テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.02.13

タクシー代わり?救急車を呼ぶトンデモナイ理由

 急な病気や怪我の時に、頼りになる強い味方の「救急車」。今、救急車が大変なことになっているのを皆さん知っていましたか。

 総務省消防庁によると、令和4年中の救急自動車による全国の救急出動件数は722万9,572件、搬送人員は621万7,283人で、救急出動件数、搬送人員いずれも対前年比で増加しているとのこと。救急出動件数を単純計算すると1日あたり約1万9,800件、実に日本全国で「4.4秒に1回」の割合で救急隊が出動していることになります。
 

無駄な出動増やす、トンデモナイ理由の数々

 このように救急車出動件数が増加している理由には、人生100年時代と言われるほどの長寿化で高齢者の増加によって、急病の発生率が多くなった可能性も言われていますが、それ以上に症状に緊急性がなくても救急車を呼ぶトンデモナイ人たちが増えているとか、いないとか。

【救急車が呼ばれたケース(消防庁より)】
・蚊に刺されてかゆい
・海水浴に行って、日焼けした足がヒリヒリする
・紙で指先を切った。血は止まっているが・・・
・病院でもらった薬がなくなった
・今日入院予定日だから、病院に行きたい
・ヘルパーを呼んだが来てくれなかったので、代わりに救急車を呼んだ
・病院で長く待つのが面倒なので、救急車を呼んだ

救急車出動の半分は、軽症者

 出動件数が増え続ける救急車ですが、723万件のうち、最も多かったのが入院の必要がない軽症で全体の47.3%。生命の危険が強い重症が7.7%、入院診療を要する中等症が43.5%でした。

 もちろん、自分では重症か軽症か判断できないといったこともあるかもしれません。でも、皆さんの安易な利用が他の人の命を危険にさらしてしまうかもしれないし、結果的に税金が上がってしまったり、救急車が有料になったりということになってしまうかもしれません。

軽症者の利用が、重症者を死に至らしめる

 令和4年(2022年)中の救急車の現場到着にかかる時間は全国平均で約10.3分となっています。思ったより早いと思いますか、遅いと思いますか?でも、この時間は17年前(2005年)だと平均6.5分でした。4分近く来る時間が遅くなっています。

 軽症者や生命の危険はないけど救急車を呼んでいる人は、4分の違いなんて気にも留めないかもしれません。でも、重症の方にとっては、数分の違いが生死を分けることもざらにあると言われています。

 例えば、心筋梗塞の死亡率は、病院に到着する前に心臓が止まってしまう可能性が14%、病院に到着してからの死亡率は7%と言われています。もし、軽症の時に救急車を呼ばなければ、本当に必要な人の所へもっと早く到着できるかもしれません。

軽症者の利用が、救急車を有料に?

 軽症者が救急車を利用する弊害は、到達時間の遅延だけでなく、お金の無駄遣いであると言われています。

 救急車の運営は、各市町村で実施しているため、救急車の出動にかかるコストは地域毎で大きく違いますが、1回の出動に約4.5万円の費用がかかると言われています。あくまで、この数字は単純計算なので、固定費をどう計算するかなどで大きく変わってきますが、タクシーで行けば2,000~3,000円で済むような病気や怪我に多額の費用をかけてしまっている事実は変わらないでしょう。

 今後、このまま救急車の安易な利用が進めば、諸外国の様に救急車が有料となってしまう日も遠くないかもしれません。軽症の方だけ、有料にするなんて案もあるようなので、一概に有料が悪いとも言い切れませんが。 
 

救急安心センター事業(♯7119)を活用しよう

 とはいえ、明らかに緊急事態である場合を除いて、「救急車を呼んだ方がいいかどうか」「こんな症状で救急車を呼んでもいいのか」と迷うこともあるでしょう。そんなとき、専門家からアドバイスを受けることができる電話相談窓口が救急安心センター事業(♯7119)です。

 ここでは電話口で医師や相談員がお話を伺い、症状を把握して、救急車を呼ぶべきか、急いで病院を受診した方がよいか、受診できる医療機関はどこか等を案内してくれます。また、「体調が悪いけど、どこの病院に行ったらいいか」といった相談に対しても、受診可能な医療機関を紹介してくれるとのこと。

 緊急だと思ったらためらわず119番、判断に迷ったら7119番、ぜひ覚えておきましょう。

<参考>
・財務省・内閣府
・総務省「令和5年版 救急・救助の現況」の公表
https://www.soumu.go.jp/main_content/000924645.pdfl
・総務省消防庁 救急車の適時・適切な利用(適正利用)
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate008.html
・マイナビニュース 救急車の費用・料金は1回あたりいくら? 税金から出てるの?
https://news.mynavi.jp/article/20220421-2304424/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,400本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

平々凡々も大事、慎まなくてはいけないのはヤンチャな行動

平々凡々も大事、慎まなくてはいけないのはヤンチャな行動

『孫子』を読む:行軍篇(2)4つの地形での戦い方:後編

前回に続き、戦いにおける4つの地形、その環境の具体的な注意点を示し、それらをビジネス戦略や人生の局面に応用する方法を解説していく第2話。川、沼地、平地、そして高地においての戦いの要点が語られているが、広い視野を持...
収録日:2020/10/09
追加日:2025/01/12
田口佳史
東洋思想研究家
2

大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟

大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟

「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条

大人の学び、50歳からの勉強法について童門冬二氏に伺ったシリーズ講義。人生のプロセスをある程度終えてからの勉強の仕方として、童門氏は三つのポイントを挙げている。一つ目は「学びの姿勢は自由でいい」、二つ目は「教科書...
収録日:2020/01/09
追加日:2020/05/14
3

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史

なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社新書)では、日本人の本の読み方の変遷を追うとともに、明治以降、日本人が読んできた本を知ることで、日本の世相や文化史を克明に伝えている。本講義では2回にわ...
収録日:2024/08/26
追加日:2024/10/06
三宅香帆
文芸評論家
4

印象派の中心的画家ピサロとドガに影響を与えた人物とは

印象派の中心的画家ピサロとドガに影響を与えた人物とは

印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(3)印象派を牽引したピサロとドガ

印象派を中心的に引っ張っていた画家として、ピサロとドガを取り上げる。のちに絶縁することになる2人だが、印象派展を牽引する上では手を取り合っていた。この2人がどのような影響のもとでその画風を作り上げたかを掘り下げる...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/01/11
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員
5

『貞観政要』が人気…日本の経営幹部研修で好まれる理由

『貞観政要』が人気…日本の経営幹部研修で好まれる理由

オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(5)東洋的リーダーシップ

年功序列の上下関係が根を張る日本型組織が、いきなりその体制を超分権型組織に切り替えるのは容易ではない。そこで今、日本の経営者が注目しているのが、部下からの忌憚ない助言の価値を説く『貞観政要』だ。これからの日本の...
収録日:2024/09/17
追加日:2025/01/10
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授