいは、時間をかけて考えるタイプの子もいます。そうした子は、現代の日本風に言うならば、都会の子に見られる非常に鋭い理知的なタイプと違います。地方の出身者などに一部見られるように、ゆっくりと考える、あるいは、一見にすると行動が遅く、物事を考えていくプロセスが慎重すぎるのではないかと思われるほど緩慢に見えるけれども、考え抜かれた実に素晴らしい結論に落ち着くというタイプの若者もいます。

 私が接してきた学生たちの中にも、いろいろな子どもたちがいましたが、やはり鋭くすぐに反応できる若者と、何かを語ってもすぐには反応せず、じっくり考える、あるいは、そもそも慎重でゆっくり考える思考回路の子たちもいるのです。

 こうした若者をそれぞれの適性に応じて育てていくことは、いつの時代にも教育にとって必要なことです。しかし、それが私たちにはなかなかできないのです。その点で言えば、松陰は、まさに教育者として、鋭い子も鈍牛のような子も、あるいは、理知的な子もやや内向的な子も、さまざまな形で育てようとしました。


●教科書は作らない、ルールで縛らない...


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