『歴史とは何か』を語る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
伯夷、叔斉、顔回の悲劇と、盗蹠の大往生ー歴史の不条理
『歴史とは何か』を語る(11)司馬遷の歴史叙述と世界観
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「われいずくにか適帰せん。ああ徂かん、命の衰えたるかな」。かの有名な一節で知られる古代中国の逸話を手掛かりに、善人が報われるとは限らない歴史の不条理に対する司馬遷の、そして歴史学者・山内昌之氏の義憤が語られる。「天道、是か非か」。しかし、歴史のリアリティーは人の善悪の価値観で測ることができるのか。司馬遷の歴史世界の深みを探る考察は佳境へ。『歴史とは何か』を語るシリーズ・第11回。
時間:13分17秒
収録日:2014年12月3日
追加日:2015年8月13日
≪全文≫

●日本の識者を感動させた古代中国の兄弟


 皆さん、こんにちは。引き続き、「天道、是か非か」のトピックであります。

 「天道、是か非か」の議論をする前に、司馬遷には、中国古代史を知っている人であれば誰でも聞いたことがあるか、読んだことのある有名な逸話があります。

 それは、前回申しました、伯夷と叔斉の兄弟にまつわる話です。この二人は、『論語』においても、「旧悪を念(おも)わず。怨(うら)み是(ここ)を用(もっ)て希(まれ)なり」というところで触れられている兄弟です。彼らは清廉であり悪事を憎みましたが、決していつまでも悪事を心にとめませんでした。したがって、人に恨まれることも少なかったと言及された歴史的人物となっています。

 私たちなども心が洗われるすがすがしい話だと思いますが、この二人がなぜ有名になったのかは、実は日本史にも関係してきます。

 兄の伯夷は、実は父が、内心、弟の叔斉を自分の跡継ぎにしたかったことを知り、父が亡くなると、父の遺志を継いで弟に位を譲るため、出奔(しゅっぽん)してしまいます。ところが、弟も、兄を差し置いて父の跡を継ぐことを潔しとしません。そして、同じく隠遁し家を出てしまいます。

 この二人の精神は、いわば、互譲とも言うべきものです。互譲の精神は、日本の歴史においても、多くの感動、多くの影響を与えたものです。

 一番有名なのは、徳川時代、水戸藩の2代目を継いだ徳川光圀のケースです。光圀には、実の兄がいました。頼重という人物です。しかし、父の頼房は、頼重を越えて、光圀を家督相続者、つまり、水戸の大名にしたのです。そして、兄の頼重は、より小さな讃岐、すなわち、今の香川県の高松藩主になりました。このことについて、光圀は生涯心苦しく思いました。

 儒教、儒学は、父に対する「孝」を重んじる思想、信念の体系ですから、父の言うことに逆らうことはできません。光圀は、父・頼房の遺志により、徳川御三家の水戸家を継いだのです。ところが、光圀はこれを生涯心苦しく思い、彼が有名な『大日本史』という大部の書物の編纂に関わった動機も、伯夷と叔斉の逸話と無縁でなかったかもしれないというのが私の見立てです。

 余談になりますが、私たちが高校時代に漢文を勉強したとき、この兄弟が殷の最後の王であった紂王(ちゅうおう)を討とうとした周の武王をいさめる逸話が出...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(34)『オデュッセイア』の秘密と愉しみ
【10min解説】大ヒット映画『オデュッセイア』がもっと楽しくなる神話講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(2)高齢者総合機能評価とフレイル
“マッチョな老衰”はいない!?若い頃からいかに骨格筋肉量を蓄えるかが健康長寿の鍵
小川純人
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ギリシア悲劇への誘い(3)悲劇をめぐる哲学論争
プラトン対アリストテレス、模倣の是非をめぐる悲劇論争
納富信留
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(6)漢字と理性と想像力
漢字と理性と想像力…いま日本人が考えるべきこととは?
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(3)自覚症状ではなくデータを重視せよ
具合が悪くなってから病院に行こうと思ってはいけない
野口緑
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫