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DATE/ 2017.10.06

「無断駐車の罰金」に法的拘束力はあるのか?

 「ここに停めたら○○円払ってもらいます」

 道路に面した自宅や私有地、お店の駐車場によくある看板や張り紙。もし、うっかり停めてしまって、駐車場の管理者に何万もあるいは何十万も支払えと言われたら…。
 
 そんな場合、個人の取り決めはどれほどの強制力があり、また、法律ではどのように定められているのでしょうか。

罰金を設ける権限はない

 本当に必要な人が停められない無断駐車。見つけたら罰を与えたい気持ちにもなるでしょう。迷惑料をとりたくなるのもわかります。しかし、結論から言うと、無断駐車の場合、個人で決めた罰金支払いに法的な強制力はありません。

 消費者庁管轄で消費者の紛争を法的に解決することを助ける「国民生活センター」の情報によると、「罰金」とは、刑罰の一種であり、一定金額を 国庫に納付させる財産刑です。罰金に限らず刑罰は、国家が自然人や法人に科すものなので、一般国民に罰金を設ける権限はありませんと注意を促しています。

 そして、無断駐車は、他人の土地を勝手に占有する行為であることから、それ自体に不法行為(民法709 条)が成立する可能性より、権利を侵害された人(駐車場の持ち主等)は、無断駐車をした人に対して損害賠償請求することができるとのことです。

コストが見合わない無断駐車の損害賠償請求

 「事務所駐車場に無断駐車されたので賠償請求してみた」というタイトルでエントリーされた三浦義隆弁護士のブログでは、ご自身が迷惑を被った無断駐車の実例から法的な対処まで詳しくレポートされています。

 結果的に、弁護士を通すことで無断駐車の車両の所有者を特定し、損害賠償請求はできたようですが、日本の法制においては懲罰的損害賠償を認めていないこと、損害賠償請求により回収できるのは被害者が実際に被った損害に相当する額だけであること、数時間程度の無断駐車で生じる損害額はそれほど多くはないこと、そして、少額の損害賠償請求から依頼を受けてくれる弁護士はいないだろうとコメントしています。

無断駐車の対応は慎重に

 さて、無断駐車の報復とばかりにレッカー会社に頼んで勝手に車を運ぶ、タイヤをロックするなどの対応をしては絶対にいけません。これらは違法行為になるということです。相手が悪いからといって、自分もやって良いわけではないということです。

 それは、法治国家においては、「自力救済の禁止」という大原則があるからです。「自力救済の禁止」とは、権利を侵害されたとしても、国家機関によらずに実力で権利回復をすることは許されないというルールです。

 つまり自力救済は、原則的に違法行為だということです。よって、気持ちは理解できますが、無断駐車の車のタイヤをロックするなどして足止めしてしまうというのは完全に違法となるため、注意しましょう。

<参考サイト>
・暮らしの法律Q&A
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201408_15.pdf
・弁護士三浦義隆のブログ:事務所駐車場に無断駐車されたので賠償請求してみた
http://miurayoshitaka.hatenablog.com/entry/2017/06/30/事務所駐車場に無断駐車されたので賠償請求し
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