『歴史とは何か』を語る
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『歴史とは何か』を語る(7)記録から歴史へ~古今東西の歴史家の言説~
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今回、山内昌之氏が語るのは、「歴史とは何か?」という、古来、人びとを悩ませてきた難問である。学としての歴史の発生と展開を、古今東西の歴史家の言説を通して俯瞰する。シリーズ第7回。
時間:16分49秒
収録日:2014年10月21日
追加日:2015年7月30日
≪全文≫

●歴史は、誰もが知りたいと希求する一つの学問


 前回まで、イブン・ハルドゥーンについてしばしば触れてきました。14世紀のアラブの歴史家イブン・ハルドゥーンは、『歴史序説』という書物を書きました。イブン・ハルドゥーンが語りたかったことも、結局は、「歴史とは何か」についてで、古くから人々を悩ませてきた難問であります。

 現在の私たちと同じように、古代や中世の人々、イブン・ハルドゥーンたちも、民族や帝国の違いに関わりなく、自分たちや周りの人々の歴史に関心を抱いてきました。つまり、イブン・ハルドゥーンが述べたことは正しいのです。彼は歴史学をこう呼んでいます。「諸々の民族や種族の間で、誰もが修めようと努め、熱心に探究しようとする一つの学問」。続けて、「町の庶民も名もない人々もそれを知りたがり、諸王や諸侯もそれを渇望する。学者も無学の者も、ともに歴史を理解することができる」と言うのです。

 何によらず日本人は概して歴史好きでありますから、イブン・ハルドゥーンの指摘をよく理解できることだと思います。


●調査と研究をまとめた歴史は、学としての歴史の嚆矢


 紀元前5世紀に、ヘロドトスという人物が『歴史』(ヒストリアイ)という書物を書きました。このヒストリアイという言葉が、歴史を意味する英語「ヒストリー(History)」の語源になっています。

 ヘロドトスは、高校の世界史Bには必ず出てきます。ヘロドトスの書物『歴史』の序文にはこうあります。

 「ギリシア人や異民族(バルバロイ)の果たした偉大な驚嘆すべき事蹟の数々──とりわけて両者がいかなる原因から戦いを交えるに至ったかの事情──も、やがて世の人に知られなくなるのを恐れて、自ら研究調査したところを書き述べたものである」

 これが、自分の『歴史』という書物のモチベーションであると語っているのです。

 バルバロイ(異民族)は、高校の世界史で習うので覚えている方もいらっしゃると思います。古代ギリシア人は、ヘレネスとバルバロイに分けて考えました。ヘレンの神に嘉(よみ)されたギリシア人と、聞き苦しい言葉を話す者たち、訳の分からない言葉を話す者たちという意味のバルバロイ。それが語源となって、「バーバリアン(野蛮人)」という言葉が生まれました。

 このギリシア人とバルバロイの地理や民族に対する素朴な関心...

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