社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
日本企業は成果主義を捨てるべきなのか?
日本の多くの企業が成果主義を取り入れています。その成果主義とは、アメリカ流のレイティングシステム(年度末に実施する、ABCといった社員のランク付け「レイティング」と、年度単位での社員の評価のこと)です。
ところが、当のアメリカが今やそのシステムを捨て去ろうとしているのだそうです。成果主義に対する疑問は国内からも噴出しています。
そうした潮流の中、日本はこのまま成果主義を続けていくのか。そもそも成果主義は正しいのか。「人事評価」の実態に迫ります。
このレイティングの問題点について、『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』の著者・松丘啓司氏が、「エン・ジャパン」のインタビュー記事でレイティングの問題点を3点あげています。
・心理的安全が得られない
・評価エラーの問題
・会社の大多数を占める中間層のモチベーションを下げる
それぞれの問題点をもう少し詳しく検証してみましょう。
2点目の「評価エラーの問題」については、これからの時代は専門性の高い、尖った人材の必要性が高まっていますが、社内のモノサシで測ると、そういった人材がC評価などになってしまうということも頻繁に起こり、また、会社の画一的な指標では多様な人材を正確に評価することは難しくなってきていると述べています。
3点目の「会社の大多数を占める中間層のモチベーションを下げる」という点については、例えば、A~Eの5段階で評価をした場合、ほとんどがBやCに固まることになり、BやCをつけられた人はモチベーションが上がることはほぼありませんと指摘しています。
そのうえで松丘氏は、ランク付けを廃止する「ノーレイティング」を掲げています。「ノーレイティング」の本質は、一言で言うと、「これまで以上にフィードバックや対話を増やし、人と組織のパフォーマンスを最大化すること」にあります。
ただし、日本企業が手放しにこれに追随していくことに対してはさまざまな意見があります。機関誌「Works」(リクルートワークス研究所)において、一橋大学大学院商学研究科教授の守島基博氏は「日本企業はそのまま追随しなくていい」と主張しています。
守島氏は、そもそも日本企業において、周囲から「優秀な上司」と思われている人たちは、「上司と部下がしっかり対話する」という、いまアメリカが取り組もうとしていることを、当然のようにやってきたと指摘。だからこそ、「米国企業の“序列化をやめる”という動きに追随するというよりは、本質的な目的を突き詰め、これまで優秀な上司たちがやってきたことを肯定し、あらためて組織全体に展開することこそ重要だと思います」と述べています。
現行の成果主義は、大きな限界が示されている以上、日本企業もこのまま続けていくことはなさそうです。では、どのように変革されていくのか。守島氏の「目的を突き詰め」という指摘は非常に重要で、かつての「成果主義」導入と同じような過ちを犯さないためには、目的なき追随は避けるべきでしょう。
ところが、当のアメリカが今やそのシステムを捨て去ろうとしているのだそうです。成果主義に対する疑問は国内からも噴出しています。
そうした潮流の中、日本はこのまま成果主義を続けていくのか。そもそも成果主義は正しいのか。「人事評価」の実態に迫ります。
レイティングシステムの3つの問題点
日本の成果主義がアメリカのレイティングシステムの受け売りであることは冒頭で述べました。このレイティングの問題点について、『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』の著者・松丘啓司氏が、「エン・ジャパン」のインタビュー記事でレイティングの問題点を3点あげています。
・心理的安全が得られない
・評価エラーの問題
・会社の大多数を占める中間層のモチベーションを下げる
それぞれの問題点をもう少し詳しく検証してみましょう。
成果主義を変革する「ノーレイティング」の本質
1点目の「心理的安全が得られない」ことについては、グーグルで成功しているチームの持つ特性を分析したところ、心理的安全が最も重要な要因であることが判明しているのだそうです。失敗をしたり、間違ったりすることで、評価が下げられると思うと萎縮をしてしまい、高いパフォーマンスが期待できなくなります。2点目の「評価エラーの問題」については、これからの時代は専門性の高い、尖った人材の必要性が高まっていますが、社内のモノサシで測ると、そういった人材がC評価などになってしまうということも頻繁に起こり、また、会社の画一的な指標では多様な人材を正確に評価することは難しくなってきていると述べています。
3点目の「会社の大多数を占める中間層のモチベーションを下げる」という点については、例えば、A~Eの5段階で評価をした場合、ほとんどがBやCに固まることになり、BやCをつけられた人はモチベーションが上がることはほぼありませんと指摘しています。
そのうえで松丘氏は、ランク付けを廃止する「ノーレイティング」を掲げています。「ノーレイティング」の本質は、一言で言うと、「これまで以上にフィードバックや対話を増やし、人と組織のパフォーマンスを最大化すること」にあります。
日本企業はそのまま追随しなくていい
「ノーレイティング」は、アメリカではすでに「ギャップ」「アドビシステムズ」「マイクロソフト」「GE」「アクセンチュア」など名だたる企業もすでに導入しており、今後も拡大していく傾向とのことです。ただし、日本企業が手放しにこれに追随していくことに対してはさまざまな意見があります。機関誌「Works」(リクルートワークス研究所)において、一橋大学大学院商学研究科教授の守島基博氏は「日本企業はそのまま追随しなくていい」と主張しています。
守島氏は、そもそも日本企業において、周囲から「優秀な上司」と思われている人たちは、「上司と部下がしっかり対話する」という、いまアメリカが取り組もうとしていることを、当然のようにやってきたと指摘。だからこそ、「米国企業の“序列化をやめる”という動きに追随するというよりは、本質的な目的を突き詰め、これまで優秀な上司たちがやってきたことを肯定し、あらためて組織全体に展開することこそ重要だと思います」と述べています。
現行の成果主義は、大きな限界が示されている以上、日本企業もこのまま続けていくことはなさそうです。では、どのように変革されていくのか。守島氏の「目的を突き詰め」という指摘は非常に重要で、かつての「成果主義」導入と同じような過ちを犯さないためには、目的なき追随は避けるべきでしょう。
<参考サイト>
・『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』(松丘啓司著、ファーストプレス)
・エンジャパン:人事評価はもういらない!?
https://corp.en-japan.com/success/3434.html
・機関誌「Works」(リクルートワークス研究所)
https://www.works-i.com/pdf/w_138.pdf
・『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』(松丘啓司著、ファーストプレス)
・エンジャパン:人事評価はもういらない!?
https://corp.en-japan.com/success/3434.html
・機関誌「Works」(リクルートワークス研究所)
https://www.works-i.com/pdf/w_138.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂
今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点
猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う
ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代
これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19