幕末長州~松下村塾と革命の志士たち
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
吉田松陰の「留魂録」は世界屈指の遺書文学
幕末長州~松下村塾と革命の志士たち(08)松陰処刑の影響
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
安政の大獄により30歳の若さで処刑された吉田松陰。松陰の死は、弟子たちにどのような影響を与えたのか。また、幕末の歴史にとってどんな意味を持つのか。松陰が死の直前に書いた遺書『留魂録』を手すりに、歴史学者・山内昌之氏が解説する。(シリーズ講話第8話目)
時間:6分36秒
収録日:2014年12月24日
追加日:2015年2月22日
≪全文≫

●吉田松陰が死の直前に書いた『留魂録』は世界屈指の遺書文学


 皆さん、こんにちは。

 今日は、吉田松陰の処刑とその意味について考えてみたいと思います。

 松陰は、安政6(1859)年10月27日に、30歳の若さで幕府によって処刑されます。これは、有名な大老・井伊直弼による安政の大獄の一環として行われました。松陰は首を斬られ、誠にむごいことに下帯一枚で放り出されます。

 その時、弟子たちは、小塚原で放り出された松陰を引き取り、その亡骸に桂小五郎が自らの羽織を着せ、棺桶に入れて引っ張っていきました。その一人が伊藤俊輔こと後の伊藤博文でした。彼らは、こうした松陰の悲劇を目の当たりにしながら育っていくことになるのです。

 松陰は、死の直前に牢屋の中で、『留魂録』という有名な遺書を書きます。これは大変優れた遺書です。世界に遺書文学と言うべきカテゴリーを設けようとすれば、松陰の『留魂録』は、まさにその遺書文学の中でも屈指のものです。


●松陰は最後、死ぬ間際になっても教育を続けていた


 松陰は、その中で、「自分はこのように若くして死ぬけれども、10代で死ぬ者にはそれなりの春夏秋冬があり、20代、30代で死ぬ者にもそれなりの春夏秋冬もある。また、それ以上生き延びたものにも春夏秋冬がある」というような有名な言葉を述べています。つまり、人間がどの歳においても、やるべきことをそれなりにやった。それは、自分の志や実際に成し得たことは乏しいかもしれないけれども、春から夏、秋、冬へと至っていく人の営みに似た経験を自分もした、と語っているのです。それが『留魂録』でした。

 そして、自分の説いた教えを、同志や弟子たちが継いでくれるとすれば、自分がまいた種は尽きない。そして、収穫が行われるとすれば、収穫の時期に恥じないものになるだろう、と記していました。

 『留魂録』の最後には、弟子たちに対して一人一人の適性や個性に合ったアドバイスをしています。松陰は死ぬ間際になっても教育をしているのです。

 その文章は、今日全て紹介できませんけれども、非常に高い精神性にあふれており、死の直前にこれだけのものを書ける人物がいたという点で、人々に感動を与えます。

 世界史の中にも、これほどの人物は他にいないでしょう。いずれ機会を捉えて、『留魂録』の全てではないにしても、一部を原文...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治