テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.09.24

「潰れそうな企業」を見分ける方法とは?

 倒産は、その会社の規模にもよりますが、社会的に大きな影響を及ぼします。どんな会社も取引先があり、会社が1社だけで経営を成立させることはできません。他社の突然の倒産によって、自分の会社も共倒れするというケースもあるでしょう。

 そう考えると、社会人であれば、必要最低限の倒産の知識を身につけておいても損はないと思います。雑誌『週刊ダイヤモンド』(2017年8月12日・19日合併特大号)をもとに、潰れそうな企業の特徴や見分け方を紹介します。

投資のプロが察知する危険情報

 投資のプロはどうやって倒産の危険を察知するのか。本誌では投資信託を手掛けるレオス・キャピタルワークスの提供データをもとに危険レベルを3段階に分けてリスト化しています。

 ここでは最も危険レベルが高いときの倒産の兆しについて記します。まず、企業が投資家に向けて発信する情報「IRライブラリ」や開示情報などから「シナジーが見えないM&A」「海外子会社に原因不明の内部販売が急増」「会社方針の変更」があったとき、投資家は危険を感じるそうです。

 「人事発表」からも危険は察知できます。とくに「財務・IR担当者の急な退職」「監査法人の交代」は危険なサインなのだそうです。

 それから、メディアの取材やセミナーにおいて「会社や業界で起きていたことが説明できない」「競合はいません」などと回答しているときもかなりヤバい兆候とのこと。危険度は下がりますが、「社長・IR担当者が過去の成果ばかり語る」ことを始め出したら、「今後ちょっと危ないかもしれない」と注意したほうがよいそうです。

危ない上場企業を見分ける方法

 なかなか投資家のように倒産を察知するのは難しいかもしれませんが、上場企業に限り、もっと簡単に倒産する危険のある企業を察知する方法を紹介します。

 監査法人から「継続企業の前提に重要な疑義がある」と判断されると、有価証券報告書に「ゴーイングコンサーン(GC)注記」が付されることになります。このGC注記企業は、経営に苦戦しているケースがほとんどです。すなわち、危ない上場企業ということができます。

 2017年3月期決算を発表した上場企業2432社のうち、監査法人からGC注記を付されたのは22社でした。22社には、負債総額1兆7000億円で戦後最大の倒産となったタカタ(2017年6月に民事再生法適用を申請して倒産)や、本年9月末に会社を解散する決議をしている中部証券金融も含まれます。

 その他には、田渕電機、サニックス、郷鉄工所など太陽光発電事業関係の会社が少々目立ちます。帝国データバンクによると、太陽光発電の関係する企業の倒産件数は、2014年以降は増加傾向で、2017年上半期は50件と前年比の約2倍となり、通年で100件を超える可能性があるようです。

「ヒト」「モノ」「カネ」で倒産の予兆をキャッチ

 『あの会社はこうして潰れた』(日本経済新聞出版社刊)の著者・藤森徹氏は、「ヒト」「モノ」「カネ」の3つポイントをみることで倒産の予兆をキャッチできると「Business Journal(ビジネスジャーナル)」の記事で述べています。

 最初の「ヒト」をみるときは、大量採用や大量離職が起きたとき、また、会社の管理職が辞めるタイミングには注意が必要とのこと。

 次の「モノ」の流れをみるときは、「高価な商品を叩き売っているという情報」が重要になるそうです。なぜなら、そういうときには「在庫を一掃しようとしているか、高額商品を叩き売らないとキャッシュフローが追いつかないといった背景が見て取れる」からです。

 最後の「カネ」が最も倒産の予兆を感じさせるポイント。「月末に支払われるはずのお金が入ってこない、月末になると経理担当者や社長がつかまらない、といった場合はかなり危うい」としています。

 以上のように、倒産は見る人が見れば、何かしら兆候があることが分かりました。当然ながら、倒産の兆候に気がつくのが早ければ早いほど、倒産やその悪影響を防ぐことができる可能性は高まります。

 思い返せば、2017年春、格安旅行業社「てるみくらぶ」の一件では消費者が大きな被害を受けました。倒産被害者にならないためにも、倒産企業を見分ける力を養っていきましょう。

<参考文献・参考サイト>
・『週刊ダイヤモンド17年8月12日・19日合併特大号』(ダイヤモンド社)
・『あの会社はこうして潰れた』(藤森徹著、日本経済新聞出版社刊)
・2017年3月期決算、上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170606_01.html
・帝国データバンクの信用調査マンが明かす「倒産する会社」「うまくいく会社」の兆候
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19104.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授