幕末長州~松下村塾と革命の志士たち
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
豪放磊落で破天荒な高杉晋作の交渉力とリーダーシップ
幕末長州~松下村塾と革命の志士たち(13)高杉晋作という人物
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
攘夷の報復として、英仏蘭米4カ国による連合艦隊の攻撃を受け、惨敗する長州藩。この時、休戦交渉に当たったのが高杉晋作である。高杉は持ち前の外交センスで、交渉相手の英国を翻弄、難局を乗り切る。果たして高杉とはどのような人物であったのか。幕末の長州で彼が担った役割とは。歴史学者・山内昌之氏が解説する。(シリーズ講話第13話目)
時間:11分58秒
収録日:2015年1月14日
追加日:2015年3月29日
≪全文≫

●馬関戦争で惨敗し、列強の脅威を知る


 いわゆる馬関戦争についてお話ししてみたいと思います。

 馬関は、今の下関の古名です。長州藩がこの馬関を拠点にして攘夷を本格的に決行したことは、すでにお話しする機会がありました。それに対して、4カ国の連合艦隊が報復として来襲したのです。

 イギリス留学から急きょ帰国した井上聞多と伊藤俊輔、後の井上馨と伊藤博文たちは、そのような無謀な軍事対決を回避し、連合艦隊との戦いを止めるため、藩論の変更を求めましたが、藩内を説得できずに戦端が開かれました。もちろん、長州藩が、最先端の武装をしていた米欧の軍隊にかなうはずもありませんでした。そこで、長州藩は惨敗し、改めて列強の脅威を知ることになったのです。


●英国を翻弄し外交交渉を成功させた高杉晋作


 なお、この時に台頭する人物が、宍戸刑馬という偽名を名乗った高杉晋作です。高杉は、イギリス等との休戦交渉に当たりました。日本語に非常に堪能だったアーネスト・サトウは、武鑑(大名等々の重臣の名前や消息などについて記した紳士録)のどこを見ても、宍戸刑馬という人物はないということで、これが偽の人間であることを見抜いたのは、有名なエピソードです。

 いずれにしても、高杉は、もっともらしい恰好をして、烏帽子などをかぶって、自分が家老・宍戸家の世嫡(正式な跡取り)であると名乗って登場したわけです。宍戸家は、長州藩の名家、名門の一つでしたから、宍戸を名乗っておけば、イギリスの目、サトウの目もくらませると思ったのでしょう。

 それは見破られたのですが、高杉は、いろいろなことで英国を翻弄(ほんろう)します。まず、外交交渉の時に、そもそも大日本は神国であるということを祝詞のようにして長々と言い始めたものですから、その通訳をしているだけで大変だったというエピソードが伝えられています。

 また、仮に長州藩と領土を割譲する講和条約を結ぶと、イギリスは長州を一つの国として認めたことになる。そうすると、他の300に近い諸大名とも、一国一国、これから開国やさまざまな要求について交渉して講和条約、あるいは、通商航海条約を結ぶつもりかと、こういうようなことを言いました。これは、ある意味で、非常に正当な点でもあったのですね。

 重要なのは、ここです。イギリスは、彦島の割譲を要求したのです。今は陸とつながって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝