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労働市場が硬直的な日本…転職率はアメリカの4分の1以下

衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(5)3つの「メガトレンドの変化」

宮本弘曉
一橋大学経済研究所教授
概要・テキスト
流動的な労働市場というと、日本では「解雇しやすくなる」「首を切られる」といったマイナス面として捉えられる。だが実は、流動的な労働市場のほうが労働者にとってプラスなのである。どういうことなのか。実は今、日本は3つの「メガトレンドの変化」の渦中にあり、もはや働き方や雇用形態が変わらざるを得ない事態に直面しているのだ。その「3つのメガトレンドの変化」とは何か。具体的に解説する。(全6話中5話)
時間:17:56
収録日:2023/06/30
追加日:2023/11/28
≪全文≫

●流動的な労働市場へ――「雇用は生産の派生需要である」


 ただ、「流動的な労働市場にしましょう」というと、いろいろと不安に思われる方、懸念を持たれる方もいらっしゃいます。どういうことかというと、「解雇がしやすくなるではないか」「クビ切りができるではないか」などと労働者にとって雇用が不安定になってしまうからよくないのではないか、といった懸念・不安がたくさんあるわけです。

 ところが、実はそんなことはありません。むしろ流動的な労働市場は、労働者にとってプラスなのです。そのことについて今から説明させていただきます。

 今、労働市場を流動化することが労働者にとってマイナスではない、むしろプラスになるという話をさせていただきました。これはなぜかということですが、雇用を考える際に、キーワードがあります。「雇用は生産の派生需要である」という言葉です。これは経済学の非常に頑迷な命題の1つです。私も大学で教鞭をとっていますが、大学1年生の経済学の授業の最初のほうに出てくるコンセプトです。

 端的に申し上げますと、「雇用は生産があって初めて生まれる」ということです。こういう話をすると、「えっ」と驚かれる方が多いと思います。「人がいるからモノもつくれるし、サービスも提供できる。だから雇用があって初めて生産ができるのではないか」と思われる方がいらっしゃると思います。ですが経済学の発想は逆で、そもそも企業は儲からなかったら人も雇わないわけで、やはり生産が最初に来るわけですね。

 では、この「(雇用は)生産の派生需要である」とは何を意味するのかというと、生産構造が変わると雇用も変わらざるを得ないということです。もう少し広い意味でいいますと、生産構造に影響する環境(経済、社会の環境)が変わったら、それは直接的、間接的に雇用に影響を及ぼすということです。雇用に影響を及ぼすということは、働き方であったり採用の仕方であったり、あるいは労働市場のあり方そのものにも影響することになるわけです。


●メガトレンドの変化1:人口構造の変化


 日本は今、「メガトレンドの変化」と呼ばれるような非常に大きな変化に直面しています。このメガトレンドの変化が、生産構造に影響し、結果として雇用にも影響するという形になっています。

 では「メガトレンドの変化」とは一体何かというと、3つあります。1つが、人口...
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