社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「ひじき」で58分縮まる?「損失余命」とは
「損失余命(Lost Life Expectancy)」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。「損失余命」とは、食事や行動などにどれだけのリスクがあるかを寿命の減少で示したもの。生まれたときに満タンの余命が、どのぐらい減っていくのかを表したものです。
日本では「ひじきの煮物(小鉢一杯)」の損失余命が58分というWHO(世界保健機構)の発表にショックが広がりました。が、ここにはひじきを食べることで得られる栄養効果などのプラス面は評価されていません。
高い数値が出ているのは、無機ヒ素の含有があるためですが、その後の農林水産省の調べにより、乾燥ひじきを水に戻すと50%、茹で戻すと80%、茹でこぼすと90%の無機ヒ素が減ることが分かっています(茹で戻しは水に入れて茹で水洗いする、茹でこぼしは30分水に浸し、新しいお湯で沸騰後5分感茹で、水洗い)。和食として食べられてきた調理法では、あまり問題がないのではないでしょうか。
項目/世界/日本/北米/EU
低体重/20.73/0.01/0.01/0.00
体重オーバー/ 3.78/1.92/6.58/5.71
高血圧/9.07/5.94/7.03/8.86
コレステロール/ 5.71/3.01/6.44/6.97
野菜果物不足/3.83/1.87/3.65/2.53
運動不足/ 2.59/1.78/3.03/2.95
危険な性交渉/12.57/0.23/0.98/0.46
たばこ/7.45/6.15/13.81/11.43
酒/5.34/1.61/2.80/3.01
ストレス/0.00/0.00/0.00/0.00
幼児虐待/ 0.28/0.16/0.12/0.07
ストレスで寿命は減らないのに、子どもにストレスをぶつける日本人の姿が浮かび上がってくるようです。どんなに減らさないでおこうと気遣っても、時とともに減っていくのが寿命ですから、せめて次の世代の寿命をマイナスにはしたくないですね。
たとえば胃がんや乳がんの検診で得られる延命効果を「獲得余命」と考え、放射線被ばくリスクを「損失余命」ととらえる。そのプラスマイナスは、年代によって異なることがわかっています。検診による利益を年代別で考えてみるといったことです。
何かを食べることで獲得できる「余命」は今のところ発見されていないようですので、ご注意を。
寿命は「ひじき」で58分、「たばこ」で12分縮まる?
「損失余命」計算の対象は食品だけでなく、低体重、運動不足、大気汚染、ストレス、幼児虐待など多岐にわたります。例えば喫煙なら1本で12分、コーヒーなら1杯で20秒、コンビニのフランクフルト1本で1分14秒、「持ち時間」が減るというのです。日本では「ひじきの煮物(小鉢一杯)」の損失余命が58分というWHO(世界保健機構)の発表にショックが広がりました。が、ここにはひじきを食べることで得られる栄養効果などのプラス面は評価されていません。
高い数値が出ているのは、無機ヒ素の含有があるためですが、その後の農林水産省の調べにより、乾燥ひじきを水に戻すと50%、茹で戻すと80%、茹でこぼすと90%の無機ヒ素が減ることが分かっています(茹で戻しは水に入れて茹で水洗いする、茹でこぼしは30分水に浸し、新しいお湯で沸騰後5分感茹で、水洗い)。和食として食べられてきた調理法では、あまり問題がないのではないでしょうか。
世界では「低体重」、北米では「過体重」がリスク
「損失余命」を専門とする機関があるわけではなく、WHOをはじめ各国の医療機関や団体などが各自の研究結果にもとづいてリスク指標として使用していることも注意しつつ、「できれば避けたい」のは何か、考えてみてはいかがでしょうか。以下は、WHOによる「日常的なリスクによる損失余命比較(単位:年)からの抜粋です。項目/世界/日本/北米/EU
低体重/20.73/0.01/0.01/0.00
体重オーバー/ 3.78/1.92/6.58/5.71
高血圧/9.07/5.94/7.03/8.86
コレステロール/ 5.71/3.01/6.44/6.97
野菜果物不足/3.83/1.87/3.65/2.53
運動不足/ 2.59/1.78/3.03/2.95
危険な性交渉/12.57/0.23/0.98/0.46
たばこ/7.45/6.15/13.81/11.43
酒/5.34/1.61/2.80/3.01
ストレス/0.00/0.00/0.00/0.00
幼児虐待/ 0.28/0.16/0.12/0.07
ストレスで寿命は減らないのに、子どもにストレスをぶつける日本人の姿が浮かび上がってくるようです。どんなに減らさないでおこうと気遣っても、時とともに減っていくのが寿命ですから、せめて次の世代の寿命をマイナスにはしたくないですね。
余命は「獲得」することもできる!?
さて、余命に「損失」があるなら「獲得」があってもいいはずだ、と思うのが人情。実際に「獲得余命」という言葉は、損失余命と比較する場面で使われはじめています。たとえば胃がんや乳がんの検診で得られる延命効果を「獲得余命」と考え、放射線被ばくリスクを「損失余命」ととらえる。そのプラスマイナスは、年代によって異なることがわかっています。検診による利益を年代別で考えてみるといったことです。
何かを食べることで獲得できる「余命」は今のところ発見されていないようですので、ご注意を。
<参考サイト>
・いくつかの損失余命
http://www.s.fpu.ac.jp/oka/lle.pdf
・WHO日常的なリスクによる損失余命比較
http://www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi07/shiryo/yasui/yasui23.pdf
・いくつかの損失余命
http://www.s.fpu.ac.jp/oka/lle.pdf
・WHO日常的なリスクによる損失余命比較
http://www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi07/shiryo/yasui/yasui23.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
歴史上の出来事の本質を知るには、その真贋を見定めなければいけない。そのためにはどうすればいいのか。記述の異なる複数の本がある場合、いかにして真実を見極めるか。また、司馬遼太郎の作品が「歴史事実」として認識されて...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/12/02
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントが世界的に普及し始めたのは1990年代。ソフトウェア産業の発展とともに拡大を続け、時代のニーズを受けて多くのシーンに定着してきた。今回は、その基本に立ち返り、国際標準をもとに、プロジェクトと...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/03


