『歴史とは何か』を語る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
司馬遷の「天道是か非か」と「歴史とは何か」
『歴史とは何か』を語る(10)天道、是か非か
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
古今東西の歴史には、悪ながら栄えた人物も、善にして非業の人物も、無数にいる。『史記』『旧約聖書』『太平記』にそうした例を見つつ、司馬遷が発した永遠の問い「天道、是か非か」をめぐって、歴史の不条理と、司馬遷の歴史観の根拠を考える。歴史学者・山内昌之氏による『歴史とは何か』を語るシリーズ・第10回。
時間:13分11秒
収録日:2014年12月3日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫

●歴史と正義との関わりについての悩み


 皆さん、こんにちは。

 今日は、司馬遷の発した有名な言葉「天道、是か非か」についてお話しします。

 「天道、是か非か」という言葉を聞くにつけて、私たちは、このシリーズのテーマである「歴史とは何か」という問いをどうしても考えざるを得ません。「天道は、正しいのか、正しくないのか」という悲痛な叫びは、まことに歴史と人間との関わり、そして、歴史とは何か、正義とは何か、ひいては歴史と正義との関わり方について、私たちを本当に悩ませます。また考える材料を提供してくれます。

 江戸時代の徳川光圀の時から有名であった『史記』の列伝の最初に、伯夷・叔斉の列伝(「伯夷列伝」)があります。そこには、司馬遷自らの“宮”という重い刑を受けた悲劇的な生きざまが反映されていると考えます。つまり、身体的な毀損を受けた屈辱的な体験があって、彼はまさに「天道、是か非か」という痛切な言葉を吐くことになったわけです。

 司馬遷はいろいろなケースを出して、秩序を守らず悪行を重ね、生涯を享楽や逸楽のままに過ごし、富貴にも恵まれた人々を、他方において、自分に厳しく行動に慎重であり、誰からも後ろ指を指されない、さらに言葉も口数も少なく、人から隠れてずる賢く脇道や近道を通って物事を達成しようとはしない人と比較しています。

 そして、司馬遷はこのように言います。

 「大義名分にかかわることでなければ憤りを発しない人間で、しかもなお禍いにあう者の数は枚挙にいとまがないほどである」(小竹文夫他訳『史記5 列伝一』)

 すなわち、数えるごとができないほど多いと言っているのです。

 こうした不幸をもって、司馬遷はまた有名な言葉を発します。「余、甚だ惑う(余甚惑焉)」、すなわち、自分はすこぶる絶望感に襲われるほど悩み、迷いに誘われると言って、歴史の不条理を語ろうとしているのです。

 歴史とは、なかなか一本道にはいきません。時にはさまざまな不正がある。正しい道だけではなく、脇道やそれた道から歴史を歩もうとする不正のやからもいるのです。

 私も含めてですが、およそ若い頃、少年少女の頃に、世の中にいったいなぜ不正義、不公正、不公平があるのか、自分はなぜ貧しい家に生まれ家庭環境で苦労しているのに、なぜあの遠くに見える人は豊かな家に生まれ明るい家族に恵まれて幸せなのか、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(1)日本の歴史における平安時代の意味
平安時代の意外な真実…貴族社会の華やかさの裏の激動と転換
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
トップアスリートが実践する「自分の高め方」とは…まず集中のスイッチを入れる方法は?
為末大
「満洲」から考える日本とアジア(9)アヘンの実態と満洲開発
満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない
宮脇淳子
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(2)厳格な一神教と選民思想
一神教とは、選民思想の真相とは…ユダヤ教の「最終目的」を考える
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
国家の利益~国益の理論と歴史(2)ペロポネソス戦争の教訓
国益の歴史…ペロポネソス戦争の教訓とトゥキディデスの罠
小原雅博
50代からの親の介護~その課題と準備(2)マネジメントとしての介護
介護を「プロジェクト」と捉え、マネジャーに徹すべし
太田差惠子
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留