『歴史とは何か』を語る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
司馬遷「史記」は孔子「春秋」の精神を継いだ書
『歴史とは何か』を語る(9)『春秋』と『史記』の応報
歴史と社会
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「単純な善悪によって人々が成功するかどうか決まらない」ことを、世界で初めて教えてくれたのは司馬遷だという。それはなぜか。歴史学者・山内昌之氏が想いを込めて語る『歴史とは何か』を語るシリーズ・第9回。
時間:19分21秒
収録日:2014年11月26日
追加日:2015年8月6日
≪全文≫

●『史記』は親子2代にわたって作られた歴史書


 皆さん、こんにちは。

 今日は、司馬遷とその代表作である『史記』について語ってみたいと思います。大変重要なテーマですので、1回では済まないかもしれません。

 最近、私の元同僚で東京大学の平勢隆郎教授などによって、実は司馬遷の史記の編年(クロノロジー、年代の付け方)には少し誤りがあったのではないかという中国古代史の常識を覆す指摘がされています。また、このことをめぐって論争が活発に行われています。その内容はすこぶる専門的ですから割愛することにしまして、ここで私が触れたいのは、司馬遷の『史記』がどのように受け入れられてきたかということです。

 『史記』は、司馬遷一人の仕事ではなく、実は父親の司馬談と司馬遷の親子2代にわたって作られた歴史書であることが確実になってきました。京都大学で史学史を専門にされた稲葉一郎教授は、司馬遷が、本紀、世家、列伝という著述構成スタイルだけでなく、叙述形式についても記事と評論を区別する原則を立てたことを明らかにしました。

 父親の司馬談は、軼事(いつじ、アネクドート、エピソード)という歴史の事実として大変興味深い事柄を収集し、個性的で特異な出来事、記憶として後世に伝える価値のある事柄を記録していたと考えられています。一方、息子の司馬遷は、口碑、つまり、口頭で伝わってきた民間伝承や、さまざまな例え話の類、あるいは、歌謡などを紹介しながら、優れた文章や文学作品を載せて、人物や事象を客観的かつ具体的に後世に伝えようとしたのです。こうしたことが『史記』の内容やスタイルに関わっています。


●歴史は、超越的な存在の意志が発露したもの


 私が今、「歴史とは何か」を考えるときに、なぜ司馬遷をとり上げるかと言うと、それは司馬遷が世界史上最も傑出した特異な人物であるからです。そう考えたのはもちろん私が最初ではなく、中国史の専門家たちも昔から司馬遷を考えてきました。その1人で、亡くなられた京都大学の川勝義雄教授は、『中国人の歴史意識』という優れた本の中で、古代中国の人々は、歴史を神の意志、超越的な存在の意志が発露したものと考えていたと指摘しています。

 これは、「歴史家がなぜ歴史を書くのか」につながる問題です。つまり、歴史とは、人智ではいかんともしがたい天、あるいは、天道が指し示したものであ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治