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DATE/ 2017.10.02

「自己破産」が40代に多い理由とは?

 自己破産を世代別でみると40代がいちばん多いということをご存知ですか。なかでも、最も多い原因は「生活苦・低所得」なんだそうです。

 どうして40代に自己破産が多いのか、検証していきたいと思います。

銀行カードローンで自己破産続出

 『しんぶん赤旗』は、「銀行カードローンで自己破産続出」(2017年8月23日)という記事のなかで、銀行カードローンの残高が急増し、自己破産者が続出していることを伝えています。

 ここでもカードローンを利用する理由は「生活苦」が最も多く、「生活費不足」(38.1%)、「冠婚葬祭費」(6.5%)、「医療費」(5.6%)、「住宅ローンの支払い」(4.1%)となっています。

 「銀行から433万円借りた年収356万円の40代女性が自己破産した」という事例も紹介されています。40代になると、結婚し、子どものいる家庭では、住宅費、教育費、あるいは介護費など出費が大きくなります。そうした積み重なりが、いつの間にか、自己破産への歩みとなっているのでしょう。

「中年破綻」に陥る人の3つの特徴

 『楽待不動産投資新聞』に、「自己破産者は40代に多い!高収入でも中年破綻に陥る人の3つの特徴 なぜ働き盛りの年代で破綻してしまうのか?」という記事がありました。そのなかで、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は、中年破綻者の3つの特徴として「(1)見栄っ張り(2)楽天的(3)計画性がない人」をあげ、「ちょっとしたキャッシュフローの悪化が引き金となって、家計があっという間に破綻してしまう」と注意を促しています。

 他方、経済破綻を防ぐ方法として「収入を増やす」、「支出を減らす」、「運用をする」の3つしかないと述べています。

「良い借金」と「悪い借金」の違い

 「ローン」と言うと、なんとなくスマートな感じがしますが、言ってしまえば「借金」と同じことです。とはいえ、借金自体は必要に応じて活用できれば、決して悪いことではありません。『40代からのお金の教科書』(栗本大介著、筑摩書房)には、「良い借金」と「悪い借金」があると書かれています。

 「良い借金」とは「時間を買う」ような活用法です。たとえば、3600万円の家を購入するとします。しかし、手元には1500万円しかありません。自腹で家を購入するには、さらに約20年間の貯蓄する必要があります。そんなとき、返済計画さえきちんと組み立てられれば、借金を活用してその20年間の時間を買うことができます。

 一方、「悪い借金」とはなにか。簡単に言えば、「その場しのぎの借金」です。具体的に言えば、「足りないお金を無理に調達している」、「遊ぶためのお金を借金で賄う」、「収入が増える当てがないのに、不足する生活費をキャッシングで賄う」などです。

 栗本氏は「いちど悪い借金に足を踏み入れると自力での脱出はむずかしくなることを肝に銘じておきましょう」と警告しています。また、先述したことと重なりますが、ほんのちょっとした油断が借金地獄の入り口になると述べています。

 さらに40代は「将来の不安に備えるラストチャンス」であることを指摘。自己破産含め、介護、老後、相続などトラブルのタネになりそうなお金の問題は先送りせずに、今日からでもきちんと向き合うことが大事ということですね。

<参考文献・参考サイト>
・『しんぶん赤旗』(2017年8月23日)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-23/2017082306_01_1.html
・『楽待不動産投資新聞』(2016年5月18日)
http://www.rakumachi.jp/news/column/138022
・『40代からのお金の教科書』(栗本大介著、筑摩書房)
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授