社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.12.11

横浜・渋谷・東京…あの駅の工事はいつまで?

 「この駅の工事、いつ終わるんだろう」。思えば子どもの頃からずっと構内のどこかを工事している駅ってありますよね。時には年に何回も利用するわけではないけれど、行くたびに構内通路や出口の位置が変わっていることも。工事はいつからやっているのか、いつになったら終わるのか、気になります。

 ということで今回は、そこまで長くはないかもしれないけれども首都圏で未完成の駅として名高い横浜駅、東京駅、渋谷駅の工事の実情とその理由について取り上げます。

「日本のサグラダ・ファミリア」横浜駅

 まずは横浜駅ですが、1872年に現在の桜木町駅の位置で開業したのち、2度の移転を経て1928年に現在の位置に建てられました。はじめはJR東海道線、東急東横線のみが通っていましたが、1930年に京急本線、1974年に相鉄本線、1976年に横浜市営地下鉄、そして2004年にみなとみらい線が次々に乗り入れ、日本有数のターミナル駅に成長しました。その度に行われてきたホームの増設、通路の整備工事だけをみても、長年工事が終わらない理由は明らかでしょう。

 現在は横浜市が策定した「エキサイト横浜22」という横浜駅周辺大改造計画にのっとり西口ビルの建て替え工事が行われているほか、この計画では東西の駅前広場の整備、南北を結ぶデッキの設置などが予定されています。この計画は2029年の横浜を見据えてのものなのでひと段落すると思われますが、これが最終形かどうかは断言できないようです。

乗換の利便性向上を図る渋谷駅

 続いて、JR東日本、東急、京王、東京メトロと4つの鉄道会社が乗り入れる渋谷駅。開業当初の1885年は1日の平均利用者数がわずか16人と小規模な駅でしたが、現在ではJR東日本の駅でも上位にランクインする乗車人員を誇っています。その理由となったのが長年にわたって進められている駅の再開発です。1934年に東横百貨店がオープンすると、3年後には2号館が建設されるほどの盛況となりました。戦後には1970年にいたるまで東急関連施設の増築が続き、渋谷の街は大きな発展をとげることになります。

 しかし、駅の利便性の低下は否めず、再開発のメスが入ることになります。2012年に商業施設ヒカリエが開業し、翌年には東急東横線が東京メトロ副都心線と連絡するため、長年使われてきたホームの使用が終了したことは記憶に新しい方も多いでしょう。今後もマークシティ3階に位置する銀座線のホーム、離れていて乗り換えが不便だった埼京線のホームの位置を変更するといい、渋谷は大きく姿を変えていくようです。ほかにも東口、西口でビルの建設が進められており、現在計画されているこれらの工事は2027年には完成を迎える予定です。

次の100年を見据えた東京駅

 最後は東京の入り口である東京駅で、開業したのは1914年のこと。1923年の関東大震災ではびくともしなかった東京駅も、第二次世界大戦の空襲では被害を受けてしまいます。東京駅の顔であったレンガ造りの丸の内駅舎は修復されて使われていましたが、2012年には保存・復元が完了し当時の姿を見られるようになりました。丸の内駅舎の保存・復元工事は、2006年から「東京駅が街になる」をキャッチフレーズに進められている再開発計画の一環として行われています。丸の内駅舎エリアのほかに八重洲エリア、日本橋口、そしてエキナカエリアを「Toyko Station City」として再開発する計画で、すでに日本橋口のサピアタワー、八重洲口のグラントウキョウ ノース/サウスタワーが、エキナカ商業施設グランスタが2007年には整備されています。

 2014年から工事が始まっていた丸の内駅前広場も2017年12月に全面供用が開始され、地下通路のアクセス改善、サービス改善向上のために北通路から自由通路にかけての整備も進められています。東京オリンピックがある2020年までの完成を目指して、現在も工事が行われています。

なぜ工事が終わらないのか?

 駅の工事にあれだけの時間がかかるのは、終電から始発の間という利用者に影響しない時間でしか工事を進められないことが最大の原因と考えられるでしょう。1日にわずか2~3時間の時間ではやむをえないともいえます。

 サグラダ・ファミリアは工期が大幅に短縮して2026年には完成する予定とのこと。日本のサグラダ・ファミリアともいえるこれらの駅は、いつ完成した姿を見ることができるのでしょうか。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者

西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
2

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会

渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
渡部玄一
チェロ奏者
3

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
4

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない

「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会

アメリカが日本の運命を左右する国であることは、安全保障を考えても、経済を考えても、否定する人は少ないだろう。だが、そのような国であるにもかかわらず、日本人は、本当に「アメリカ」のことを理解できているだろうか。日...
収録日:2022/11/04
追加日:2023/01/06
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
5

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み

大谷翔平選手は今や野球界だけでなく世界中のスポーツ界の象徴的存在だが、本人は「自分も最初からこの体と技術があったわけではない」と努力と練習の成果を強調している。いったいどんな出会いやプロセスが彼を育ててきたのか...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/03
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト