テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.12.19

50代・60代のための転職サイトがあるって本当?

 ニュースでは日経平均株価が連続上昇記録を更新したという話題が盛り上がっています。その後も、株価は高値を維持し、日本の景気はどうやら上向いているようです。求人に関しても、2017年8月に厚生労働省が発表した有効求人倍率(7月時点、季節調整値)は1.52倍と、5カ月連続で上昇しています。バブル期の有効求人倍率が1.46倍であったことを考えれば、かなり高いことが分かります。

 こういった状況を受けてか、最近では40代、50代、60代の、いわゆるシニア向けの求人サイトもオープンしています。果たして、これはシニア向け求人が増えているということなのか、それとも、何か別の事情が隠れているのでしょうか。ここで実際のシニアの転職市場について詳しく見てみましょう。

シニア向け求人は増えているのか

 2017年上半期における転職成功者の内訳を年代別にみると、「25~29歳」が37.9%と最も多く、次いで「30~34歳」が23.5%、「40歳以上」が15.7%との順です。前回の調査と比べると、「24歳以下」は0.5ポイント増、「25~29歳」は2.1ポイント増となった一方、「30~34歳」が1.6ポイント減、「35~39歳」が0.3ポイント減、「40歳以上」が0.5ポイント減と、20代の転職成功者が増加する結果です。

 つまり、この結果からすると、必ずしもシニア向け求人が積極的に増えている、というわけではなさそうです。むしろ、人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代の最後の世代が40代を越え、シニアと呼ばれる年代に差し掛かっていることが、シニアの転職市場を賑わせている原因ではないでしょうか。

求人倍率を上げているのは特定の分野

 シニア層の転職になると、多くの場合「管理職」としての採用になります。「管理的職業」の求人の求人倍率は1.49倍と全体平均と変わりません。しかし、業界別でみると、「介護・医療」関連の事務管理(事務長)の求人がたいへん多く、一般企業の管理職はそう多くないのが現実です。

 日本の人口が転換期にある現状では、需要のある「介護・医療」の業界が突出し、全体の求人倍率を上げているということも納得がいきます。また、これとは別に管理職ということを念頭におかなければ、「建設」「建築」「警備」「販売」といった業界は慢性的に人手不足なので、年齢を問わず採用される可能性は低くないといえます。

スペシャリストと高いコミュニケーション能力への需要はある

 ここまで見たところでは、どうやら現状ではシニア層にだけ特別に目が向けられているというわけではないことが分かりました。ただし、シニア層が培ってきた「管理能力」や「経験」を積極的に買おうとする企業は増えていることも事実です。たとえば、経理・財務・法務・人事・総務・経営企画・監査(常勤・非常勤)などの経験や有資格者への求人です。こういった特定の分野のスペシャリストは大いに歓迎されています。

 また、エン・ジャパン株式会社が行ったエージェントに所属するコンサルタントに対するアンケートによると、「プロジェクト管理が出来るマネジメント層を増員し、成長事業を増やすことが企業収益に繋がると判断する企業が増えている」という意見もあります。つまり、この先の技術の急速な進化に伴う産業構造の変化を考えれば、企業は新しい分野にチャレンジしていくことは不可避です。ここでプロジェクトの管理・マネジメントができる人材、つまりコミュニケーションを円滑に進め、全体の動きを把握して舵取りをする人材が求められることも間違いないでしょう。これらはシニア層に特化した需要といえるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・マイナビニュース:トレンドに変化? 転職成功者の平均年齢、2年ぶり低下
http://news.mynavi.jp/news/2017/08/09/038/
・ミドルの転職:2016年の転職市場予測「ミドル人材の求人動向」について
https://mid-tenshoku.com/enquete_consultant/report_27/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
2

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
3

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
4

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン

アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
5

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者